論文
【特集 秋のシンポジウム報告】
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> 秋のシンポジウム「新国税通則法と税務調査への対応」に参加して

秋のシンポジウム「新国税通則法と税務調査への対応」に参加して
編集部 清野 智江
来年1月から施行される新国税通則法により税務調査にどのような変化があるのか、その変化にどのように対応すれば良いのかとの問いに明確な回答が得られたシンポジウムでした。

鶴見祐策弁護士は、税務調査時に調査官からコピーをくださいと言われた場合には、質問検査権には「謄写」(デジカメの撮影も同様)を求める権限を認めた規定はないのだから、きちんと説明して断われると話されました。それは国税不服審判所においても閲覧権は認めているが、謄写できるとの規定がないためコピーの取得が出来ないので時間をかけて書き写しをしていると話され、そのことと質問検査権の規定は同様の見解だと聞き、コピーは法的根拠がない調査官のお願いだったのだと理解しました。

また「提示」は披見可能な状態におくことであり、「提出」は更に占有を移転すること、「留置」は税務職員が継続的に占有を行うこと。「留置」は「提示」「提出」と異なり、罰則規定がないので完全に納税者の任意だということも話されました。

永沢晃税理士は、情報公開法で取得した資料を見ると税務職員は調査の各段階で克明な「チェックシート」や「各種文書」の作成をする必要があることが分かると話します。「調査手続チェックシート」では「再調査の適否検討表」や「無予告の適否検討表」が別にあることが判り、その決済日の記入欄があります。「争点整理表」には関係法令、調査担当者の事実認定及びその根拠事実等と納税者側の主張及びその根拠事実等を記入し、「事実関係時系列表」には年月日と事実関係及びその事実を示す証拠を記入します。この表には納税者等の主張の変遷状況を検討する場合にも活用できますと欄外に書かれています。これらの表は、税理士側でも作成し整理する必要があり参考にしようと思います。調査着手から終了まで「事前通知」「無予告調査への対応」「帳簿書類の提出・留置き」「調査の争点整理」「調査結果の説明」「修正をするか更正処分かの判断」など税理士として対応すべきことが多くなりその都度適切な対応をしていかなければならないと思います。

鶴見弁護士がドイツの法学者イエーリングが著作「権利のための闘争」で「世界のあらゆる権利は戦いとられたものである」「権利の生命は闘争である」と説いているとし、常に「権利」を主張して闘い続けることが必要だと話されました。

納税者の権利憲章は実現できず新国税通則法だけが残りましたが、私たち税理士が研究して納税者の権利をきちんと守っていかなければいけないと強く思いました。

(せいの・ともえ:東京会)

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