与党税制大綱では「企業収益が大幅に改善し、設備投資も増加している。雇用情勢も着実に改善しており、消費者マインドの改善もあって、個人消費は緩やかに増加している」と述べているが、失業率の若干の低下は、パートやフリーターなど不安定雇用の急増が完全失業率を押し下げているわけで、雇用情勢が「回復」したものではない。また、個人消費は2004(平成16)年10月の消費支出が前年同月比0.1%増とはなったものの、これは中国特需や輸出効果など一時的なもので、11月から減速感が広がっている。与党や財界のなかからも、景気回復が「本物」でなく、長続きしない恐れから、慎重に行うべきという意見が相次いで出されている。
定率減税の廃止(総額3兆3,000億円)は、家計に多大の負担を強いることとなり、特に中低所得階層に対する課税強化となり、ひいては、個人消費全体を冷え込ませることにつながる。
定率減税は1999(平成11)年、所得税の最高税率の引き下げ(50%から37%)、法人税の基本税率の引き下げ(34.5%から30%)、とともに恒久的減税として実施され、「景気対策」の一環でもあった。また、個人所得課税及び法人課税の在り方についての抜本的な見直しを行うまでの間の措置として実施されたものでもあった。
個人所得課税及び法人課税のあり方について、抜本的な見直しもされないまま、また、法人税の基本税率、所得税の最高税率を元に戻すことなく、定率減税だけを廃止するというのは理論的にも説明がつかないことである。既定の路線である「所得税・住民税については庶民大増税、法人税については軽課」のもと実施されようとするものであり、私達は到底受け入れることはできない。 |