論文

特集  第46回千葉全国研究集会
分科会テキスト
> 大嶋訴訟判決から始める判例研究(東京会)
> 会計事務所の悩み解決(東京会)
> 日本の法人税率は本当に高いのか?(大阪会)
> 税の歴史とその時々の国家の成り立ち(神戸会)
> 最強の税務調査対策(関信会)
> 給付付き税額控除と納税者番号制度を考える(埼玉会)
> 税理士法、いま何を問うべきか(千葉会)
> 公開事例研究 - 納税者の権利と課税権力のはざ間に立って
(中国会)

会計事務所の悩み解決〜事業承継、顧客獲得、管理運営、税務調査の基本、大研究!
東京税経新人会


I. はじめに    相田 英男

本分科会は、まず各テーマを担当者が報告し、分散会形式で討論する全員参加型の分科会を企画しました。

当初の企画では、景気低迷と会員増大する税理士業界において、若い税理士が顧客を獲得するにはどうすればいいか、また、税務調査にどのように対応したらいいかを先輩税理士に披露していただき、みんなで討論して身につけようというものでした。

担当者も決まり、最初の検討会を持ちましたが、席上、会計事務所の関心問題は事務所の事業承継ではないだろうかとの意見が出て、急遽事業承継もテーマにすることとなり、同時に、東京会の会員全員を対象に、事業承継についてのアンケートをとってまとめることとなりました。アンケートは9件寄せられました。アンケートにご協力くださった会員のみなさんにはこの場をお借りしてお礼申し上げます。

実のところ、筆者も、事務所の事業承継をどうするか悩んでいる一人です。
報告者は4人です。貴重な経験談をお聞きいただき、グループ討論により参加のみなさんが納得いくまで討論できるよう願っています。
テーマの性質上、その内容を紙面で十分にお伝えすることは難しいと発表者は言っております。ぜひ、直接参加いただき、生の報告を聞いてください。たくさんの参加をスタッフ一同お待ちしております。

II. 「会計事務所の事業承継〜承継の実態と問題点等」    小泉正義

1.趣旨

高齢化が著しい税理士業界にあって、顧客ではなく事務所自体の事業承継が、所長税理士の大きな関心事となっている。他方、顧客となる中小零細企業の減少、業績不振、税理士の増加などから、税理士の独立開業や新規顧客獲得が困難な状況となっており、独立する税理士または規模拡大を図る事務所にとっても、事務所の事業承継または顧客の承継が重要な選択肢となってきている。
そこで本分科会では、会員の関心も高いと考えられることから、この難しいテーマについて取り扱うこととなった。

2.承継を巡る問題点等(アンケート結果を踏まえて)

一口に事務所の事業承継といっても、さまざまなパターンがありうる。a. 事務所の承継・顧客の承継、b. 全体の承継・一部の承継、c. 勤務税理士の独立による承継・外部者の独立による承継・既存事務所による承継など。また承継する際の流れ・手続きについても承継予定者の入所・勤務の場合もあれば、承継予定者と共同での法人化などさまざまである。本分科会ではいくつかのパターンについて、法的性質(契約形態等)、起こりうる問題点、アンケート結果等に基づく実際例などを検討するものとする。

本分科会の実施に合わせて会員の方から貴重なアンケートを頂くことができた。このアンケート結果に基づき、これから事務所を承継させようまたは承継しようと考えていらっしゃる方々に、上記の検討のほか、担当者の経験等も踏まえ、少しでも有益な情報をお伝えできればと考えている。

III. 税理士事務所のマーケティング    藁 信博

I 税理士のおかれている環境

1 税理士業界

 税理士登録者の推移

税理士の登録者は、平成22年5月現在、71,598人と過去最高となっているが、過去の増加数及び増加割合では、最低となっている。また平成21年2月の「税理士・公認会計士の受験生の動向調査」(参考資料)による「受験生の税理士試験離れの傾向」を考慮すると、試験制度が変わらない場合には、後に述べる年齢構成から考えて、今後減少していく可能性が高い。
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税理士の年齢構成

税理士の年齢構成は、「税理士会(平成20年12月15日)」によると、最多値は、60代で、15,708人(22.3%)であり、特筆すべきは、20代333人である。(参考までに平均年齢は59.52歳)
平成17年の国政調査により年齢階級別人口構成との比較では、20・30代の低さ、40代以降、特に60代以降の構成比の高さが抜きんでている。
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税理士事務所のイメージ

「第5回税理士実態調査報告書(平成17年3月)」は、10年ごとに日本税理士連合会で税理士会員及び税理士法人の実態を把握するために行われている調査である。

開業税理士に対するアンケート24,229件のうち、96.37%が単独経営であり、10.89%が税理士若しくは補助税理士を雇用しており、約50%が専従者に給与を支払い、約90.54%が平均1.9人の従業員を雇い、29.27%が平均1.3人のパートを雇っていることになる。
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2 税理士業界市場規模

 事業所数の推移

平成16年度の事業所・企業統計調査によると総事業所数は592万事業所であり、事業内容等が不詳の事業所を除くと、事業所数は572万8千事業所、従業者数は5206万7千人、平成11年に比べ,事業所数は7.7%(年率1.6%)減,従業者数は3.2% (年率0.7% )減となっている。
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 市場規模

の事業所数の推移にあるとおり、顧客が減少している業界である税理士・公認会計士の市場規模は、『税理士のためのマーケティングマニュアル』によると、「平成11年の1兆2,018億円から1兆427億円に減少し、市場規模が縮小したのは調査以来初めてのこと」と述べられている。

3 税理士業界のまとめ

新規税理士の停滞、高齢化の進展、事業所の減少という環境の中にいる税理士業界においても、業績を伸ばしている事務所も多数散見される。クライアントにおいても、例え業界としては最悪な状態であっても、業績を伸ばし、雇用を拡大しているところが存在する。その様なクライアントの傾向は、「他とは違う」ということがいえる。
市場が停滞している中でも、経営者として経営基盤の拡充などを行うことで、所員とクライアントに安心感とよりよい仕事を提供していかなければならない。
II 税理士のマーケティング

1 マーケティングとは

マーケティングとは、単なる販売活動ではなく、企業や組織の活動のうち「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動」であり、すなわち事業の総体であるといえる。

例えば、税理士事務所の所長が、所員に対して「新規顧客の開拓に税理士事務所として取り組む」というマーケティングを指示することは、とても成果を上げるための戦略とはいえず、効果も上がるはずがない。どのような顧客に対してどのようなサービスを提供するのか、同じようなサービスを提供している競業者に対するアドバンテージは何か、新しいサービス若しくは既存のサービスがすばらしいことをどのように顧客に伝えていくか、といったことを企画し、管理しなければならない。

もちろん、税理士として、専門家としてクライアントのマーケティング戦略に関与することも多いとは思われるが、自己のマーケティング戦略を構築し、市場で勝ち続ける。つまり顧客に良質なサービスを提供することで、顧客の成長に貢献しなければならない。

2 事業領域

事業領域(ドメイン)の選定は、マーケティングにおいて最も重要な位置を占める。小規模企業である税理士事務所が、限られた経営資源である「人、もの、金」を重点的に配分されなければ、事務所内に多くの問題を抱え込むこととなる。

日本の金融機関の例

日本の大手都市銀行は資本力にものを言わせて全方位のサービスメニューを展開している。その結果は、「どこも、そう変わらない。」ということである。このサービスなら、この銀行に行かなければならないという、メッセージが全く見えない。

アメリカ金融機関の例

『フォーチュン』誌の「最も働きがいのある企業』の常連になっているエドワード・ジョンズの社員に戦略について質問をすると、おそらく37,000人のほぼ全員がきちんと答えられる。「信頼できるファイナンシャル・アドバイザーに、フェース・トゥ・フェースで気軽に相談し、投資判断を任せたいと思っている保守的な個人投資家のニーズに焦点を合わせ、一人のファイナンシャル・アドバイザーが支店を運営する体制を全国展開し、そのために、現在1万人いるファイナンシャル・アドバイザーの数を2012年までに1万7千人に増やすこと。」がエドワード・ジョンズの戦略である。

このことから、顧客は「投資判断を任せたいと思っている保守的な個人投資家」となる。例えば「自分で売買したい顧客」を顧客とする場合、オンライン取引のシステムを構築する必要があるが、同社では、このような投資は、戦略に反する行為となり、採用されることはない。ドメインを明確にすることで効果的に経営資源を投入している。

小規模税理士事務所の場合

全方位の総合的なサービスを提供できるのは、経営資源を贅沢にもつ大手事務所だけとなる。

ランチェスター法則の弱者戦略
a 全体発想を捨てて細分化する。
b 勝ちやすき場面を選ぶ。
c 重点主義に徹しナンバーワンを作る。
d 営業活動は局地戦にする。
e 戦闘時間を長くする。
f 接近戦で利用者に近づく。
g 軽装備で自由度の高さを保つ。
h 先制攻撃ですぐ実行。
i 隠密行動をとり表面に出ない。

小規模税理士事務所は、法人顧問、相続贈与資産税、M&A、事業計画、金融商品、経営コンサルティング、不動産運用、FP 業務、ホームページの管理運営、行政書士業務、社会保険関連、助成金などの様々な業務に対して、全方位でサービスの提供をできない。何を捨て、何を取るかが重要であり、上記のように縦で業務を分類するのではなく、建設業や医業に限定するといった横に分類するような、事業領域の選定も検討してみる必要がある。

3 10の問題点

フィリップ・コトラーによると「税理士の様なプロフェッショナルサービスにおけるマーケティングには、製品マーケティングと異なる9つの問題点と、顧客志向が重要である。」と述べている。

a クライアントの不安
b 経験の重要度
c 差別化の難しさ
d 品質管理の維持
e サービス提供者による販売活動
f 専門家がマーケティングにあてる時間
g 消極的になりがちなマーケティング活動
h 広告に対する葛藤
i マーケティングについての知識不足
j 顧客志向

4 クライアントの不安

例えば、新車を購入する場合、カタログによる評価、周りの人の評判、購入後のイメージを得やすいが、税理士が提供するサービスは、無形であり有形なものに比べて品質評価が難しく、そもそも購入後ですらサービスの質の評価ができない。つまり異なる提供者によるサービスの比較検討ができないこと、同じサービス名であっても提供されるサービスの内容が様々であり、料金体系も無い若しくはとても複雑であることが多く比較は不可能であるといえる。

プロフェッショナルサービスを提供する時に、提供側と提供を受ける側で、情報格差及び認識格差が非常に大きく、顧客がサービスの提供を受けることの「不安」を解消することに心血を注がなければならない。顧客に対する教育、購入後の速やかなフォロー、品質保証の3つが重要である。

5 経験の重要度

サービス購入の際の基準に、「経験」がある。例えば、お客様から「当業界の仕事をどれだけしたことがありますか?」という問いがある。経験とその仕事に対する意欲及びその結果に対しては、何ら関係がないが、先の「顧客の不安」を取り除くための対策が必要となる。
また新たなマーケットチャンスを発見し、顧客ニーズを満たすための新たなサービスを提供するときには、常に「経験が無い」ということになる。

6 差別化の難しさ

記帳代行サービスの結果を差別化することは難しい。納税申告書の差別化は不可能であり、もしこれを行ったとすれば、ライセンスを取り上げられることになる。

7 品質管理の維持

クライアントの期待を上回るレベルのサービスを提供する為には、顧客が期待するサービスのレベルを理解しなければならない。しかしそのレベルは顧客によって大きく異なり、顧客の経験やサービス提供時の約束、契約時の口コミなど、複合的要因によって、期待値はそれぞれ異なる。

当事務所の昨年度の失敗事例として、中国の日本法人で業容が急拡大している会社の事例を紹介する。平成21年8月に受注して、有望顧客と言うこともあり、税理士である私が、毎月月初に朝9時から18時までの1日をかけて、若い社長(中国本社のオーナーの息子)とのミーティング、未熟な経理(経理未経験)の指導を行っていました。社長とのミーティングの感触では、制度会計より業績の数値化を中心とした管理会計にニーズがあり、業績管理を中心に経理の指導を行い若い社長から高い評価を頂いていた。しかし、今年2月になって顧問契約を解除されることになった。

原因は、中国に対する日本法人の制度会計の報告がなされていないことだった。未熟な経理ではなく、経験のある日本にいる中国人の経理を雇用することで、中国と日本とのコミュニケーションギャップ解消のために中国本社が行った決断である。

この失敗の経験は、正に顧客の期待するサービスの取り違いによるものであり、「真の顧客」、この場合には中国本社と若い社長のどちらが「顧客なのか?」という、認識不足から生じたものである。本社が望むサービスとレベル、若い社長が求めるサービスの品質とレベルは全く異なる。もし、この認識不足が無ければ、提供するサービスを変えることで、顧問契約が維持できたはずである。

8 サービス提供者による販売活動

サービスの提供者から人柄も含めてサービスの内容を説明することで、クライアントは安心感を得る可能性がある。ただ、一方で税理士の多くは、このような教育を受けておらず、それどころか営業活動を行わないために、税理士になった者も多いのではないだろうか。

9 専門家がマーケティングに充てる時間

プロフェッショナルサービスを提供する者は、時間の切り売りをしてお金を稼いでいる。マーケティングに時間をかけることで、サービスの品質の低下を招いたのでは本末転倒になる。小規模事業者である税理士事務所が、マーケティング担当者を置くこともコストの関係上難しいうえに、提供するものが無形のサービスであり、サービスメニューの作成、サービス内容の管理を含めて外部の者にマーケティングを依頼することは不可能と言わざるを得ない。

10 広告に対する葛藤

平成14年の税理士法改正で税理士の広告が解禁された。現在、新規設立した法人に対するダイレクトメールは、月に30件〜 70件届くと言われている。プロフェッショナル(=「ジェントルマン」と考えているなら)としてふさわしくないと考える税理士も多いと思う。

11 マーケティングについての知識不足

12 顧客志向

マーケティングは、料理のように自分の食べたい料理の材料をそろえて、手順どおり調理をすればできるものではない。提供するサービスを顧客の視点で考える必要がある。当然のことではあるが、顧客に比べて大きな情報格差がある中で、専門家の立場で顧客のことを考えるのでのはなく、顧客の立場でサービスの提供を考える必要がある。
III 当事務所のマーケティング

1 前提

マーケティングを行う前提として

マーケティング担当者

所員を平成21年10月から1名増員して社員3名とパート1名の体制となり、なんとか税理士である私が、申告書作成業務などの日常業務から離れることができた。ただ顧客コミュニケーションの充実の為に、顧客訪問は、所長と所員の同行が基本としている。現在、日常業務から離れることにより、業務の管理およびマーケティングの担当者としての業務ウェイトを高めている。

2 品質管理

人の管理

人事考課による人の評価、目標管理による自己目標の管理、情報誌の原稿の作成、ブログの原稿の作成により、評価による人材の管理、人材の能力の開発を行うことにより、品質管理の充実を図っている。

a 所員の能力向上がサービスの品質向上に資することから、事務所方針の提示、職能別人事評価(目標管理を含む)を実施して、昇給・昇格に利用しています。(参考資料1 スタッフの考課表)

b a の人事考課の中の目標管理は、測定可能なものに限り、具体的には専門書籍を購読し小論文を提出することが、目標として掲げられることが多くなっています。

c 情報誌の原稿作成
所員が、事務所で編集発行している情報誌の原稿を作成することで、顧客知識の深化、業務知識の拡充を目的としている。具体的には、既存顧客の紹介記事の作成の為の社長へのインタビューや原稿を作成することで、顧客のことをより深く理解することができる。また「税制改正」や「法人税の節税」などの特集記事を作成することで、業務知識の体系化に役立つと考えています。

d ブログの投稿
所員が日常調べたことのノート代わりに、ブログへアップすることにより、業務知識の深化に利用しており、昨年9月から考課表に入れることで人事考課と連動しています。

業務管理

定型業務、臨時の業務を事務所全体で管理することを徹底しています。

a データベースにより、業務の管理(参考資料2)
定型業務は月初に自動的に発生させます。非定型業務は必要時に担当者が入力し、業務終了後に終了した旨を入力することで、業務の漏れをフォローすることを徹底しています。このデータベースの出力形式を変えることで業務処理簿となります。

b データベースから、月初に申告リストを作成

顧客属性から申告の要不要を問わず、ハードコピーを行い、クライアントの担当者以外がの所員が申告の有無、基準事業年度の課税売上高を確認することで、クライアント担当者との二重にチェックによる事務所としての確認業務を行っています。

c グループウェアにより、全員のスケジュールを管理

3 顧客教育

顧客教育のため「お知らせ」を送付しています。種類としては「決算準備のお知らせ」(決算月)、「役員報酬改定のお知らせ」(申告書提出月)、「中間消費税のお知らせ」(申告書提出月)、「中間法人税、中間消費税のお知らせ」(申告書提出月)、「年末調整準備のお知らせ」(11月中旬)、「確定申告準備のお知らせ」(12月初旬)をクライアントの担当者以外のその月の「お知らせ」の担当者が郵送の必要性の有無などを判断して郵送しています。

事務所からの郵便物である「お知らせ」により、顧客の教育および、定型業務の漏れの補完のために行っています。基本的には、顧客訪問は所長との同行が原則となっており、業務処理の漏れは防げると考えていますが、将来所員だけでの訪問が増えたときのための、顧客教育および業務の補完の為です。

4 販促戦略

情報誌の発行

2003年4月から事務所で編集発行している情報誌(「way to the Top」という。)は4月、8月、12月の年3回発行で22年4月で通巻22号となりました。当初A4カラー4ページでスタートし、現在はA4カラー20ページとなり、主な配布先は、顧問契約のある顧客、確定申告や相続の顧客、業者などで、約130部を郵送しています。構成としては、表紙、私の原稿が2ページ、顧客紹介が2ページ、特集が4ページ、相続税研究所が1ページ、顧客一覧が2ページ、顧客の広告が1ページ、新規クライアントの紹介と既存クライアントの新サービスなどのニュースで2ページ、その他は自社広告となります。

販促機能して、自社サービスのメニュー化により既存顧客の他サービスの掘り起こし、顧客一覧により顧客紹介の推進、無形であるサービスの有形象徴物としての問い合わせのあった見込客などへの販促物として利用しています。

具体的には情報誌の紙面広告で、相続の事前対策、生命保険の販売、事業計画のサービス内容及び価格を提示しています。顧客一覧を掲載することで、例えば歯科医院の顧客が多いことを示すことで、新規紹介を促進しています。

ホームページの運用

下記の4つのホームページを運用している。昨年度の相続の案件の100%と新規法人及び個人顧客の半数が、ホームページから受注となっています。

下記ホームページは、全て自社で作成及び運用をしています。コストは、人件費及びサーバーの管理料のみとなっています。外注化によるデザイン性の向上およびスピードの向上を期待することもできますが、サービス提供者が自社サービスを最もよく知っており、ホームページの企画運営は、社内で行うべきであると考えているためです。

イ http://www.warara.com/blog(所長と所員のブログ)運用期間約8年
ロ http://www.warakaikei.com(会計事務所としての公式サイト)運用期間2ヶ月
ハ http://tax.warakaikei.com(サイト名「東京相続相談所」)運用期間1ヶ月
ニ http://ameblo.jp/monohonzeirishi/(所長のブログ、イよりもフレンドリーな位置づけ)運用期間2ヶ月

5 まとめ

当事務所のマーケティング戦略は、人及び業務の品質管理、販促戦略として情報誌の発行、ホームページの運用となっています。方向性としては、相続の受注に重点を置きます。これは、事務所所在地の特殊性によるものです。品川区を中心とした都心地域は、地価が高いため、相続税の申告ニーズが高いと考えているためです。今後は、相続の強化のためのダイレクトメールやセミナーを強化する必要があると考えています。
参考図書
『コトラーのプロフェッショナルサービス・マーケティング』著者 フィリップ・コトラー、トーマス・ヘイズ、ポール・ブルーム
『税理士のためのマーケティングマニュアル』著者 大谷展之、竹内実門
『現代の経営』著者 P・F・ドラッカー Harvard Business Review July 20087月号 デイビッドJ. コリス著 マイケル G. ルクスタッド著

IV. 会計事務所の管理運営    K.S

会計事務所といっても税理士としての固有の専門業務を除けば、特別な内容はそれほど多くはない。4名という当事務所の規模を考えると、不要な作業や設備投資もあるかもしれない。また、従業者数が多い大規模な会計事務所にとっては取るに足らない内容かもしれない。

しかし、お客さまに対するサービスの質を維持向上する上で、リスクの軽減や業務の効率化、それに伴う時間のゆとりの創出を念頭に置きながら管理運営を実践することは必要不可欠である。そしてそれらの経験を重ねていれば、小規模企業が中心であるお客様の経営マネジメントに対して、何らかのヒントを提供できると考えている。

今回、パネリストの一員となったことを好機として、発表当日までの期間に、以前から温めていたプランをいくつか実行に移したいと考えている。そのため、この原稿では当事務所が実践している手法についての項目の紹介に留めることとする。管理運営の大枠としては業務・人事労務・顧問先情報・財務・コンピュータといった内容である。なお、現状では管理作業の大半を表計算ソフトのExcelで行なっている。

ところで税理士は、税法及び会計の職業専門家として、高度な知識と判断とを求められている。また、12月から翌年5月までを中心とした非常に忙しい時期と、それほどでもない時期との間で業務量の差が激しい。これらの特徴を踏まえて、事務所全体(大規模な事務所であれば各部署)を運営していく、というある種の宿命的なテーマが存在していると感じている。

1.業務管理
年間業務の把握と平準化
イベント別の管理表と
 作業マニュアルの整備
月別の作業の管理
月次の管理
作業指示書の記入
案件別申告作業管理
2.人事労務管理
執務日誌の作成
休暇の管理
3.顧問先情報管理
基本データ
消費税関係
電子申告情報
文書

4.財務管理
報酬台帳
支払
給与ソフト利用
諸勘定残高管理
5.コンピュータ運営
ハードの状況
ネットワーク
各種使用ソフト
データ管理

いずれも改善の余地が少なくないが、当日の参加者からのご意見にも期待を寄せている。
なお、当日の時間制限を考慮して、いくつかの項目に絞って発表する可能性があることを、予めおことわりしておきたい。

V. 税理士が押さえておきたい税務調査の基本    平石 共子

はじめに

税理士資格を取得して税理士として実務についたとき、税務調査に関する知識や経験が欠落しているということにはっと気づく。税理士会での登録時研修は十分とはいえない。税理士試験の中にも登場しない。会計事務所に勤務していても税務調査の経験はあまりできない。税務調査を受ける件数自体も少ないというのが実態であろう。

税務調査に関する税理士向けのセミナーや研究会を開催すると、新人税理士のみならずベテラン税理士の参加も多い。税理士業務の中でも税務調査については研究を要する業務の1つとなっている。

東京国税局が平成17年6月に「調査における法律的知識 ーわかりやすくマンガで解説!!」を発刊して税理士の間でも問題となった。若手職員に対する教材として、内容は税務当局の税務調査に関する基本スタンスであり、納税者を軽視したものとなっている。税理士はこれに対抗する法律的知識を身につける必要がある。税務調査は経験して身をもって知ることも多くあるが、事前に習得することでよりよい対応が可能となるはずである。納税者の権利を擁護し納税者から頼りにされる税理士が押さえておきたい事項として、次の3つに絞って報告することとする。

1.税務調査に関する法律的な知識
2.実地調査対応のポイント
3.実地調査後の交渉のポイント

1.税務調査に関する法律的な知識
(1)税務調査の種類
  課税処分のための税務調査
  滞納処分のための税務調査
  国税犯則取締法による調査
  不服審査のための調査
(2)税務調査における適正手続
(3)質問検査権の限界

2.実地調査対応のポイント
(1)税務調査の通知
調査通知を税理士が受けた際の確認事項としては次の4点があげられる。
  調査理由の確認
  調査範囲の確認
  調査官の人数と氏名の確認
  調査日数の確認
(2)調査日程の交渉
日程を最小限にすることは納税者の負担を減らし、調査も効率よく行われることになる。
(3)実地調査に対する事前準備
  帳簿書類、原始資料の確認
総勘定元帳、請求書、領収書などの原始資料を準備して確認をしておくことが望ましい。
  顧問先との事前打ち合わせ
税務調査に関係する人を集めて事前に打ち合わせをしておくことが望ましい。税務調査10か条の読み合わせをして解説をしておく。
  調査を受ける場所を決めておく

(4)実地調査当日
  調査開始前の打ち合わせ
30分くらい前に顧問先に行くようにして、社長や経理担当者と最終打ち合わせをする。1日の実地調査のスケジュールを確認し、社長、経理担当者へは細い点を再確認する。
  調査開始が肝心
身分証明書は必ず提示してもらい手にとって見る。証明年月日を確認し、生年月日はメモを取る。調査理由を再度確認し、調査日数の確認、調査範囲の確認を行う。調査終了の時間も確認し、社長が中座する場合には戻る時間も打ち合わせしておく。
  調査立会い時の税理士の心得
納税者の権利を擁護する立場で、納税者に代わり主張することが役割と心得る。
  コピーの提出は基本的に断る
コピーの提出は質問検査権の権限を越えるものであり、応じる必要はないので毅然とした対応が必要である。
  権力的な調査官への言動
調査官によっては、「金庫の中をみたい」「個人の通帳をみたい」などの要求をしてくる場合がある。このような言動に対しては即座に抗議をしなければならない。
  実地調査の終了の際には必ず調査官から会社の記帳状況、資料の整理状況についてコメントをもらうようにする。ここで、問題点を絞り込むことが非常に重要である。

3.実地調査後の交渉のポイント
(1)文書での回答が鉄則
調査官と調査終了時に問題点の確認を行って後日回答するときは、文書で必ず回答する。その際、実地調査した調査官以外の人が読んでわかるようにすることがポイントである。
(2)争点主義を貫く
言葉を変えれば、妥協や総合勘案はしないということである。
(3)納税者の納得と理解が最優先
税務調査は顧問先との関係が強まる絶好の機会である。
(4)調査官を味方につける
(5)是認だけがすべてではないが、行政指導の側面もある
(6)税務調査は顧問先との信頼を強める絶好のチャンス
以上

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