2013年11月23日に開催された秋のシンポジウム「マイナンバー制度が税理士業務や税制・税務行政に与える影響」に参加しました。まず、最初に辻村先生が番号制の実務編ということで実際仕事にどういう影響があるのかを報告されました。マイナンバーの発行については行政側から各個人に通知があり、その後、その通知をもってカードの発行申請をするようであり、住民登録と居所の違う人には厄介なことになりそうです。また、カードには顔写真と「基本4条項」(生年月日・性別・氏名・住所)が記載されるようです。そのナンバーについてはマイポータルという国のインターネットサイトにアクセスすれば、自分の情報が見られるといったものになるようですがその詳細はまだ不明とのことです。
続いて、マイナンバーの税務分野についての活用については、勤務会社・医療機関・金融機関等が法定調書・源泉徴収・年末調整などを通じて税務当局に情報を申告し、税務当局はその情報と確定申告をマイナンバーでマッチングしてその適否を確認するということです。それから考えると、法定調書の提出、年末調整などの業務を扱う私たち税理士は多くのマイナンバーと関わることになり、その管理には特別な注意が必要です。また、当初は行政機関にその利用は制限されているが、それは3年間だけでその後は見直しが可能であり、それも政令で定めることになるようです。
次に、阿部先生が共通番号と税制ということで、マイナンバーが導入されれば税制のどのような影響があるかを報告されました。まず、最初に法人についてで、法人の番号については個人の番号と違って民間での活用が認められており、そのことによって関係先との取引が番号を使ってのものとなってくるのではないでしょうか。そのことを前提に考えると、大きな影響を受けると思われるのは消費税制であり、近隣でもう導入済みである韓国を参考に考えると、その影響は消費税のインボイス方式へ切り替えが現実味を帯びてくるとのことです。それが実現すれば、免税点制度・簡易課税制度などの廃止につながり、また、預り金の性格が強くなることから徴収業務が強化されるようになるのではないかということです。
質疑応答の時間では、イギリスでは一度共通番号制の利用について可決されたが、その後廃止にされていることについて、アメリカのなりすまし問題、韓国の個人情報漏えい問題などの活発な意見がたくさんあり大変勉強になりました。
この報告を受けて感じたことは、最初に共通番号制を導入する理由として挙げられていた消費税増税による逆進性の緩和、医療や福祉など国民に対するメリットがなくなり、行政側の都合のいいところばかりが残っているということを知らず、以前の印象のまま社会保障や福祉に利用されるなら仕方がないと国民は思っているのではないか、また、国の制度は行政の事務の効率化や都合だけで作られるものではなく、国民ためのものでなければならない。次に、個人情報の漏えいの問題である。これだけの情報を一極集中させてしまうと、一つ漏ればすべて漏れるという結果になり、今の時代に絶対安全ということはないと考えるのがよいのではないだろうか。実際、韓国では5,000万人のうち3,500万人の個人情報が漏えいし、今、裁判中であるようである。このような問題を残したままだけではなく、国民に正しい情報を伝えないまま走りだそうとしているこの制度は不安ばかりである。 |