1.はじめに
阪神・淡路大震災の被害状況、 税理士事務所の業務状況、 税理士会・支部の震災対応、 震災税務の複雑性、 阪神以後への提言、東日本大震災への参考事項等について報告するところですが、時間の関係で要約的な報告となります。
詳細なところは「震災・その轍」(近畿税理士会編集)、「激震 神戸・あれから2年」(近畿税理士会神戸支部編集)、「税務広報」(2011/7)の計算例(橋本恭典会員寄稿)を読んでいただいて補足してください。 |
|
2.自己紹介
近畿税理士会阪神・淡路大震災対策特別委員会委員として、「震災・その轍」の編集作業に参加
近畿税理士会神戸支部副支部長(直後の当時)として、「激震 神戸・あれから2年」の編集作業に参加
サンテレビで被災直後の震災税務の解説、取材対応
阪神・淡路街づくり支援機構、近畿税理士会派遣事務局
阪神・淡路街づくり支援機構付属研究会編「提言 " 大震災から学ぶ住宅とまちづくり " 」共同建替の税務・執筆
自宅・事務所の被災体験
事務所半壊、自宅一部損壊、事務所1週間閉鎖、約1ヵ月隔日出勤。全壊した姉一家を自宅に引き取る。ライフラインの回復、交通の回復、倒壊建物・焼失建物の撤去、事務所探し、避難所の格差、仮設住宅の問題点・・・・・絆の切断、独居老人、障害者への配慮
阪神・淡路大震災の規模等
死者6,434名、行方不明者3名、負傷者43,792名、避難人数(ピーク時)316,678人。
家屋全壊104,906棟、半壊144,274棟(約46万世帯)、一部損壊390,506棟、火災被害全焼7,036棟、焼損棟数7,574、罹災世帯8,969世帯、被害総額約10兆円規模 |
(Wikipedia 23.6.30) |
|
3.税理士事務所の業務
1月17日大震災勃発、1月20日の源泉所得税の納期特例の特例納付書を倒壊した街中を歩いて届ける税理士がいた。
期限延長の告示は1月25日、11市7町
ライフラインの復活、約1週間、通信は復旧1部、携帯電話は一部普及していた、事務所のビジネスフォンは電気につき通電なく使用不可
家族、関与先、知人の安否確認の全力を挙げる。
被災を受けた税理士が被災地外の縁者を頼って地元を離れた。
1ヶ月程度は隔日出勤、事務所半壊につき新しい事務所探し、大手企業が賃貸ビルを抑えて街中の空室は皆無
3月9日、震災税務の被災地税理士向け研修会実施される
被災地は、震災ルック一色、肥満者は1ヵ月で痩身に変貌
期限延長は、翌年5月31日まで、その後は個別申請、個人は翌年3月15日まで「災害のやんだ日」は1月17日(被災当日)と公表。法人は個別延長申請で延期申請多数
期限延長に頼らず、出来る限り前倒しで事務を遅らさないことが大切、2年分は無理、雑損控除の書類作成に時間がかかった。
翌年5月末の法人税申告が大きな山場であった。そのころから、税理士の震災疲れが表面化
被災者が被災者を支援する図式が定著、震災実務の特殊性と、周辺の税理士の業務は期限延長の対象外ので、近隣の税理士の援助は難しかった。今回の教訓とすべき点 |
|
4.税理士会・支部の対応(被災会員および被災者支援)
緊急税制要望(第一次)7. 2.23大阪国税局長宛
緊急税制要望(第二次)7. 3. 8大阪国税局長宛
緊急税制要望(第三次)7. 4.28大阪国税局長宛
緊急税制要望(第四次)7.10.12大阪国税局長宛
兵庫県知事、県下市町村へ期限延長措置について7.2.8
被災地10市11町へ「災害減免制度」のお尋ね7.12. 1
被災地10市11町へ「雑損控除」と「災害減免制度」の選択に関する取扱いについてお尋ね8. 2. 2
日税連会長へ法務省に「被災地の中小会社の最低資本金達成猶予期限の延長( 8. 3.31)についての要望書を提出すべき旨要望
特別融資の斡旋(会員向け、日税連を通じて国民金融公庫に)
仮設事務所の容認、登録変更の無料化、バッチの無料交付
被災税理士の顧問先が被災地外の税理士に業務委嘱した場合のお願い
近畿会は、阪神淡路大震災対策特別委員会を設置
税理士会が被災者向け相談会「税金よろず相談」延べ1,559名、「被災納税者広域申告相談」2,488名、その他支部での申告相談を断続的に実施、官民一体の協力体制で実施したものも多かった
税理士は、休日返上したが、税務署は全面開庁しなかったのは不満が残った
被災地外の支部、及び本会での義援金の募集
全国を含めて、約3億2千万円
被災地への応援税理士の募集
震災税務の研修会実施2月3日、8日、18日
<< 被災者支援の難しさ >>
" 被災を共有する " という困難な理念との戦い被災者の喪失感、絶望感、孤独感、被害者感情は想像を絶する深刻な状況にある
" 物心両面 " という言葉があるが、物(お金、食糧、支援技術)など、だけでは救援できない。物に心が合わされないと受け入れられない。もちろん心だけでは現実的に救われない。被災者が被災者を支援する図式からの脱却は、どうすればよいか。
今後の課題
救援活動は、現地に乗り込んで、現地事務所を設けて、地元と一緒に活動することが必要である
「阪神・淡路まちづくり支援機構」の創設(日本で初めて)への参加
支援機構の全国展開の運動に入る
一段落して、震災関連の冊子編纂
危機管理規則の創設 本会・支部に前文規定を置く。【近畿会、近畿会神戸支部の前文 参考資料】
恒常的な災害積立金会計の制度づくり
危機管理規則によるその後の各地の震災への支援活動
新潟県中越地震 新潟県中越沖地震、豊岡水害、佐用町水害、その他 |
|
5.震災税務
大阪国税局の損失時価の簡易計算は評価されている。【国税局の計算書 参考資料】
マンションの一部損壊の取扱いでブレが生じ問題化した。【新聞報道 参考資料】
還付申告の還付保留が問題化した。
雑損控除と震災減免法との選択適用の複雑性
【比較表 参考資料】
地方税法317条の3の取扱いでの市町村長の不知とバラつき【地方税法条文 参考資料】
災害関連支出の期間経過後の支出
「災害がやんだ日」は未公表、いつか、どうなるのか
「災害が始まった日」(3月11日)公表の意味、災害がやんだ日から1年以内・・・・過ぎればどうなるのか
雑損控除を適用した住宅、その後の譲渡所得の取得費の問題
【近畿会作成Q&A 参考資料】
阪神大震災ではQ&Aを出したが、東日本大震災ではまだ出ていないのでは?
生活に通常必要な資産の判断のトラブル
震災税務に絡む見解の相違による更正処分については、当局は消極的であった。 |
|