2. 消費税の転嫁の実態 |
消費税は、転嫁を前提として事業者が納税義務者となる間接税です。その転嫁が円滑に行われない場合には、消費税は「付加価値」を課税標準とする事実上の直接税と変化します。
では、その転嫁が果たしてどの程度実行されているかについては、国税庁はもとよりまともな統計は存在しないようです。本体の税抜き価額を値下げして、消費税分を完全に事業者負担している場合には100%転嫁不能となりますが、十分に転嫁できていない場合や消費税分のいくらかを値引きしている場合、或いは税込金額合計の値引きをした場合など一口に転嫁と言ってもその実態を的確に把握することが困難であるからでしょう。この転嫁が「予定」されているだけであって法的に何らの保証がない特に中小零細企業にとって、消費税は「預かり金」という国税当局の広報は、実態を全く反映しない詭弁としか聞こえないでしょう。
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中小企業における消費税実態調査(中小企業庁)にみる転嫁の実態 |
中小企業庁が平成14年に実施した転嫁状況についてまとめたものが表3です。
これによると、売上階級が2億円以上の中企業では約80%以上が完全に転嫁できていると回答しているのに対して、今回新たに課税事業者となる売上1千万円から3千万円の小企業では約40%から50%程度しか完全に転嫁できないと答えているのが実態です。また約30%の事業者が、ほとんど転嫁できないと回答しています。
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中小企業にとっては、第2事業税 |
消費税の課税標準は、あくまで「国内における課税資産の譲渡等」であり、納税義務者は「事業者」となっています。消費税という言葉からあたかも「消費」を課税客体として課税されるかのような錯覚に陥りますが、消費税法の条文のどこを探しても、かつての納税義務者は消費者であり事業者は特別徴収義務者であるとの構成はありません。実態から言うと「市場が許せば転嫁が可能な第2の事業税」という表現がより的確でしょう。「消費税」という名称は、ヨーロッパ等の正確な名称VAT=付加価値税と呼称するのが本来であり、消費者に無用の錯誤を招く名称であると思われます。
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総額表示方式の問題点 |
以上のような消費税の問題点を考える上で、消費税の総額表示は、その付加価値税としての性格から考えると「順当な改正」であるとも考えられます。消費税は、あくまで事業者に課せられる付加価値税ですから、「預かり金」としてその内訳を表示する義務は法的にはないからです。
ただ、消費税導入の当初「外税」方式を推奨していたのは、当局が転嫁の円滑化を図り、便乗値上げ等を防止する目的からの政治的意図的な政策であったと考えられます。この総額表示により、消費税の増税への一里塚が築かれたと評する意見もあります。
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輸出免税規定の是非と転嫁の関連について |
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