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I.はじめに
神戸税経新人会は、全ての人に平等にやって来る「相続」をテーマにし、相続の研究というより実務家の参考になる読本を作ってみたいと考えました。世界でもっとも高齢化が進んだ日本で目前に迫っている団塊の世代の相続という問題、相続税に関係のない多くに方々の相続にも注意すべき事がたくさんあります。そして、政府は平成23年度税制改正大綱の中で相続税の課税強化の方向性を打ち出しました、今回の発表が少しでも実務家の皆様の参考になればと願います。 |
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II.相続の一般常識
1.葬儀の目的と変革する葬儀観
葬儀の目的は、残された遺族が葬儀を通して故人との別れをきちんと理解し気持の区切りをつけることであり、友人や親戚など故人とゆかりのある人々と共に故人とお別れをする式であり、故人が迷わず安らかに「あの世」に行けるように冥福を祈ることです。
しかし、最近は故人を偲ぶという気持には大きな変化はないようですが、葬儀の宗教儀礼の持つ意味の減少、人と人とのつながりの希薄傾向、通夜の告別式化に見られる合理性・便利さのみの追求というような理由により色々な「葬儀のかたち」がみられるようになってきました。
2.葬儀の豆知識
香典の相場は3,000円から1万円ぐらいが相場。一般に、血のつながりが濃いほど香典相場は高額になる。親の場合は10万円、兄弟であれば5万円、その他の親類は1万円が相場。勤務先関係か友人であれば5,000円が目安になる。
ただし、上司の不幸は、部下が香典相場を超えて包むのは失礼に当たる。 |
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III.相続対策
1.分割対策・納税資金対策 (分割対策)
(1)相続対策と相続税対策は別物
納税者から相続に関する相談があった場合、「相続税対策」に目を向けてしまいがちです。しかし、その前に、財産を誰にどのようにわけるかという「相続対策」を行うことが先決です。これを怠ると「争続」に発展しかねません。
平成20年の相続税の申告対象となった人は約4万8,000人。全体の4.2%です。相続税対策が必要なのはこの4.2%の人だけです。
裁判所で行われた遺産分割の価額別認容・調停件数は、遺産価額5,000万円以下の割合が、平成19年度が73.1%、平成20年度が72.6%、平成21年度が72.8%です。この結果からも相続税の心配はないけれど、相続対策は必要という人の方が多いということがわかります。
(2) 財産の分け方
ア 財産の整理
財産を分けるにはまず被相続人(となる人)の財産を把握する必要があります。財産にはプラスの財産だけではなく、マイナスの財産もあります。特に保証債務や未確定債務などのマイナスの財産の確認を怠ると、後々大変なことになる可能性があります。
財産の整理は、プラスの財産が多ければ納税資金対策が必要となることもわかります。不動産や同族会社の株式などすぐに換金できない財産が多い場合には納税資金を工面する必要がでてきます。
逆にマイナスの財産が多い場合には、相続財産を放棄することを検討する必要がでてきます。
イ 不動産の分割
不動産がある場合には共有は避けることが賢明です。仲良く平等に分けようと共有にしてしまうと、相続が発生する毎に持分が細分化され、その不動産を処分(売却・贈与)しようと思っても共有者全員の合意が必要となり、簡単に処分することができなくなる可能性もでてきます。分筆登記ができるのであれば、共有よりも分筆すべきです。
ウ 代償分割の利用
相続財産のほとんどが不動産や同族会社の株式で現金預金などが少ない場合があります。これらの財産を跡継ぎである相続人に相続させたい場合には代償分割を活用します。代償分割は、財産を多く取得した相続人が他の相続人に対し多く取得した分を金銭により支払う方法です。支払は分割によることもできます。
エ 種類株式の活用
財産に同族会社の株式がある場合には種類株式を活用することができます。種類株式を発行するには定款で定める必要があります。
オ 遺言の活用
事業を承継して欲しい人や晩年に介護をしてくれた人に財産を多めに遺したい場合など、被相続人の意志を伝える方法として遺言を活用することができます。
(納税資金対策)
(1) 生命保険の活用
相続人を受取人とする生命保険を利用することにより、納税資金を確保することができます。現時点では法定相続人1人当たり500万円の非課税枠がありますので、納税資金確保には有効な手段ということができます。(平成23年度税制改正案では、法定相続人が、障害者、未成年者または被相続人と生計を一にしていた相続人に限られています)
(2) 死亡退職金の利用
被相続人が同族会社の役員等である場合には、死亡退職金を利用することができます。退職金にも法定相続人1人当たり500万円の非課税枠があります(非課税枠の縮小案は生命保険金のみ)。
死亡退職金の金額は、形式基準である「最終報酬月額×勤続年数×功績倍率」により定めることが多いです。勤続年数は、従業員から役員になった人の場合は、役員在職年数となります。功績倍率は役職によって異なりますが2 4倍が多いでしょう。
(3) 金庫株の活用
同族会社の株式を自己株式として発行法人に売却する方法もあります。相続税の申告期限から3年以内に発行法人に株式を売却した場合には、相続税の金庫株の特例として、配当所得ではなく、譲渡所得として課税され税率も20%(所得税・住民税)となります。また、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例も適用することができます。
(4) 組織再編を活用
法人の業績が好調な場合で事業が2つあるような場合には、「分社型分割+剰余金の配当」(分割型分割)を活用します。会社を2つに分割すると被相続人は2つの会社の株式を所有することになります。
相続が発生した場合には、一方の会社の株式をもう一方の会社に買い取ってもらうことにより納税資金を確保することができます。
2 事業承継対策
事業承継の意義として、 経営権(社長の地位)の承継、 支配権(株式)の承継の2つがあります。
社長(オーナー)が決意すれば、社長の立場を譲ることは比較的容易です。株主総会等で手続きを経れば交代が可能です。しかし、これだけでは先代経営者が議決権を支配するオーナー、現経営者は雇われ社長という関係になるだけです。
もう一つ支配権(株式)を承継することがなければ、事業の利害関係人(株主、債権者、雇用者、仕入先、販売先、最終消費者など)のために安定した事業の継続を図ることができません。
(1) 事業承継前に取り組む課題
ア 事業者が現状を把握すること
最初に相続財産中、分割が困難な財産はないか、事業者がイメージする分割は遺留分を侵害する恐れがないか、などを検討するための現状把握が必要です。
事業者自ら把握することが困難な場合は、専門家の活用も検討します。現状把握の視点は、次の項目です。
(ア)会社の経営資源の状況
従業員数、年齢構成、資産額と内容、資金状況など
(イ)会社の経営リスクの現状
負債状況、競争力の現状と将来見込みなど
(ウ)経営者の現状把握
保有自社株、個人名義の土地・建物及び個人負債と保証
(エ)後継者の現状把握
親族や社内及び取引先などの候補者の状況
(オ)予測される相続税に関して
イ 「後継者を誰にするのか」を確定させること必要です。後継者には事業を承継する意思と経営者としての資質が必要です。後継者候補への教育やサポート体制を検討しましょう。
(2) 後継者と事業承継の方法
親族内承継の割合は、20年以上前の9割強から近年は6割強に減少しています。特に、子供が承継するケースは、79.7%から41.6%までに大幅に減っています(東京商工リサーチの調査03年)。
(3) 親族等に会社を引継がせる場合に検討する課題(将来の相続発生を意識して)
事業者が株主総会に影響を与えられる議決権数を確保しておきます。
後継者を指名・選任するには株主総会において新たな経営者の選任決議が必要です。 |
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ア |
定款変更など重要な決議がクリアできる3分の2以上の多数を所有しているか、持株が分散している場合は意識的に買収していきます。 |
イ |
経営を引継ぐ者には議決権株式を与え、経営を引継がない者には議決権制限株式を与え(配当金のみ)、後日制限株式を買い取っていくなどの使い分けができるように種類株式の活用するための会社の定款変更を準備しておきます。 |
ウ |
会社の重要な岐路の意思決定で間違いが生じないようにと「拒否権付種類株式」(黄金株)を1株発行し会長が引き受けて所有します。
黄金株とは特定の事項について株主総会の他にその株式を所有する株主の承認決議が必要となる株式をいいます。つまり、黄金株の所有は特定の事項に対して「拒否権」を有することになります。 |
エ |
生前に事業を引継がない子に相続税精算課税制度を活用して贈与し、その代りに将来の相続時に際して遺留分の放棄を行うというセットでの利用方法も検討します。
これは、将来兄弟間等で紛争が生じても遺留分放棄の理由とそれへの代償が明確で裁判所の許可も得やすいからです。 |
(4) 親族以外への事業承継(M&A:企業の合併・買収のこと)
後継者がいない場合、既存の事業を存続させるための選択肢として位置づけられます。
M&A の手法には、合併、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、株式交換、第三者割当増資などがありますが、中小企業では株式譲渡の方法が多く用いられています。
ア MBO(マネジメント・バイアウト)・EBO(エンプロイ・バイアウト)
前者は役員に承継し、後者は従業員に承継する場合をいいます。 |
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(ア) |
親族以外の経営者が金融機関やファンドから資金調達を行い、親族から対象会社の株式やその子会社株式、事業部門の一部を譲り受ける場合に利用されます。 |
(イ) |
後継者となる経営陣が受け皿会社を設立し、その受け皿会社に株式譲渡をする方法があります。これは、受け皿会社が金融機関から借入れをし、拠出資金と借入れ資金によって株式の購入を行います。借入れ返済は買収会社と受け皿会社が適格合併を実行して合併後の会社が返済をすることを想定しています。 |
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定義 |
メリット |
デメリット |
株式譲渡 |
会社の株式を譲渡する |
手続が簡単
法律上・事実上の制約が少ない |
偶発債務の遮断ができない
買収資産の選別ができない |
事業譲渡 |
会社の事業を譲渡する |
簿外債務など予期しない債務の遮断ができる |
個々の資産の権利移転手続が必要
債務を承継するには債権者の個別同意が必要(労働者も個別同意必要)
事業の許認可の取得が再度必要 |
合併 |
2つ以上の会社が合体して一つの会社になる |
債権者の個別同意が不要(通知、公告で足りる)
債権債務の個別移転手続が不要
許認可の再取得が不要
合併対価は株式なので現金が不要 |
手続が煩雑
偶発債務の遮断ができない
買収資産の選別ができない |
イ M&Aによる事業承継のメリット
会社関係者以外の他社等に株式を売却して事業を承継することができます。 |
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(ア) |
廃業するより多くの創業者利得が得られます。譲渡対象企業ののれん等も評価対象になりますので企業の評価額が高まります。 |
(イ) |
創業者が金融機関の個人保証から解放されます。債権者と買い手側との協議に任されます。 |
(ウ) |
事業承継は必ずしも会社財産のすべてを譲渡することを意味しません。買い手側の欲する有形資産、無形資産(人材、顧客)などの選択が可能です。 |
(エ) |
従業員の雇用関係を継続させることも交渉により可能です。 |
ウ 会社売却価格の算定方式
会社の価値を決める算定方式に絶対的な方式はありません。中小企業では時価純資産方式に加えて年倍法による営業権評価を含めた方式がよく使われています。
3 中小企業経営承継円滑化法の立法遺留分に関する民法の特例措置の内容
先代経営者の推定相続人全員が、次の合意をすることできる。
除外合意
(1)当該株式等の価額を、遺留分算定基礎財産に算入しない又は後継者が取得した株式等について、遺留分算定基礎財産に算入すべき価額を固定する旨の合意。
(2)後継者が取得した株式等以外の財産の価額を、遺留分算定基礎財産に算入しない旨の合意
(3)後継者以外の推定相続人が取得した財産の価額を、遺留分算定基礎財産に算入しない旨の合意
贈与税の納税猶予制度
制度の概要・・・非上場中小企業の後継者が贈与により取得した株式等に係る贈与税の全額が納税猶予される。
但し、既所有分も含めて株式総数の3分の2が適用上限(税措法70条の7第1項)先代経営者・後継者本人が死亡した時は、贈与税の納税義務消滅。
この時には、贈与時の価額により相続税課税(税措法70条の7の3第1項)
経済産業大臣の「確認」を受けることで、「相続税の納税猶予制度」の適用(税措法70条の7の4)
適用要件・・・・
(1)経済産業大臣の「認定」を受け、5年間は雇用確保をはじめとする事業継続要件を満たすこと。(円滑化法第12条)
(2)経営承継受贈者は、贈与の時において「計画的な承継に係る取り組みに関する経済産業大臣の確認」における特定後継者であること及び 当該法人の役員に就任してから3年以上経過していること。
(3)該贈与の時以後において、当該贈与により取得した株式等を、税措法70条の7第1項の規定の適用をうけようとする株式の全部を有していること。
(4)該贈与の時以後において、当該贈与者(先代)が当該法人の役員でないこと
(5)贈与者(先代)が所有する株式数が3分の2を超える場合は、承継者がその従前所有分と含めて3分の2に達するまでの株式数を贈与すること。そうでない時は 贈与者(先代)の所有株式のすべてを贈与すること。
(6)贈与認定申請基準日における当該中小企業者の常時使用する従業員の数が、当該贈与の時における常時使用する従業員の数の80%(端数切り上げ)を下回らないこと。
相続税の納税猶予制度
(1) 基本的な制度の流れ |
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ア |
予め、計画的な承継に係る取り組みに関する経済産業大臣の「確認」を受ける |
イ |
相続発生時に 経済産業大臣の「認定」を受ける |
ウ |
の確認が不要な場合
(ア) 相続人が60歳未満で死亡した場合(規則6条 八ト(3)(i))
(イ) 被相続人の死亡の直前の保有株式と公正証書遺言による遺贈等により取得した株式の合計が、総株主議決数の50%超である場合。 |
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ア |
相続開始の日から5月を経過する日以後において当該法人の代表者である相続人が、相続税の納税が見込まれること |
イ |
風俗営業を営む法人でないこと |
ウ |
資産保有会社、資産運用型会社でなく、総収入金額がゼロでないこと |
エ |
常時使用従業員が1人以上であること |
オ |
特別子会社がでないこと |
カ |
「経営承継相続人」であること(贈与の の要件と同じ) |
キ |
当該被相続人の親族であったこと |
ク |
「 確認」時の特定後継者であり、相続開始時に、当該法人の役員であったこと |
例外
(ア)被相続人が60歳未満で死亡した
(イ)当該代表者(承継者)が当該相続の開始の直前において、当該法人の役員であった場合で、相続開始前から有していた当該法人の株式数と相続により取得した株式数の合計数が、総株主議決数の50%超であるとき。 |
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IV 民法第五編
1 民法とは
人々が日常生活していくうえで紛争が生じたときに、それは法的にどのように解決されるであろうか。法を大きく分けると、第1に、公法がある。これは、国家と国民との関係及び国家の機関相互の関係を定める法である。第2に、民法、商法、労働法などの私法がある。これは、国民相互の関係を定める法である。その中で民法が一般法となっており、商法、労働法はその特別法である。
2 税理士のための民法第五編
(1) 相続の承認及び放棄 (相続の承認又は放棄すべき期間)
第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において、伸長することができる。
相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
ア 承認・放棄をなすべき期間(熟慮期間)
相続財産を調査したうえで、選択を熟慮する期間が設けられた。したがって、この期間を「熟慮期間」と呼んでいる。本条1項の3ヶ月という期間は、相続人が承認・放棄のいずれを選択するか、3ヶ月ならば相続人も短すぎず、相続債権者にとっても不利益なまでには長過ぎないとの意図から定められたのであろう。
イ 熟慮期間の開始時期
「自己のために相続の開始があったことを知った時」とはいつなのか、解釈は分かれていた。しかし、現在では、相続人に落ち度はなく調査しきれなかった相続財産については、その存在を知った段階ではじめて、「自己のために相続の開始があったことを知った」ことになる、と解釈されている。
ウ 熟慮期間の伸長と相続財産の調査
相続財産の所在や態様が複雑で、3ヶ月の熟慮期間内には調査が完了せず、承認・放棄の判断ができないこともあり得る。そうした場合、相続人を含む「利害関係人」その他の請求によって、家庭裁判所の審判により伸長できる。期間伸長の申立ては、当初の熟慮期間のうちに行うべきと解されている。
(2) 限定承認
第922条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
ア 限定承認の意義
限定承認とは、被相続人の債務及び遺贈を相続によって得た積極財産の限度まで弁済することを条件とした、相続人の意思表示による相続をいう。
限定承認が最も相続人に有利なのは、被相続人の相続財産がプラス・マイナスか不明の場合である。
イ 限定承認の効果
限定承認をした相続人は、被相続人の債務全体を一旦は承継する、というのが通説・判例である。すなわち、債務の返済原始としては相続財産を限度とする有限責任を負うと解している。
(共同相続人の限定承認)
ア 第923条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
イ 共同相続人がいる場合の熟慮期間の起算
相続人が最初に単純承認し、後から他の相続人の熟慮期間中に、限定承認を希望すれば、相続人の熟慮期間は徒過していても他の相続人に同意すれば、限定承認ができるのが通説である。すなわち、最後に熟慮期間が開始した相続人を基準とする。
(限定承認と税金)
相続に関する税金としては、国税は相続税及び所得税が、地方税は不動産取得税が課される場合がある。相続についてどの相続形態をとるかにより、関係する税金も異なってくる。
税金問題を把握しておかないと、後日、予想もしない課税通知を受けてしまうことになるので、これを理解しておく必要がある。
ア 相続税
限定承認も相続であるから、当然、相続税が発生する。しかしながら、相続税の課税計算において、相続財産があっても、相続債務(債務控除の対象)が相続財産を超過しているときは、課税されないこととなる。一定の場合課税関係が生ずる。
(4) 放棄 (相続の放棄の方式)
第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判に申述しなければならない。
ア 相続の放棄の方式・要件
本条は、相続放棄の方式であると同時に形式的要件として、限定承認と同様に、家庭裁判所への申述を定めている。申述は本来は書面又は口頭ですることができるが、限定承認・放棄の場合は、熟慮期間内に、申述書の提出が必須である。
(相続放棄の効力)
第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
(5) 遺言の執行 (遺言書の検認)
第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
ア 遺言書の提出・検認
遺言書の提出や検認が義務付けられているのは、第1に遺言書の保管者であるが、遺言書の保管者がいない場合の第2次的な提出・検認義務者は、遺言書を発見した相続人である。遺言書の保管者や相続人が遺言書の提出を怠り、検認を経ないで遺言を執行した場合は、5万円以下の過料に処せられる。(1005条)また、相続人が遺言書の提出をせず、故意に隠匿した場合には、相続欠格となったり、受遺能力を失うこともある。
(6) 遺留分 (遺留分の算定)
第1029条 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
ア 相続開始時点で有していた財産及び控除される債務
相続開始時点で有していた財産とは、相続人が承継した積極財産(祭祀財産については相続の対象からはずされているため(897条)含まれない。)をいう。生命保険金については、被相続人が自らを受取人として指定していた場合には、それが相続財産を構成し、基礎財産に含まれる点に異論をみない。これに対し、第三者が受取人に指定されている場合には議論がある。死亡保険金は保険金受取人固有の権利であり、死亡保険金請求権は被保険者の死亡時にはじめて発生するものであり、保険契約者の払い込んだ保険料と等価関係に立つものでなく、死亡保険金請求権が実質的に保険契約者または被保険者の財産に属していたものとみることはできない。よって、死亡保険金請求権が実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることはできない。とされている。
(遺留分の算定2)
第1030条 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によってその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。
ア 相続開始前一年間にされた贈与
相続開始前の一年間にされた贈与は、遺留分の基礎財産に算入される。
イ 特別受益としての贈与
共同相続人に対し婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としてされた贈与については、相続開始前の一年間であるか否かを問わず、遺留分算定の基礎財産に算入される。(民法1044条は特別受益の範囲についての民法903条を準用)つまり、特別受益については、903条1項の規定に従い持ち戻され、遺留分算定の基礎財産に算入される。その結果、ある贈与が特別受益に当たる場合には、その贈与は時期のいかんを問わず、また遺留分侵害の認識の有無を問わず、基礎財産に算入され、遺留分減殺請求の対処となる。
エ 死亡退職金等の遺族給付
死亡退職金等の遺族給付が特別受益財産として持ち戻しの対象となるか。
学説の多くは、死亡退職金等の遺族給付が賃金の後払い的性質を有すること、持戻しを否定すると共同相続人間の実質的衡平が著しく害されることなどを理由に、生命保険金請求権と同様に、その特別受益性を肯定する。 |
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V 相続税調査のポイント
1.準備調査・税務調査
(1)相続税法第58条の死亡の情報が市役所から入る。この時、固定資産税の課税台帳から、明細書が送付される
(2)準備調査は、申告書が出てから動く
(3)KSKから所得税申告書が集まる・・・取引銀行を判別
(4)臨宅(税務調査)
初動調査で勝負は決まる。重加算税は、相続人の行為に対して課税するもので、相続人でない者(嫁や孫等)が仮装・隠蔽しても課税されない
2.最近の相続税調査の傾向
(1)国際化・高度情報化時代→海外に資産が流出している可能性
「海外送金等調書に関する法律」98年4月から。 送金限度1,000万円。国税庁が管理
(2)超大口資産家
毎年照会していたが、現在は凍結
3.相続税調査のポイント
(1)不表現資産をあげて、重加算税対象を更正するのが目標。死亡直前の出金は、調査現金残は決め手なし。現況調査を重要視する80%はこれで終わり
(2)過去の譲渡所得 過去の相続税申告書、利子・配当の調書、3年間の高額の動き
(3)生命保険 各年度の所得税申告書の生命保険控除のチェック
(4)土地・建物 現地にはあまり行かない
(5)本税はまけても、重課対象を多くとりたい。総額は減少してもよい
(6)貸金庫は見る。整理していない納税者が多い |
(神戸税経新人会) |
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