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国側の主張 |
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相続税は申告納税方式を採用し納付すべき税額は税務署長において更正または決定する場合を除き、納税者の申告より確定し、納税者は税額を納付すべき義務を負う。 |
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原告は共同相続人の立場で申告書を提出し、適法に税額を確定した。 |
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相続税法32条は、相続税の申告後に同条の所定の事由が発生した場合に更正の請求を認めており、特に同条2号は申告後に相続人に異動を生じた場合についても更正の請求によるべきことを定めている。 |
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相続税法は,相続人の変更等による相続税額の是正は同条の手続きを経て行うことのみを予定し、それ以外の方法による救済は予定していない。
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国税通則法23条の規定 |
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相続税の納税申告書を提出した者は、その申告に係る税額が国税に関する法律の規定に従っていなかったことにより、納付すべき税額が過大であるとき等においては法定申告期限から1年以内に限り、更正の請求をすることができる。 |
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法定申告期限から1年以上経過後であっても、判決の確定などの一定の理由によっては、その事由が生じた日の翌日から起算して2か月以内に、税務署長に対して更正の請求をすることが出来る。
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相続税法の規定 |
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(i) |
未分割遺産につき分割が行われ、共同相続人または包括受遺者が当該分割により取得した財産にかかる課税価格が、当初申告について計算された課税価格と異なる事となったこと。 |
(ii) |
民法の規定による認知、相続人の廃除またはその取消しに関する裁判の確定、相続の回復、相続の放棄の取消しその他の事由により相続人の異動を生じたこと。 |
(iii) |
遺留分による減殺請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと。 |
(iv) |
遺贈に係る遺言書が発見され、または遺贈の放棄があったこと。 |
(v) |
前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。 |
(vi) |
相続人不存在の場合において、家庭裁判所が特別縁故者に対して相続財産を分与したこと。 |
(vii) |
申告期限から3年以内に遺産分割があった場合において、その分割に基づいて配偶者の税額軽減の規定を適用して計算した相続税額が、そのとき前において当該規定を適用して計算した相続税額と異なる事となったこと。 |
(viii) |
贈与税の課税価格計算の基礎に算入した財産のうちに、相続開始の年において被相続人から贈与を受けた財産でその価額を贈与税の課税価格に算入しないとされるものがあったこと。
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裁判所の判断 |
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不当利得の法理は一般法理であるから、特別法(この場合における相続税法)において、当該不当利得の原因たる事実について何らかの救済措置が規定されているときは、当該不当利得の是正は原則として当該救済措置によるべきであって、これについて民法上の不当利得返還請求権を行使できるのは、当該救済措置によることができなかった特段の事情がある場合に限られるというべきである、という見解を示している。
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結論 |
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これら2つの事例から、他に救済措置があるにもかかわらず、自らの落度によりその期間を過ぎてしまった場合には、それによって生じた損失を回復するために他の利得者に不当利得の返還を請求することは認められないというのが、現行での実務上の取扱いである。 |
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(3)相続税申告後の遺産分割のやり直し |
(a) |
遺産分割
相続開始と同時に、遺産の全体が共同相続人たちの「共有」になっているのを、これを解消して、遺産に属する個々の財産ごとに、共同相続人それぞれの単独所有とすることが、遺産分割である。遺産分割には次の4つの方法がある。
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(i) |
被相続人の遺言による遺産分割
この方法は、被相続人が遺言で遺産に属する個々の財産とそれを取得する相続人の名前を具体的に指示して遺産分割の方法をあらかじめ定めておくか、あるいは遺産分割の方法を相続人以外の第三者に依頼しておく方法である。
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(ii) |
協議による分割
相続がはじまってのちならば共同相続人は、何時でも(被相続人の分割禁止の遺言がない限り)、そのうちの一人だけからでも、他の共同相続人に対して、共同相続人全員の協議で、遺産分割をするように請求することができるというものである。したがって、協議分割は、共同相続人の全員の協議、合意で行うのであるから、共同相続人のうち一人でも欠けているものがあれば協議は無効になるものと解されている。
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(iii) |
調停による分割
遺産分割について、共同相続人間で協議が調わないとき、または、協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を「家庭裁判所に請求することができる」と規定している。具体的な方法は、遺産分割の調停、または審判の申立てとなる。そしてさらに、調停を行うことが可能である限り、まず調停の申立てをなし、調停が不成立の場合に、審判の申立てとなる。
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(iv) |
審判による分割
共同相続人間の話し合いや、調停が成立しない場合の遺産分割は、審判によってなされるというものである。調停は、調停委員会の斡旋によって成立する当事者間の合意による解決であるのに対し、審判は当事者の意思いかんに拘わらず裁判によって遺産分割の効果を発生させるものである。また、2週間以内に即時抗告がされれば効力を失う(家審法13条、15条、家審規111条)。 |
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(b) |
遺産分割のやり直し
一度相続人間で確定した遺産分割についてやり直すことは可能なのか
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(i) |
可能とする判例
「共同相続人は既に成立している遺産分割協議につき、その全部または一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる」
当事者間の意思表示の合致があることすなわち、合意があることによって契約は成立すると考えている。個人の意思を尊重しようとする民法の基本的な考え方においては、契約は2人以上の当事者が法律関係を自由に決める事の出来る重要な手段なのであって、そこにはいわゆる「契約自由の原則」が支配する。解除という制度は、契約の一方当事者が一方的な意思表示によって契約を当初からないものとすることである。
遺産分割のやり直しは解除であり、これは「合意解除」という方法である。この方法はその場において当事者間で話し合いを持つことにより契約をなくする方法である。したがって、この判例では、一度確定した遺産分割であっても、共同相続人全員の合意により、他の分割方法を改めて協議しようとする行為については,法律はこれを妨げるものではないと解されている。
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(ii) |
不可能とする判例
「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が右協議において負担した債務を履行しないときであっても、その債権を有する相続人は、民法541条によって右協議を解除することができない」
分割後において一部の者の債務不履行を理由とする遺産分割のやり直しが可能か。これについての裁判所の判断は、複数の者の合意によって成立した遺産分割協議を、一部の者の債務不履行を理由に覆すのは法的安全性を害するという理由により認めていない。
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(iii) |
税法上の取扱い
相続人は遺産分割協議書に基づき土地の所有権移転登記を行ったが、その後、相続税の申告書を提出する際に、税務職員から遺産分割内容についての問題点を指摘され、それによって遺産分割内容を変更する第2回目の遺産分割協議を行った事例
判決
「第1回目の遺産分割協議のうち本件土地に関する部分を相続人全員の合意によって解除し改めてこれを第2回遺産分割協議のとおり分割協議をしたものであって、これは第2回遺産分割協議による本件相続土地の共有持分の取得は地方税法73条の7第1号所定の非課税事由である『相続に因る不動産取得』に該当する」として、遺産分割のやり直しを認めている。
考察
この判決だけをみると、税法においても遺産分割協議確定後の合意解除は認められているかのように思われるが、これは、不動産取得税についての判断であって、税法が遺産のやり直しを認めているとはとらえることはできない。
国税通則法23条2項を受けた同法施行令6条は、「税額等の計算の基礎となった事実に係る契約が、解除権の行使によって解除され、若しくは当該契約の成立後に生じたやむを得ない事情によって解除され、又は取消しされたこと」(同条1項2号)と定めている。11)相続人間の協議のやり直しが「やむを得ない事情」に該当するかどうかの判断は、実務上ではかなり難しい。詐欺、重大な錯誤等が該当すると考えられ、本人の意思のない状態のみだけ「やむを得ない事情」を想定しているとの見方もある。
したがって、多くは「やむを得ない事情」なき場合に該当するとの判断がされ、その場合には、遺産分割のやり直しにより持分の変更部分については贈与があったとみなされてしまうのが現状である。 |