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V. マンション管理組合住宅管理組合の駐車場収入の課税関係について |
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(1)はじめに |
(ア)問題の所在 |
比較的大規模な分譲マンションなどで、住宅管理組合が駐車場を管理し、これを借りているマンションの住民から駐車場賃料を受け取っているところが多い。
団地内に十分なスペースがないとき、近隣の土地を借り受け、団地の駐車場として運用しているところもある。

こんな場合に、法人税・消費税の課税がおきるかどうかが問題になる。税経新報でも3年12月号の「お尋ねします」でこの問題を取り上げているので、詳しくはこの記事を読んでいただくとよい。そこに読者の回答も載っているが、回答者Aは条件付の不課税論、回答者Bは課税論で、意見が分かれている。質問者はこれらの回答と異なり、内部駐車場は不課税、外部駐車場は課税と考えているようで、三者三様の考えが示されている。 |
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(2)国税当局の見解 |
この問題の国税庁側の見解としては、法人税質疑応答事例の235番がある。この回答では、 |

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駐車場の敷地は区分所有者が所有し、管理組合の駐車場業はその区分所有者を対象としている。 |

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収入は区分所有者に分配されず、管理組合の事業費または修繕積立金の一部として、充当されている。 |
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駐車料金は付近の駐車場と比較し低額である。 |

の3条件が充足されれば課税されないとしている。形式的には条件付不課税論の形をとっているが、実質は外部駐車場課税論だとも言える。

消費税については、やはり質疑応答集の中に、「組合員である区分所有者に対する貸付の対価ならば、不課税」としており、法人税の場合のような条件は特に付されていない。 |
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(3)マンション管理組合と課税問題 |
マンション管理組合等に対する課税強化の問題はNPO法人等の非営利法人に対する課税問題も絡み、時の問題となっている。又消費税の非課税事業者の範囲が基準期間の課税売上高1000万円以下に引き下げられたこととも絡み、今後各地で問題化することも予想され、この問題の民法上からの検討を行う必要もあると考えられる。 |
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(4)民法と建物区分所有法 |
マンションなどの区分所有建物については、旧民法でも208条に特別な規定を置いていたが、昭和30年代以降のマンションブームの到来とともに、多発したトラブルを解決するため、特別法として昭和37年に「建物の区分所有等に関する法律」が制定され、その後昭和58年と平成14年に改正されている。駐車場の課税問題もこの法律の関連条文の検討が不可欠である。
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(ア)建物の区分所有 |
区分所有という概念は民法上特殊な概念である。なぜなら民法では「一物一権主義」を原則としているからだ。マンションのように一つの建物でありながら一戸毎に所有権を認めるためには、例外規定を置くことが必要で、「区分所有権」の概念は「区分所有法」により民法の所有権概念の例外として規定されている。マンションには住民の専有部分のほかに共用部分があるのが普通で、区分所有権の目的となっているのは、専有部分だけである。共有部分はマンション居住者の共有となる。またマンションの敷地については、各区分所有者が持つのは所有権に限られず、地上権、賃借権などを持つ場合もあるが、これを「敷地利用権」という。
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(イ)住宅管理組合 |
快適な住環境の維持のためには建物の管理が欠かせない。区分所有建物の場合誰が管理するかが問題となる。区分所有法では住民全体で団体を構成し建物・敷地・付属施設の管理を行うこととしている。これを管理組合という。管理組合は複数の区分所有者がいれば成立する人格のない社団で、設立総会などは必要ない。しかし集会で決議し事務所の所在地で登記をすれば法人となることができる。これを管理組合法人という。法人となれば法人税法上は公益法人の規定が準用される。但し寄付金の損金算入の規定と法人税の税率については、普通法人と同様に扱われ、優遇措置が受けられない。
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(ウ)敷地利用権と規約敷地 |
区分所有法では建物とその敷地を一体化し、これを別々に処分できるという民法の原則を排除している。したがって建物の区分所有権を譲渡すれば、当然に敷地利用権も移転する。この一体化原則の適用のためには、敷地利用権の対象となる、建物の敷地の範囲を限定する必要がある。建物の所在する敷地(底地)は当然含まれるが、この他に区分所有者が規約で敷地として定めた土地も敷地として認めている。(規約敷地)規約敷地としては庭や通路のほか広場、駐車場、テニスコート、付属建物の敷地、などが対象となる。
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(エ)駐車場と敷地専用使用権 |
敷地利用権を特定の区分所有者にだけが使用できる権利を専用使用権という。マンションの駐車場を借りるのも、この専用使用権の一種で「駐車場専用使用権」という。

マンションの分譲時に分譲業者が駐車場を設け、特定の区分所有者に専用使用権を有償で分譲することがあり、紛争になりやすい。この場合、分譲業者は敷地利用権のほかに専用使用権を売却することになり、二重の利益を得るので、公序良俗に反しないかの争いもあったが、最高裁判所は直ちに公序良俗違反とはいえないとの結論を出している。このような紛争の未然防止のため、標準管理組合規約では、駐車場については管理組合と区分所有者との期間を定めた賃貸契約方式が規定され、抽選で利用者を決定する方式が推奨されている。現在はこの方式を採用している例が多い。
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(オ)マンション管理規約 |
マンションの建物、敷地、付属施設などの管理または使用に関する事項は法律のほか、管理組合の規約で定めることになっている。前述の規約敷地についても、ここで規定される。住宅宅地審議会では「標準管理規約」とそのコメントによりマンション管理規約作成について指導しているが、そこでは駐車場の利用料金について、「駐車場が全戸分ない場合には、駐車場使用料を近傍の同種の駐車料金と均衡を失しないよう設定すること」が推奨されている。
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(5)結論 |
以上建物区分所有法の概念で前提車場の課税関係を考えると、駐車場が規約敷地となっている限り法人税も消費税も課税関係は発生しないのではないかと考えられ、国税庁の法人税質疑応答事例の見解には、若干の疑問が残る。 |