論文

(2004.9月号)
常陸野(ひたちの)霞ヶ浦のほとりで
特別決議憲法に基づく国民の諸権利を擁護しよう
要綱案第二次案に見る新会社法制のルール


「要綱案第二次案に見る新会社法制のルール」
神戸会国岡
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(10)会計参与制度(会社の機関)の新設について

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参与は、税理士(税理士法人含む)、公認会計士(監査法人含む)の資格を持つ者。

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会社又は子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人、支配人その他の使用人との兼任を禁止しています。期間制限、禁止の範囲などの具体案は未定です。

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定款で機関設置を決めて、株主総会で選任し、登記事項となります。任期・報酬等は取締役並みの規律に従います。

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取締役と共同して計算書類等を作成します。株主総会で説明します。計算書類等を事務所で保管して、株主等に開示します。

4
計算書類等とは、B/S、P/L、営業報告書、株主持分変動計算書(新設)、附属明細書を指します。

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会計参与の責任は、会社に対してと第三者に対しての2つがあります。会社に対する責任は、株主代表訴訟の対象になります。

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会社法部会の審議で明確になっていることは、会計参与は非常勤・単独の役員として登記されること、監査を行わない(監査役の代わりの機関ではない)こと、附属明細書も計算書類の範囲に入ること、監査役の調査に似通った計算書類作成目的の財産調査権が与えられることです。子会社調査権は、今後の検討事項です。
いずれも枠組みだけなので、制度の詳細は今後煮詰められます。
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(11)会計監査人

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商法特例法の大会社、中会社、小会社の現行基準は、今回は変更ありません。

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会計監査人の任意設置の範囲は、小会社にも及びます。中会社に認められていた「みなし大会社」制度は、廃止されます。

3
大規模有限会社、連結子会社の大会社にも、会計監査人が強制されます。

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対会社責任は、株主代表訴訟の対象になります。責任は、社外取締役と同様の一部免除制度が導入されます。

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会計監査人も登記事項になります。
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(12)剰余金の分配

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「剰余金の分配」概念として統一
株主に対する金銭等の分配(利益の配当、中間配当、資本及び準備金の減少に伴う払戻し、自己株式の有償取得(有償償却を含む)を剰余金の分配として財源規制の範囲になります。
株主総会の決議で、いつでも剰余金の分配が決定できます。

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資本金額に関わらず、純資産額が300万円未満の場合には、剰余金の分配ができません。

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分配可能額は、最終のB/S上の留保利益等から自己株式の価額、当期分配した金銭等の額を控除し、最終決算期後、分配実施時までの分配可能額の増減(期間損益変動除く)を反映させます。

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定時総会決議にもとづく株主に対する金銭等の分配について、期末のてん補責任はありません。

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分配可能額を超えて剰余金を分配した取締役は、連帯して弁済責任を負います。分配議案の株主総会への提出に同意した取締役及び取締役会の決議に賛成した取締役も同様に連帯債務者になります。この弁済責任は、一部免除の対象外です。

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株主に対して、金銭等以外の財産で配当する(現物配当)場合には、株主総会の特別決議が必要です。
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(13)資本の部の計数

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資本金を減少するには、株主総会の特別決議が必要です。ただし、欠損金に充当して剰余金が生じない、減少の決議は、普通決議で足ります。

2
利益及び準備金を資本金に組み入れる場合は、株主総会の決議が必要です。また、会社成立後、減少できる資本金・準備金の額には制限がありません。ただし、資本金・準備金を減少して剰余金とする場合には、債権者保護手続が必要です。

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利益準備金と資本準備金は、単に「準備金」として整理されます。利益準備金の積立に関しては、剰余金の分配額の10分の1か、資本金の4分の1から準備金額を控除した額のいずれか少ない額が積み立てるべき額になります。  会社法上の準備金と会計上の損益取引・資本取引から生じる準備金を明確に区別する必要があります。
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(14)決算公告ほか

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株式会社は、決算公告が義務付けられています。既存の有限会社は義務づけられません。

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会計監査人が義務付けられる会社は、P/L、又はその要旨の公告も必要です。

3
「役員賞与」その他の取締役等に対して与える財産上の利益については、会計処理のあり方に関わらず、株主総会の決議が必要です。
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(15)株式の譲渡制限制度に関して

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譲渡制限株式は、株主間の譲渡につき原則として、株主総会(取締役会を設置する株式会社は、取締役会)の承認が必要です。

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定款で、次の事項を定めることができます(例外)。
株主間に譲渡につき、承認を要しないこと。
特定の属性を有する者については、承認権限を代表取締役等に委任し、又は承認を要しないこと。
相続、合併等の譲渡以外の事由による株式の移転についても、承認の対象とすること。
譲渡を承認しない場合において、先買権者の指定の請求があったときの先買権者をあらかじめ指定しておくこと。
取締役会を設置する株式会社において、承認機関を株主総会にすること。

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株式譲渡制限会社では、簡易組織再編行為、略式組織再編行為をするときには株主総会の決議が必要になります。
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(16)自己株式及び株券不発行

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市場取引・公開買付け以外に、株主総会の普通決議により、自己株式を有償取得することができます。その場合、有償取得する株式の種類、総数及び総額並びに1年を超えない範囲内の取得期間を決議し、取締役(取締役会を設置する株式会社は、取締役会)に対して授権することができます。

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株券は、定款の定めがある場合にのみ発行できます。ただし、株式譲渡制限会社では、定款の定めがある場合においても、株主からの請求がない限り、株券を発行しないことができます。
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(17)合併等の対価柔軟化

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対価の柔軟化
吸収合併、吸収分割又は株式交換の場合において、消滅会社の株主等に対して、存続会社、承継会社又は完全親会社となる会社の株式を交付せず、金銭その他の財産を交付することができます。
消滅会社の株主等に対して、交付する対価の割当てに関する理由記載書面のほか、対価内容が相当である理由を記載した書面が開示すべき資料となります。

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株式交換の場合の債権者保護手続
完全親会社が、当該株式会社の株式以外の財産を完全子会社の株主に交付する場合には、債権者保護手続が必要になります。
イの場合には、異議を申し述べた債権者等は、株式交換無効の訴えを提起することができます。

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効力の発生
吸収合併又は吸収分割については、登記時ではなく、その組織再編行為を行う株式会社間で定めた一定の日において、その効力が生じることになります。
第三者に対しては、その善意・悪意を問わず、効力の発生は登記をしなければ対抗できません。
効力発生日を公告することとし、その期日を変更又は中止するときには、その旨を公告することになります。
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税経新人会全国協議会