(1)電源三法とは
電源開発促進税法、 電源開発促進対策特別会計法、 発電用施設周辺地域整備法 の3つをいいます。
により電力会社から税金を徴収し、 によって特別会計に繰り入れ、 にもとづいて立地する市町村等に配分するのです。
電源三法交付金はいわば、原子力発電所の立地する市町村等への迷惑料です。
電源開発促進税
電力会社に対し、販売電気1,000kwhあたり375円が課されます。
税収は3,292億円(2009年度)になります。当然ながら、この分は電気料金に上乗せされていますので、実質的には消費者が負担していることになります(電気代の約2%になります)。
電源開発促進対策特別会計法
の税収は「エネルギー対策特別会計電源開発促進勘定」という特別会計に組み入れられます。
2009年度決算のエネルギー対策特別会計電源開発促進勘定は、次のようになっています。
(財務省HPより抜粋、単位:百万円)
歳入合計 391,253(前年度繰越含む)
歳出合計 343,512 |
(歳出の内訳)
電源立地対策費
電源利用対策費
独立行政法人運営費
その他 |
144,798
43,867
142,757
12,087 |
発電用施設周辺地域整備法
この法律にもとづいて分配がされます。
上記の「エネルギー対策特別会計電源開発促進勘定」の歳出のうち、「電源立地対策費」は電源立地の促進という本来の目的にそって支出されるものです。
しかし、「独立行政法人運営費」は独立行政法人日本原子力研究開発機構に支出され、同機構は高速増殖炉、再処理、高レベル放射性廃棄物最終処分のための技術開発をおこなっています。本来の目的とかけ離れたところに歳出の4割が投入されているという問題点があります。
原発立地市町村は135万kw の原子力発電所(新潟県・柏崎刈羽原発6号機、7号機クラス)を誘致した場合、45年間(運転開始まで10年、稼動35年)で約1,384億円の交付金が支給され、特に運転開始までの10年間には481億円の交付金が支給されます。(経済産業省資源エネルギー庁「電源立地制度の概要」)
45年間で1,384億円ですと単純計算して年に30億円余です。
原発立地市町村ではその他に、固定資産税、核燃料税、法人住民税の税収が見込まれます。
(2)電源三法のなりたち
電源三法は1974年、田中角栄内閣、中曽根通産大臣、福田大蔵大臣の時に成立しました。
1956年に茨城県東海村に日本原子力研究所、原子燃料公社の立地が決定、時の政府は原発の立地をを進めるため何らかの地域対策の必要性を感じていましたが、広島・長崎に原爆が投下されてまだ間もないこともあり、国民の反発もあってなかなか法律化できませんでした。
そんな中で石油ショック(1973年)が起こり、エネルギー問題が政治課題として急浮上したのを機に、翌年一気に成立させました。
(3)電源三法交付金の変遷
電源三法交付金はもともと迷惑料という位置づけなので、固定資産税が入るまでのつなぎ的性格として当初は運転開始までの交付となっていました。
使途は道路、学校、スポーツ文化施設といった公共施設の建設に限定されていましたので、豪華施設が次々と建設されました。(その後、その維持費が市町村財政に重くのしかかりました)
電源三法の成立した1974年には高度経済成長がピリオドを打ち、電力需要の伸び率はスローダウンしました。さらに79年にスリーマイル島、86年にチェルノブイリで惨事が起こると原発立地への風当たりが強くなり、原発建設が計画通りに進まなくなったため予算が余るようになりました。
予算が余れば減税をすればいいのですが、実際にはさきほど述べた「独立行政法人運営費」のように目的外に使用したり、立地地域の要求にこたえて交付期間を延ばす、使途を広げるということをするようになりました。
「原子力発電施設等周辺地域交付金」というのがありますが、これは原発のある市町村に住んでいる全世帯に工事着工時点から運転終了まで交付されるものです。出力により金額がかわりますが、福島原発の場合1戸あたり月700円、年間8,400円が交付されています。
(4)市町村財政にあたえる影響
日本経済新聞2011年7月3日付によれば、宮城県女川町、青森県東通村、六ヶ所村は原発関連収入(電源立地交付金と固定資産税)の歳入に占める割合が6割を超えています。
そして「交付金は発電所の完成後に大きく減り、固定資産税は資産の償却に合わせて年々減っていくため」「交付金などに依存して身の丈を超えた歳出を続け、ハコモノ施設の維持管理費に苦しむ自治体は多い」としています。
分科会では、原発立地市町村と立地していない近隣の人口同規模の市町村の財政を比較することにより、市町村財政にあたえる影響も考えていきたいと思っています。
(参考)「電源三法は廃止すべきである」清水修二(岩波書店「世界」7月号) |