神戸税経新人会が創立50周年を記念して作成した税経新報のDVDに、創刊号が収録されています。創刊号は昭和33年(1958年)8月12日に、縦書き8ページで発行されました。したがって、私が11歳の頃です。それから50有余年の長きに渡り、歴代の機関誌部長並びに部員のみなさんのたゆまぬ努力で発行が継続されてきました。衷心より敬意を表したいと思います。
理事長に就任して間もなく、編集会議に参加させていただきました。原稿集めの苦労、質の高い誌面をめざしての苦闘、地味で根気のいる校正作業、編集感覚を研ぎ澄ますための学習など、誌面づくりの大変さを目の当たりにして頭の下がる思いでした。こんな努力があってこそ、税経新報が途絶えることなく発行されているのです。
1.税経新報の「初心」
創刊号の「創刊にあたって」の記事に、発行の目的や意義が記されています。税経新報の「初心」です。少し長くなりますが引用したいと思います。
「税経新人会が昨年6月に結成せられてから約1年を経過しました。その間月例研究会の集まりを中心に会員数も毎月増加してきました。会名にふさわしく若き新人の集まりとして今日の成長をみるにいたったことは共に心からの喜びを感じます。さる6月18日第1回定時総会で新年度事業の一つとして会報の発刊が承認せられ、新任幹事会は「税経新報」という名称の下にその創刊を実現するにいたりました。この名称が選ばれるについては次のような理由がありました。一つには会名に最もふさわしいこと、二つには新思想につらぬかれること、三つには歴史を継承してゆくことであります。歴史の継承というのは1951年9月民主経理団によって創刊せられた月刊誌のことであります。
(中略)そして国民大衆の権利をヨーゴする立場ということの本質的な意味は何かを明らかにし、現実の問題にこれを実践し実証してゆかなければなりません。そのためには、税経の諸問題を単に研究と実務の枠にとじ込めてしまわないで、自民党政治権力による徴税政策と国民大衆の諸要求との矛盾として明らかにし、税と企業会計と国民大衆の諸権利は現在どう対決させられているのか、またそれと対決して国民大衆はどう闘ってゆかなければならないか、この対決点を明確にしてゆくことが重要になってきます。ここらあたりに本会報発刊の真の意義があることを認め合って今後関係各位会員諸志の熱意ある協力援助をお願いします。」
この税経新報の「初心」は、50有余年を経て600号を達成した現在、税経新人会が置かれている状況や税経新報に求められている役割に、「全くその通り」と先人達の見通しの確かさを実感します。
2.税経新人会の今日的課題と税経新報
現在、私たち税経新人会が憲法にもとづく国民の権利を擁護する立場から、特に関心を向けなければならない諸問題が起こっています。福島原発事故の深刻な放射能汚染に端を発した原発再稼働問題、国民経済を破滅に追い込むTPP 参加問題、平和国家・福祉国家をめざす憲法を覆す動き、そして税制、税務行政、税理士制度を巡っては、貧困と格差を助長している不公平税制・消費税の大増税問題、税務当局の権限強化と納税者の義務強化を内容とする改悪国税通則法への対応問題、税理士の税務当局への一層の下請化を図ろうとする税理士法の見直し問題などです。
現在、私たちはこれらの諸問題に対して、民主党政権と闘っています。すなわち、創刊号の「初心」で謳われている「国民大衆の権利をヨーゴする立場」で、「税経の諸問題を単に研究と実務の枠にとじ込めてしまわない」で、「政治権力による徴税政策と国民大衆の諸要求との矛盾」を明らかにし、「税と企業会計と国民大衆の諸権利は現在どう対決させられているのか」、「それと対決して国民大衆はどう闘ってゆかなければならないか」、「この対決点を明確にしてゆくことが重要」との認識に基づき、私たちは直面している諸問題に対峙しています。
これらの諸問題の対決点を明確にするために、税経新報に多くの諸論文を掲載し、政府や関係諸団体等に提出する税経新人会の意見書を税経新報に発表し、私たちの意見を実現するために国会への請願署名などの取り組みを全国の会員に税経新報で発信しています。そして、税経新人会が他団体と協力共同して運動を取り組む上でも、税経新報が大きな役割を果たしています。
先般、日比谷野外音楽堂で開催された「消費税大増税ストップ! 4・12国民集会」には、税経新人会も実行委員会に参加し、全国から5,000人を超える参加者で大成功を収めました。税経新人会はこの集会の開会宣言に抜擢されました。このことは、税経新報を通じて私たちの意見・活動が世に知らされ、税経新人会の存在意義を広めてくれている証でしょう。
3.税経新人会の質的・量的発展と税経新報
税経新報創刊時は、「会員数も毎月増加」していたようです。そして50有余年後、全国に18の地域会と1000人を超える会員数を擁するまでに発展してきました。「税経新人会と言えば税経新報」「税経新報と言えば税経新人会」と言われるほど、税経新報が大きな役割を果たしています。
しかしここ数年、会員は「毎月増加」する 状況ではありません。高齢化に伴う廃業や死亡で会員が減少し、勤務税理士の増加や厳しい経済情勢などで入会者が停滞し、会員数は一進一退を繰り返しています。一方、税経新人会を取り巻く情勢は、税経新人会のさらなる質的・量的発展を求めています。このギャップを如何にして埋めていくのか、私たちに課せられた大きな課題です。
私たちの先人達が時代の要請に応えて、税経新人会を創立し税経新報を創刊しました。税経新報の「初心」を受け継ぎ、次の時代により大きな財産を残せるように、税経新人会の質的・量的発展を実現しなければなりません。税経新報はそのための要です。税経新報の「初心」を胸に刻み、税経新報の魅力向上に全会員で取り組もうではありませんか。
税経新報600号を迎えて、全国の会員のみなさんに次の7つのことを訴えます。
- 税経新報を読みましょう
- 税経新報に投稿しましょう
- 税経新報を通じて大いに議論をしましょう
- 税経新報で私たちの主張を世に広めましょう
- 税経新報の読者を拡大しましょう
- 税経新報で会員を拡大しましょう
- 税経新報で税経新人会を大きくしましょう
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