論文
【特集 秋のシンポジウム報告】
> 2012年秋のシンポジウム(東ブロック)に参加して
> 2012年秋のシンポジウム参加の感想
> 憲法の31〜40条がなぜあるのか
> 秋のシンポジウム「新国税通則法と税務調査への対応」に参加して

2012年秋のシンポジウム(東ブロック)に参加して
沖縄会 大城 謙
私自身これまでの任意の税務調査における帳簿書類等の「預かり」は納税者の了解がなければ為し得ないものと確信しており、調査立会においても帳簿書類等の持ち帰りは丁重にお断りしていた。
今回の改正により法令上明確化された「留置き」は強制力があるのか。拒否した場合には罰則規定があるのか。取扱いはどうなるのだろうかとの疑問を抱えていたままでした。
今回のシンポジウムは、これらの疑問を払拭したいと考えていたことから是非とも参加したいとの思いでした。

シンポジニストの鶴見弁護士のお話は、納税者の権利を守るためにも改正国税通則法を憲法的観点から再構築して考えていく必要があることを説明され、納税者権利憲章が生成された歴史的な経緯や日本における納税者の権利をめぐる裁判上の具体的な判例が紹介されました。改正通則法にとどまらず、憲法を基本に法令を解釈していくことの重要性を改めて感じました。

質問検査権については、「改正法においても税務調査が任意調査に変わりがなく相手方の意思に反する調査は違法である」とのお話には調査立会の際の基本姿勢として持ち続けて対応していく必要があると思いました。

法72条の2の「調査について必要があるとき」については、最高裁判例を紹介しながら「客観的な必要性があると判断される場合」に調査を行うことができるとの解説には、従来、事前通知の際にうやむやな形で示される「調査理由」に対しては、判例を根拠に具体的な調査理由の開示を要求することができるとの確信を持つことができました。

改正法においては、当該職員による帳簿書類等の「提示」「提出」を要求することが新たに挿入され、これに応じない場合は罰則が強化されていることが説明されましたが、私自身、旧法の質問検査権の延長線上のものとしか考えていなかったため、参加者のなかから「提示」「提出」の解釈をめぐって多くの質問や様々な考え方が出され、議論がなされたことについては自分自身の勉強不足を痛感させられました。

そして、同様に明文化された「留置き」については任意提出に基づき適用されるのであるから任意調査における「留置き」は強制はできない。「留置き」の要求に対する拒否についても罰則規定は明文化されていないとの説明については、今後とも帳簿書類等の持ち帰りについては丁重にお断りする自信が持てました。

帳簿書類等のコピー要求の対処方法についても質疑応答がされましたが、私自身は調査時間を短縮させるための理由以外は基本的にコピーには応じないこととしています。

コピーを断ることに対して、その後に顧問先等への嫌がらせなどが生じてこないか少々不安な部分もありますが、鶴見先生の「調査官の質問検査権のなかには帳簿等の謄写権は含まれていない。当局も納税者が申告書を閲覧する際のコピー要求には応じない」との説明には、今後とも法令上の説明を丁寧に行って断り続けていきたいと思いました。

当日配布されたレジメのなかには、当局が調査を実施するにあたって、その手続・方法を記載する「調査手続チェックシート」が添付されていますが、調査の手法が克明に記載されたものとなっており、今後の調査立会の際には、常時携行してチェックシートどおりの調査が行われているかどうかを監視していきたいと思いました。

今回のシンポジウムは日帰りという強行日程での参加でしたが、それでも余りある有意義な内容であったと思います。今後の調査立会いにおいて一層自信を持って臨むことができると確信を持ちました。

(おおしろ・けん)

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