論文


特集第41回大阪全国研究集会・分科会テキスト(2005.7.8合併号)
会計参与制度を検証する 実録「今津事件」
滞納処分 NPO法人の税務・会計
所得税法第56条を斬る 民法と税法の接点
10年後の税理士業務 岐路に立つ社会福祉法人経営


特集第41回大阪全国研究集会・分科会テキスト
会計参与制度を検証する
−税理士が会計専門家として生きていくために−
東京税経新人会

4. 会計参与に関する規定

会社法(以下、この項で「法」という)は、会計参与に関して以下の通りの規定を置いている。
株式会社の計算に関する規定及び会計参与に関する規定の運用については、法務省令に委任されている事項が多いため、法務省令の制定を待たなければ実務上の対応はできないが、ここでは本法規定の内容を整理しておきたい。
(1)会計参与の任意設置
1. 株式会社は、定款の定めによって、会計参与を置くことができる。(法326条)

(2)監査役の設置義務との関係
1. 取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。(法327条)

(3)会計参与の任期
1. 取締役の任期に関する規定は、会計参与の任期について準用する。(法334条
2. 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。(法332条
3. 前項の規定は、公開会社でない株式会社(委員会設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。(法332条)
4. 上記にかかわらず、会計参与設置会社が会計参与を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計参与の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。(法334条)

(4)会計参与の資格
1. 会計参与は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない。(法333条
2. 次に掲げる者は、会計参与となることができない。(法333条
(イ)株式会社又はその子会社の取締役、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人
(ロ)業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
(ハ)税理士法43条の規定(税理士業務の停止)により同法2条 に規定する税理士業務を行うことができない者
3. 会計参与に選任された監査法人又は税理士法人は、その社員の中から会計参与の職務を行うべき者を選定し、これを株式会社に通知しなければならない。この場合においては、2. の各号に掲げる者を選定することはできない。

(5)会計参与の選任についての意見の陳述
1.会計参与は、株主総会において、会計参与の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができる。(法345条)
2.会計参与を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができる。(法345条
3.取締役は、前項の者に対し、同項の株主総会を招集する旨及び株主総会の日時及び場所を通知しなければならない。(法345条

(6)会計参与の権限
1.会計参与は、取締役と共同して、会社法に規定する計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を作成する。この場合において、会計参与は、法務省令で定めるところにより、会計参与報告を作成しなければならない。(法374条
2.会計参与は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる。(法374条
(イ) 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面
(ロ) 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの
3.会計参与は、その職務を行うため必要があるときは、会計参与設置会社の子会社に対して会計に関する報告を求め、又は会計参与設置会社若しくはその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。(法374条
4.前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。(法374条
5.会計参与は、その職務を行うに当たっては、(4)の2.の(ロ)又は(ハ)に掲げる者を使用してはならない。(法374条

(7)会計参与の報告義務
1.会計参与は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを株主(監査役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければならない。(法375条

(8)取締役会への出席
1.取締役会設置会社の会計参与(会計参与が監査法人又は税理士法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員。)は、計算書類等(法436条)、臨時計算書類(法441条)又は連結計算書類(法444条)の承認をする取締役会に出席しなければならない。この場合において、会計参与は、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。(法376条
2.会計参与設置会社において、前項の取締役会を招集する者は、当該取締役会の日の1週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各会計参与に対してその通知を発しなければならない。(法376条
3.会計参与設置会社において、法368条 の規定により取締役会を招集の手続を経ることなく開催するときは、会計参与の全員の同意を得なければならない。(法376条

(9)株主総会における意見の陳述
1.(6)の1.に規定する書類の作成に関する事項について会計参与が取締役と意見を異にするときは、会計参与(会計参与が監査法人又は税理士法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員)は、株主総会において意見を述べることができる。(法377条
2.委員会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「取締役」とあるのは、「執行役」とする。(法377条)

(10)会計参与による計算書類等の備置き等
1. 会計参与は、次の各号に掲げるものを、当該各号に定める期間、法務省令で定めるところにより、当該会計参与が定めた場所に備え置かなければならない。(法378条
(イ) 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書並びに会計参与報告 定時株主総会の日の1週間(取締役会設置会社にあっては、2週間)前の日(株主総会の決議の省略(法319条)の場合にあっては、同項の提案があった日)から5年間
(ロ) 臨時計算書類及び会計参与報告 臨時計算書類を作成した日から5年間
2. 会計参与設置会社の株主及び債権者は、会計参与設置会社の営業時間内(会計参与が請求に応ずることが困難な場合として法務省令で定める場合を除く。)は、いつでも、会計参与に対し、次に掲げる請求をすることができる。ただし、(ロ)又は(ニ)に掲げる請求をするには、当該会計参与の定めた費用を支払わなければならない。(法378条
(イ) 前項各号に掲げるものが書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求
(ロ) 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
(ハ) 前項各号に掲げるものが電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
(ニ) 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって会計参与の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
3. 会計参与設置会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該会計参与設置会社の1.に掲げるものについて2.に掲げる請求をすることができる。ただし、2. の(ロ)又は(ニ)に掲げる請求をするには、当該会計参与の定めた費用を支払わなければならない。(法378条

(11)会計参与の報酬等
1.会計参与の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。(法379条
2.会計参与が二人以上ある場合において、各会計参与の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、会計参与の協議によって定める。(法379条
3.会計参与(会計参与が監査法人又は税理士法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員)は、株主総会において、会計参与の報酬等について意見を述べることができる。(法379条)

(12)費用等の請求
1.会計参与がその職務の執行について会計参与設置会社に対して次に掲げる請求をしたときは、当該会計参与設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該会計参与の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。(法380条)
(イ)費用の前払の請求
(ロ)支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求
(ハ)負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求

(13)会計参与の株式会社に対する損害賠償責任
1.会計参与は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(法423条)
2.(損害賠償責任の免除)
上記の責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。(法424条)
3.(責任の一部免除)
2.の規定にかかわらず、1.の責任は、当該会計参与が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償の責任を負う額から次に掲げる額の合計額(「最低責任限度額」という。)を控除して得た額を限度として、株主総会の決議によって免除することができる。(法425条
(イ) 当該会計参与がその在職中に株式会社から職務執行の対価として受け、又は受けるべき財産上の利益の1年間当たりの額に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額に、2を乗じて得た額
(ロ) 当該会計参与が当該株式会社の新株予約権を引き受けた場合(新株予約券の募集事項の決定(法238条?)各号に掲げる場合に限る。)における当該新株予約権に関する財産上の利益に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額
4.(免除に関する定款の定め)
2.の規定にかかわらず、監査役設置会社(取締役が二人以上ある場合に限る。)又は委員会設置会社は、1.の責任について、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該会計参与の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、3.の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨を定款で定めることができる。(法426条)
5.(責任限定契約)
2.の規定にかかわらず、株式会社は、会計参与の1.の責任について、当該会計参与が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を会計参与と締結することができる旨を定款で定めることができる。(法427条)

(14)会計参与の第三者に対する損害賠償責任
1.会計参与がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該会計参与は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。(法429条
2.会計参与が、計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。(法429条)

(15)会計参与の登記
1.株式会社が、会計参与設置会社であるときは、その旨並びに会計参与の氏名又は名称及び会計参与が定めた計算書類の備置場所(法378条)を登記しなければならない。(法911条

(16)会計参与の刑事責任等
1.(特別背任罪)
会計参与が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(法960条)
2.(会社財産を危うくする罪)
会計参与が現物出資財産の内容及び価額について、裁判所又は株主総会若しくは種類株主総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときは、5年以下の懲役若しくは5百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(法963条)
会計参与が、次のいずれかに該当する場合にも、同様とする。(法963条
(イ) 何人の名義をもってするかを問わず、株式会社の計算において不正にその株式を取得したとき。
(ロ) 法令又は定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき。
(ハ) 株式会社の目的の範囲外において、投機取引のために株式会社の財産を処分したとき。
3.(株主の権利の行使に関する利益供与の罪)
会計参与が、株主の権利の行使に関し、当該株式会社又はその子会社の計算において財産上の利益を供与したときは、3年以下の懲役又は3百万円以下の罰金に処する。(法970条)
4.(過料に処すべき行為)
会計参与は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。(法976条)
(イ) この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
(ロ) この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき。
(ハ) この法律の規定による開示をすることを怠ったとき。
(ニ) この法律の規定に違反して、正当な理由がないのに、書類若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧若しくは謄写又は書類の謄本若しくは抄本の交付、電磁的記録に記録された事項を電磁的方法により提供すること若しくはその事項を記載した書面の交付を拒んだとき。
(ホ) この法律の規定による調査を妨げたとき。
(ヘ) 官庁、株主総会若しくは種類株主総会、創立総会若しくは種類創立総会、社債権者集会又は債権者集会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたとき。

次ページへ
▲上に戻る