報告の内容と直接の関係はありませんが、今年各単位税理士会から日本税理士会連合会(以下「日税連」)に上げられた平成20年度税制改正に関する意見書(以下「意見書」)に関して、その中から二つばかり問題を提起したいと思います。
その一つは、意見書のなかで、東京税理士会をはじめすべての会が申し合わせたように消費税に関する改正要望の一つとしてあげているのは、消費税法30条7項において仕入れ税額控除の要件とされている「帳簿及び請求書等の保存」を、これは周知のように平成8年度の消費税法改正(税率3%から5%への引上げその他の「改正」)の際、それまで「帳簿又は請求書等の保存」であったその「又は」を「及び」に変更したものですが、これを改正前の「又は」に戻せというものです。
もともと大型消費税は、EC型付加価値税がお手本でした。従って、仕入れ税額控除のためにはEC各国で採用しているEC型インボイス方式を採用するつもりであったであろうことは、中曽根売上税法案が「税額票」の発行を考えていたことでも明らかです。しかしその「税額票」が、業者に余計な事務負担をかけることや非課税業者を取引から排除することになるなどの理由から、業者の大きな反撃を買い、この売上税導入を挫折させられた原因の大きな一つになったという苦い経験から、それに懲りた竹下消費税法では、心ならずもインボイス方式を引っ込め、「帳簿又は請求書等の保存」とする帳簿方式を採用したという経緯があります。
ですから税務当局とすれば、平成8年度に「又は」を「及び」に変更し、仕入れ税額控除のためには「請求書等」の保存が絶対に欠かせないものとしたのは、それまでの帳簿方式からできるだけEC型インボイス方式に近づけたいという強い執念が込められているように、私には思われます。
また、このインボイス方式に近づけるということは、今後さらに税率をアップする際に必要となるであろう複数税率のことが念頭にあるものと思います。ですから、この「及び」を「又は」に戻す要望を実現することは決して容易ではないと考えられるのですが、このことについて皆さんのご意見をお聞かせ下さい。 |