論文


特集第41回大阪全国研究集会・分科会テキスト(2005.7.8合併号)
会計参与制度を検証する 実録「今津事件」
滞納処分 NPO法人の税務・会計
所得税法第56条を斬る 民法と税法の接点
10年後の税理士業務 岐路に立つ社会福祉法人経営


特集第41回大阪全国研究集会・分科会テキスト
会計参与制度を検証する
−税理士が会計専門家として生きていくために−
東京税経新人会

5. 会計参与が拠るべき会計規範

(1)会社法の計算規定
会計規範には「会計法規」「会計原則」「会計基準」「会計指針」等があるが、これらは制定された経緯により、その適用範囲の相違や強制力の程度の差があるものの、いずれも会計実務に対する規範性を有しているものである。

この内、「会計法規」の一つとして位置づけられ、強行法規としての強制力を有しているのが、以下に示す会社法における「株式会社の計算等」の規定である。

さらに、「計算書類等」の作成基準として、会社法の委任を受けて法務省令に詳細な規定を置くことになっている。この法務省令は、本稿執筆時点では明らかにされていないが、現行「商法施行規則」の規定を概ね継承することになると思われる。
会社法
第431条(会計の原則)
株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
第432条(会計帳簿の作成及び保存)
株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
2株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
第433条(会計帳簿の閲覧等の請求)
総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記 録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
請求者が、過去2年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
3株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について第1項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
4前項の親会社社員について第2項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。
第434条(会計帳簿の提出命令)
裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、会計帳簿の全部又は一部の提出を命ずることができる。
第435条(計算書類等の作成及び保存)
株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
2株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
3計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。
4株式会社は、計算書類を作成した時から10年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。
第436条(計算書類等の監査等)
監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第2項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。
2会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
前条第2項の計算書類及びその附属明細書監査役(委員会設置会社にあっては、監査委員会)及び会計監査人
前条第2項の事業報告及びその附属明細書監査役(委員会設置会社にあっては、監査委員会)
3取締役会設置会社においては、前条第2項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第1項又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第1項又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
第437条(計算書類等の株主への提供)
取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第3項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第1項又は第2項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
第438条(計算書類等の定時株主総会への提出等)
次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
第436条第1項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第436条第1項の監査を受けた計算書類及び事業報告
会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。)第436条第2項の監査を受けた計算書類及び事業報告
取締役会設置会社 第435条第3項の承認を受けた計算書類及び事業報告
前三号に掲げるもの以外の株式会社第435条第2項の計算書類及び事業報告
2前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。
3取締役は、第1項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない。
第440条(計算書類の公告)
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
2前項の規定にかかわらず、その公告方法が第939条第1項第1号又は第2号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
3前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第1項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。
4証券取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、前三項の規定は、適用しない。
第441条(臨時計算書類)
株式会社は、最終事業年度の直後の事業年度に属する一定の日(以下この項において「臨時決算日」という。)における当該株式会社の財産の状況を把握するため、法務省令で定めるところにより、次に掲げるもの(以下「臨時計算書類」という。)を作成することができる。
臨時決算日における貸借対照表
臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時 決算日までの期間に係る損益計算書
2第436条第1項に規定する監査役設置会社又は会計監査人設置会社においては、臨時計算書類は、法務省令で定めるところにより、監査役又は会計監査人(委員会設置会社にあっては、監査委員会及び会計監査人)の監査を受けなければならない。
3取締役会設置会社においては、臨時計算書類(前項の規定の適用がある場合にあっては、同項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
4次の各号に掲げる株式会社においては、当該各号に定める臨時計算書類は、株主総会の承認を受けなければならない。ただし、臨時計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合は、この限りでない。
第436条第1項に規定する監査役設置会社又 は会計監査人設置会社(いずれも取締役会設置会社を除く。)第2項の監査を受けた臨時計算書類
取締役会設置会社前項の承認を受けた臨時計算書類
前二号に掲げるもの以外の株式会社第1項の臨時計算書類
第442条(計算書類等の備置き及び閲覧等)
株式会社は、次の各号に掲げるもの(以下この条において「計算書類等」という。)を、当該各号に定める期間、その本店に備え置かなければならない。
各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第436条第1項又は第2項の規定の適用がある場合にあっては、監査 報告又は会計監査報告を含む。)定時株主総 会の日の1週間(取締役会設置会社にあっては、2週間)前の日(第319条第1項の場合にあっては、同項の提案があった日)から5年間
臨時計算書類(前条第2項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)臨時計算書類を作成した日から5年間
2株式会社は、次の各号に掲げる計算書類等の写しを、当該各号に定める期間、その支店に備え置かなければならない。ただし、計算書類等が電磁的記録で作成されている場合であって、支店における次項第3号及び第4号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
前項第1号に掲げる計算書類等定時株主総会の日の1週間(取締役会設置会社にあっては、2週間)前の日(第319条第1項の場合にあっ ては、同項の提案があった日)から3年間
前項第2号に掲げる計算書類等 同号の臨時 計算書類を作成した日から3年間
3株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第2号又は第4号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
計算書類等が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
計算書類等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
4株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該株式会社の計算書類等について前項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第2号又は第4号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
第443条(計算書類等の提出命令)
裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、計算書類及びその附属明細書の全部又は一部の提出を命ずることができる。
第444条(連結計算書類)
会計監査人設置会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る連結計算書類(当該会計監査人設置会社及びその子会社から成る企業集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)を作成することができる。
2連結計算書類は、電磁的記録をもって作成することができる。
3事業年度の末日において大会社であって証券取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。
4連結計算書類は、法務省令で定めるところにより、監査役(委員会設置会社にあっては、監査委員会)及び会計監査人の監査を受けなければならない。
5会計監査人設置会社が取締役会設置会社である場合には、前項の監査を受けた連結計算書類は、取締役会の承認を受けなければならない。
6会計監査人設置会社が取締役会設置会社である場合には、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前項の承認を受けた連結計算書類を提供しなければならない。
7次の各号に掲げる会計監査人設置会社においては、取締役は、当該各号に定める連結計算書類を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。この場合においては、当該各号に定める連結計算書類の内容及び第4項の監査の結果を定時株主総会に報告しなければならない。
取締役会設置会社である会計監査人設置会社第5項の承認を受けた連結計算書類
前号に掲げるもの以外の会計監査人設置会社第4項の監査を受けた連結計算書類

商法施行規則
第4章財産の評価
第27条(財産の評価)
株式会社及び有限会社の会計帳簿に記載すべき財産に付すべき価額については、この章の定めるところによる。
第28条(流動資産の評価)
流動資産については、その取得価額又は製作価額を付さなければならない。ただし、時価が取得価額又は製作価額より著しく低いときは、その価格が取得価額又は製作価額まで回復すると認められる場合を除き、時価を付さなければならない。
2前項の規定は、時価が取得価額又は製作価額より低いときは時価を付するものとすることを妨げない。
第29条(固定資産の評価)
固定資産については、その取得価額又は製作価額を付し、毎決算期において相当の償却をしなければならない。ただし、予測することができない減損が生じたときは、相当の減額をしなければならない。
第30条(金銭債権の評価)
金銭債権については、その債権金額を付さなければならない。ただし、債権金額より高い代金で買い入れたときは相当の増額を、債権金額より低い代金で買い入れたときその他相当の理由があるときは相当の減額をすることができる。
2前項の場合において、金銭債権につき取立不能のおそれがあるときは、取り立てることができない見込額を控除しなければならない。
3市場価格のある金銭債権については、第1項の規定にかかわらず、時価を付するものとすることができる。
第31条(社債その他の債券の評価)
社債については、その取得価額を付さなければならない。ただし、その取得価額が社債の金額と異なるときは、相当の増額又は減額をすることができる。
2第28条第1項ただし書及び第2項並びに前条第3項の規定は市場価格のある社債について、同条第2項の規定は市場価格のない社債について、それぞれ準用する。
3前2項の規定は、国債、地方債その他の債券について準用する。
第32条(株式その他の出資の評価)
株式については、その取得価額を付さなければならない。
2第28条第1項ただし書の規定は市場価格のある株式について、同条第2項及び第30条第3項の規定は市場価格のある株式であって子会社の株式以外のものについて、それぞれ準用する。
3市場価格のない株式については、その発行会社の資産状態が著しく悪化したときは、相当の減額をしなければならない。
4第1項及び前項の規定は、有限会社の社員の持分その他出資による持分について準用する。
第33条(のれんの評価)
のれんは、有償で譲り受け又は吸収分割若しくは合併により取得した場合に限り、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合においては、その取得価額を付し、その取得の後5年以内に、毎決算期において均等額以上の償却をしなければならない。

第5章貸借対照表等の記載方法等
第1節総則
第34条(貸借対照表等の記載事項等)
貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に記載すべき事項及びその記載の方法並びに商法第283条第4項又は商法特例法第16条第2項 (商法特例法第21条の31第3項において準用する場合を含む。)の規定により公告すべき貸借対照表及び損益計算書並びにこれらの要旨の記載方法は、この章の定めるところによる。
第2節貸借対照表の記載事項
第35条(創立費)
次の各号に掲げる会社を設立した場合における当該各号に定める額は、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合においては、会社の成立の後(当該会社が商法第291条第1項の規定により開業前に利息を配当することを定めたときは、その配当をやめた後)5年以内に、毎決算期において均等額以上の償却をしなければならない。
株式会社 商法第168条第1項第7号及び第 8号の規定により支出した金額、同号ただし書の手数料及び報酬として支出した金額並びに設立登記のために支出した税額
有限会社 有限会社法第7条第4号 の規定により支出した金額、同号ただし書の手数料及び報酬として支出した金額並びに設立登記のために支出した税額
第36条(開業費)
開業準備のために支出した金額は、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合においては、開業の後5年以内に、毎決算期において均等額以上の償却をしなければならない。
第37条(研究費及び開発費)
次に掲げる目的のために特別に支出した金額は、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合においては、その支出の後5年以内に、毎決算期において均等額以上の償却をしなければならない。
新製品又は新技術の研究
新技術又は新経営組織の採用
資源の開発
市場の開拓
第38条(新株発行費等)
新株を発行したときは、その発行のために必要な費用の額は、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合においては、その発行の後3年以内に、毎決算期において均等額以上の償却をしなければならない。
2前項の規定は、新株予約権を発行した場合について準用する。
第39条(社債発行費)
社債を発行したときは、その発行のために必要な費用の額は、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合においては、その発行の後3年以内(3年以内に社債償還の期限が到来するときは、その期限内)に、毎決算期において均等額以上の償却をしなければならない。
第40条(社債発行差金)
社債権者に償還すべき金額の総額が社債の募集によって得た実額を超えるときは、その差額は、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合においては、社債償還の期限内に、毎決算期において均等額以上の償却をしなければならない。
第41条(建設利息)
商法第291条第1項 の規定により配当した金額は、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合においては、1年につき資本の総額の100分の6を超える利益を配当するごとに、その超過額と同額以上の金額を償却しなければならない。
第42条(適用除外)
第38条から前条までの規定は、有限会社には、適用しない。
第43条(引当金)
特定の支出又は損失に備えるための引当金は、その営業年度の費用又は損失とすることを相当とする額に限り、貸借対照表の負債の部に計上することができる。

(2)中小企業の会計に関する指針
現行商法は「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」(商法32条)と規定しているが、中小企業における「公正なる会計慣行」とは何であるかは、従来より必ずしも明確にはされていなかった。

そのような状況にあって、平成14年6月に中小企業庁が「中小企業の会計に関する研究会報告書」を公表したことを契機として、大企業中心の国際会計基準等に準拠した一連の会計基準とは別の、中小企業向けの会計基準の必要性が強調されるようになった。

その後、日税連の「中小会社会計基準」(平成14年14月)及び日本公認会計士協会の「中小会社の会計のあり方に関する研究報告」(平成15年6月)が公表されている。

公認会計士協会が、基本的には会計基準は会社の規模に関係なく一つであるべきとしている一方で、日税連は、中小会社の事務負担に配慮し、会計基準として合理性が認められるのであれば法人税法上の計算規定も採用することとしているなど、基本的な考え方に隔たりがあった。

平成17年3月、中小企業庁において設置された「『中小企業の会計』の統合に向けた検討委員会」(日本税理士会連合会・日本公認会計士協会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の4者により設置)が公表した「中小企業の会計に関する指針」は、これらの基準を統合したものである。

この指針は、株式会社が、会社法の規定に基づいて計算書類を作成するに当たり拠るべき会計処理や注記等を示すものであるが、とりわけ、会計参与が計算書類を作成するに当たって拠ることが適当な会計のあり方を示すものであるとされている。

この指針の基本的な考え方は、会社の規模に関係なく、取引の経済実態が同じなら会計処理も同じになるべきであるとしながらも、中小企業のための規範として活用するため、コストベネフィットの観点から、会計処理の簡便化や法人税法で規定する処理の適用も限定的に認めている。

今後は、会計参与設置会社を中心として、この指針に示された会計処理等に拠った計算書類の作成が行われ、さらに会計参与設置会社以外の会社にあってもこの指針が会計慣行として定着していくことが期待される。
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