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II . 税法における信義誠実の原則 |
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(1)信義誠実の原則とは |
民法1条2項により、「権利の行使及び義務の履行は信義に従い誠実にこれを為すことを要す。」と規定されており、一般に社会生活上一定の状況の下において相手方のもつであろう正当な期待に沿うように一方の行為者が行動することを意味する。

法律的には、法律や契約条項に規定されている権利義務関係を、具体的な事情に応じて創造または調整する機能を果たしている。つまり、ある者の過去の言動に反する主張を許すと、その言動を信頼した相手方の利益を害するような場合に、その者の当該主張を許さないとするものである。

信義則を具体化した概念として
- 付随的義務
- 保護義務
- 安全配慮義務
- 事情変更の原則
- 背信的悪意者排除論
- 信頼関係破壊の法理
がある。 |
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(2)信義則に関する主要判例
(ア)信義則上の義務 |
i. 使用者の責任と被用者の責任との関係における信義則 |
民法715条 使用者の責任 |
使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り、又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散について使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる。(最高裁S63.7.1)
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ii. 安全配慮義務違反 |
民法415条 債務不履行による損害賠償の要件 |
安全配慮義務(被用者の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮する義務)は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方または双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであり、国と公務員との間でも別異に解すべきものではない。 |
(最高裁S50.2.25 自衛隊員が、基地内において、別の自衛隊員の運転する自動車にひかれて即死したので、右隊員の両親が国に損害賠償を求めた例) |
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(イ)信義則上の権利 |
i. 事情変更の原則 |
事情変更の原則を適用するためには、契約締結後の事情の変更が、当事者にとって予見することができず、かつ当事者の責めに帰することができない事由によって生じたものであることが必要であり、かつ、右の予見可能性や帰責事由の存否は、契約上の地位の譲渡があった場合でも、契約締結当時の契約当事者について判断すべきである。(最高裁S63.7.1) |
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