税調によると「平成10年度以降、課税ベースを拡大しつつ、税率を国際水準並みに引下げるとともに、連結納税制度の導入等の大きな改革等を行ってきた」(平成14年度あるべき税制)という。その発端となったのは、それ以前において「法人税の表面税率(調整後)は49.98%と他国と比べ高いとなっていたため、それを引下げることにより企業活力や国際競争力に配意する」(平成10年度税制改正答申)ことであった。
しかし、平成10年度改正のみで課税ベースの適正化が完全に行われたわけではない。政府税調内においても次のような意見がある。
『わが国においても、同様の観点から、平成10年度税制改正において、法人税の課税ベースの大幅な見直しと法人税の基本税率の引下げが併せ行われた。しかしながら、平成11年度税制改正においては、景気情勢に配慮し、課税ベースの見直しが行われないまま税率の引下げが行われ、現在でもこの一方的な減税措置が継続している。
課税ベースの一層の適正化への取組みは、わが国法人税における重要な課題であり、特に連結納税制度といった新しい制度の創設に当たっては、法人税制全体の見直しが不可欠である。こうした観点から、引当金や法人間配当に関する取扱いなど平成10年度税制改正において残された課税ベースの見直しを進めていく必要がある』(平成14年度税制改正答申)
そもそも法人税の課税ベースとは、課税所得(課税標準)のことであって、会計上の利益に益金・損金の調整をされて求められる。現在においてもわが国の法人税法には諸外国と比べて法人企業の課税ベースを縮小(侵食)させる「受取配当の益金不算入」というわが国の法人税法上の基本的仕組みを始めとして、諸外国では税法上損金容認されない法人税法上の「各種引当金(平成10・14年度・で廃止・縮小)」や租税特別措置法上の主として大企業が専ら利用する「各種準備金」、「特別税額控除」、「特別償却等」の政策的減税措置が驚くほどある。
平成14年度税制改正答申の以降、法人税の課税ベース拡大について税調は具体的に言及していない。もっぱら法人税率の引き下げに着目している。
課税ベースを正さないまま「企業活動に対し歪みの少ない中立的な税制の構築」を目指しても意味がないことは明白である。以下、課税ベースを縮小させている項目について述べていく。 |