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非労働力人口の増加と高齢化社会 |
総務省統計局では、毎年「労働力調査」を実施しています。表6は「長期時系列データー」を10年単位で概括しています。これを見れば、次のことが明らかとなります。
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労働力人口は1998年の6793万人をピークに減少していること |
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非労働力人口は増加の一途をたどり15歳以上の人口の39%、4285万人に達していること。昭和28年当時はその割合は、約30%であったこと。現在約10人に4人が非労働力人口となっていること。 |
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とりわけ、女性の非労働力人口は、女性の労働力人口2732万人を上回る2916万人となっていること。 |
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65歳以上の労働力人口は489万人に達し、平成1年339万人以降顕著な伸び率となっていること。しかし、逆に労働力人口比率では、明らかに低下し(昭和43年33.5%→平成15年20.2%)ていること。 |
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労働力人口のうち完全失業者が350万人となり失業率は5.3%に達していること。 |
この統計から、進行する少子高齢化社会における労働力を完全に予測することは困難です。しかし、明確なことは、日本社会で少子高齢化と同時に進行しているのは、むしろ非労働力人口や完全失業者の顕著な増加であり、反面高齢者の労働力人口の増加であるということです。
非労働力人口の増加の背景には、高齢者の増加もその一因となるでしょうが、更に統計上失業者に含まれない潜在的就職希望者の増加や働く意欲を喪失した人口の増加であると考えられます。
高齢者の有業率の増加を国際的に比較した総務省データーを以下に掲載します。 |
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上記のように、国際的にも日本の労働力人口比率は高く、この傾向は今後も続くものと推測されます。
消費税の増税を考える前に、このような膨大な非労働力人口を労働力として活用できる社会や税制を造ることこそが大切であると考えます。「女性も65歳まで働くのが当たり前」とされる北欧社会はその貴重な事例ではないでしょうか。
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純負担率をめぐる問題点 |
高齢化社会論では、負担の増大という財政側からの議論ばかりが横行しています。しかし、家計や国民経済からみてはたして租税と社会保障の負担率から社会保障給付率を控除した純負担率がどのようになるかが実は大きな問題であると考えます。少し資料が古いですがこれに関して安田総研が国際比較したものが参考になります。
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税、社会保障負担率 |
社会保障給付率 |
差引「純負担率」 |
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A |
B |
AーB |
日本 |
29.2 |
11.4 |
17.8 |
ドイツ |
39.0 |
24.0 |
15.0 |
フランス |
43.7 |
26.4 |
17.3 |
スェーデン |
51.0 |
37.8 |
13.2 |
イギリス |
35.1 |
20.6 |
14.5 |
アメリカ |
26.7 |
14.5 |
12.2 |
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1992年対GDP比較安田総研「国民負担率概念に関する議論の整理と今後の展開」より抜粋
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高齢化社会において表面的国民負担率が高率(51%)なスウェーデンよりも日本の方が純負担は高い(17.8%対13.2%)との結果が出ています。これは、社会保障給付率に大きな差(11.4%対37.8%)があるからです。さらに貯蓄率を加味し、所得から純負担率と貯蓄率を控除した最終消費率(所得−純負担率−貯蓄率)は、意外にもスェーデンの方が日本よりも高いとの試算もあります。福祉を中心とした安心のシステムと教育に惜しみなく社会的資本を投入し、結果的に国民経済が発展するという先進的な事例です。もうひとつ、この試算からもアメリカにおいてさえ社会保障給付率が日本よりも高い事実が判明します。
今回の年金改悪のように社会保障は低下させながら他方で国民負担を増大させる政府の政策は、ますます最終消費負担率を低下させ国民の生活と福祉、ひいては経済を悪化させることになるのがこの表からも明らかです。世界でも有数の国民所得がありながら、大多数の国民は不安と高負担にあえぐ、そうした社会像に導くのが消費税増税の目的なのでしょうか。 |