論文

(2004.9月号)
常陸野(ひたちの)霞ヶ浦のほとりで
特別決議憲法に基づく国民の諸権利を擁護しよう
要綱案第二次案に見る新会社法制のルール


「要綱案第二次案に見る新会社法制のルール」
神戸会国岡

合同会社(いわゆる日本版LLCの新設)について
社員の有限責任が確保され、会社の内部関係については組合的規律(原則として全員一致で定款の変更、その他の会社のあり方を決定し、自らも業務執行にあたるという規律)が適用される新たな会社類型が創設されます。なお、会社内部関係における規律については、合資会社及び合名会社についても同一の規定が適用されます。

ただし、合同会社については、会社法で規定されても、税制上の扱い(組織体課税か、構成員課税か)が決まっていませんので、合同会社を選択する場面は、まだ先のことになりそうです。
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(1)社員等に関して

1
社員一人のみの合同会社の設立及び存続が認められます。

2
会社成立後の社員の入社及び持分の譲渡の承認については、それぞれ原則として社員全員の一致によります。

3
出資は金銭その他の財産のみに限定され、全額払込主義がとられます。

4
社員は、会社の債務について責任を負わないことになります。
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(2)業務の執行に関して

1
社員は、原則として業務を執行する権限を有します。定款の定め又は社員全員の同意により、社員の一部を業務執行社員として定めることができます。

2
業務執行社員が法人である場合には、当該法人は、自然人を職務執行者として選任しなければなりません。なお、職務執行者は登記事項になります。

3
業務執行社員は、民法規定に基づく、善管注意義務と忠実義務を負います。

4
業務執行社員以外の者は、業務執行社員の会社に対する訴えを提起することができます(株式会社の代表訴訟と同様の措置)。また、業務執行社員の第三者に対する責任は、株式会社と同様の規定が設けられます。
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(3)計算等に関して

1
会社は、B/S、P/L、社員持分変動計算書を作成しなければなりません。債権者は、その閲覧又は謄写の請求をすることができます。

2
計算に関する規定及び剰余金の分配に係る財源規制は、株式会社と同様になります。

3
違法な剰余金分配が行われた社員の責任等についても株式会社と同様の扱いになります。
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(4)社員の退社について

1
社員は、やむを得ない事由があるときは、退社することができます。

2
退社するときは、その持分の払い戻しを受けることができます。
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(5)その他

1
合同会社もしくは株式会社を相手方として、吸収分割、株式交換、新設分割、株式移転に相当する行為ができます。反対に株式会社が、合同会社を相手方に同様の行為ができます。

2
解散判決、社員の除名等、合名会社と同様の制度が設けられます。

合資会社について

1
会社は、合資会社の無限責任社員になることができます。

2
合資会社の業務執行社員が法人であるときは、合同会社と同様に自然人を職務執行者として選任しなければなりません。

3
業務を執行しない有限責任社員は、重要な事由がある場合には、裁判所の許可を得なくても、合資会社の業務及び財産の状況を検査することができます。

4
業務を執行しない有限責任社員による業務執行社員の責任を追及する訴えは、合同会社と同様の措置が講じられます。
合名会社について

1
社員一人のみの合名会社の設立及び存続が認められます。

2
会社は、合名会社の社員になることができます。

3
合名会社の業務執行社員が法人であるときは、合同会社と同様に自然人を職務執行者として選任しなければなりません。

4
業務を執行しない社員による業務執行社員の責任を追及する訴えは、合同会社と同様の措置が講じられます。
合同会社・合資会社・合名会社相互の関係
(1)社員の変動又は責任の変動

1
合名会社は、いつでも有限責任社員を新たに加え、又は、一部の社員の責任を有限責任とすることができます。この場合は、以後、合資会社の規律の適用を受けます。

2
合資会社は、有限責任社員の全員が退社し、又は無限責任社員となった場合でも、解散しません。この場合には、以後、合名会社の規律の適用を受けます。

3
合同会社は、いつでも無限責任社員を新たに加え、又は、一部の社員の責任を無限責任とすることができます。この場合は、以後、有限責任社員の有無により、合資会社又は合名会社の規律の適用を受けます。

4
合資会社・合名会社は、無限責任社員がいなくなれば、清算手続を開始するか、又は新たに無限責任社員を加えて継続するか、債権者保護手続を経て合同会社として継続することができます。

5
社員の責任の状況に応じて、「合資会社」・「合名会社」等の商号使用が義務付けられます。この義務に違反した場合は、その使用する商号の会社類型の社員が負う法律上の責任と定款等で定められている責任の重い方の責任が課せられます。
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(2)株式会社への組織変更

1
合同・合資・合名の各会社は、社員全員の同意により、株式会社に組織を変更できます。

2
合資会社・合名会社が株式会社に組織変更するには、知れている債権者に対して個別催告をすべき債権者保護手続が必要になります。

3
合同会社・合資会社・合名会社と株式会社の合併及び合同会社・合資会社・合名会社同士による株式会社を新設会社とする合併に関する制度については、所要の整理が行われます。
文責くにおかきよし
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