論文

(2004.9月号)
常陸野(ひたちの)霞ヶ浦のほとりで
特別決議憲法に基づく国民の諸権利を擁護しよう
要綱案第二次案に見る新会社法制のルール


要綱案第二次案に見る新会社法制のルール
神戸会国岡

はじめに
2月の「会社法制の現代化に関する要綱試案」に対する各界意見の分析を受けて、要綱案作成に向けて、法制審議会会社法部会では10回の部会審議が行われ、7月28日要綱案第二次案が議論されました。この間、株式会社と有限会社の規律を一体化する議論と要綱案のたたき台(1)から(5)までが議論され、要綱案も一次案、二次案と成案化されてきました。

今、法務省では要綱案二次案の議論に基づき条文作りに入っています。9月中旬には、各条文間の細目等について確認作業が行われ、10月下旬には要綱案が正式に決定され、公表される予定です。これに基づき、来年の通常国会に会社法案が上程され、法施行は、06年4月1日が予定されています。

新会社法制下では、現行の株式会社と有限会社は、一つの会社類型としての株式会社の規律に統一されます。したがって、有限会社制度が廃止され、06年4月以降、有限会社の設立ができません。既存の有限会社は、新会社法の中で、経過措置規定が設定され、そのまま継続できます(経過措置適用の期間制限は不明)が、会社法施行後は、組織変更により、有限会社には戻れません。株式会社と有限会社の大きな違いは、決算公告義務の有無、役員任期の有無などです。

新会社法での会社の種類は、次の4種類になります。1 株式会社(既存の有限会社含む)、2 合同会社(日本版LLC)、3 合資会社、 合名会社です。

今回の会社法では、会社運営のかなりの部分が、定款による自治に任される部分があります。それぞれの会社が、どのように運営していくのか、自ら決める必要があります。また、税理士等の専門家が、会社からどのような機関設置と運営方法をとればよいのか、助言を求められることになります。したがって、基本のルールについて熟知しておく必要があり、改めて新会社法を学ぶことが不可欠になります。以下、要綱案二次案に基づき、概要を取り上げます。

株式会社制度の概要について
(1)株式会社の区分と機関
商法特例法上の大会社、中会社、小会社の区分は、現行法のとおりで見直しはありません。株式会社の運営は、譲渡制限会社か、公開会社(上場・店頭登録)の2つに区分されます。さらに、株式譲渡制限会社は、法定の取締役会設置の有無で区分され、次の表のようになります。また、別表の機関設計の選択ができます。

小会社 中会社 大会社
譲渡制限会社 取締役会なし 取締役1人のみ株主総会で決定 左に同じ 取締役+監査役+会計監査人
取締役会あり 取締役3人以上+会計参与他選択設置 左に同じ 上に同じ
公開会社 取締役会+監査役(会) 左に同じ 会計監査人強制、監査役会又は三委員会等

選択できる株式会社の機関設計
株式譲渡制限中小会社
1 取締役会を設置しない 取締役のみ
2 取締役+監査役
3 取締役+監査役+会計監査人
4 取締役会を設置する 取締役会+会計参与
5 取締役会+監査役
6 取締役会+監査役会
7 取締役会+監査役+会計監査人
8 取締役会+監査役会+会計監査人
9 取締役会+三委員会+会計監査人
(注1)定款で監査役の権限を会計に関する事項に限定することも可能。

株式譲渡制限大会社
1 取締役会設置なし 取締役+監査役+会計監査人
2 取締役会設置あり 取締役会+監査役+会計監査人
3 取締役会+監査役会+会計監査人
4 取締役会+三委員会+会計監査人

公開中小会社
1 取締役会設置あり 取締役会+監査役
2 取締役会+監査役会
3 取締役会+監査役+会計監査人
4 取締役会+監査役会+会計監査人
5 取締役会+三委員会+会計監査人
公開大会社
1 取締役会設置あり 取締役会+監査役会+会計監査人
2 取締役会+三委員会+会計監査人
(注2)会計参与は、原則として、いずれの機関設計においても任意に設置可能。
(2)株式会社を設立するには
1 会社名と本店所在地は、同一市町村、同一営業でも設置可能です(同一住所、同一商号はだめ)。
2 支店での登記は、商号、本店所在地、支店所在地の3項目だけになります。
3 最低資本金額の下限規制はありません。定款で出資額の定めが必要です。
4 現物出資は、500万円以下が少額特例で、検査役調査なしになります。

5
設立方法は、発起設立か募集設立は従来どおりですが、発起設立は、資本金の確認が残高証明でよいことになりますが、募集設立は従来どおり、保管証明の手続が必要です。
6 設立時に、取締役会設置の有無、取締役等を定めます。

7
監査役、会計参与の設置の有無を定めて、取締役等の任期期間を決めます。原則は、取締役2年、監査役4年ですが、定款で最長10年まで伸ばすことができます。
(3)取締役会を設置しない株式譲渡制限会社

1
取締役は1人以上、何人でも選任できます。複数人を選べば、任意の役員会で過半数決議により業務執行をします。
2 監査役の設置は、義務付けられません(定款で任意に選任しても構いません)。
3 取締役の任期は、原則2年、定款で最長10年まで伸長できます。
4 取締役の資格を、定款で株主に限定できます(譲渡制限会社すべて)。
5
株主総会
は、強行法規に反しない限り、いかなる事項も決められます。

6
総会招集は、1週間までに発すればよいことになります(定款で短縮可能)。
総会招集通知は、書面又は電磁的方法でなくとも構いません。通知に会議目的、記録の添付が必要ありません(決算書類等も添付必要なし)。
7 株主総会では、各株主に単独の議題提案権が認められます(行使制限なし)。
8 総会開催地は、本店所在地に限らず(すべての株式会社)、定款で決められます。

9
各取締役が、会社の業務執行・代表権を有します。定款又は総会決議で代表すべき取締役を限定して決めることができます。また、定款で取締役の互選で代表を選ぶこともできます。
(4)取締役会を設置する株式譲渡制限会社
1 取締役は3人以上、何人でも選任し、法定の取締役会(登記事項)を構成します。

2
監査役、会計参与、三委員会等のいずれかを選択して設置しなければなりません。
会計参与を選任すれば、監査役の設置が省略できます。
3 監査役を設置した場合、定款で、会計監査権限のみに限定できます。
4 取締役の任期は原則2年、監査役の任期は4年ですが、定款で最長10年まで伸長できます。
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