(1) |
Q. |
国の課税権は憲法25条を実現するため、25条を侵害する消費税は違憲では? |
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A. |
国の課税権(徴税権)は、税金の取り方は応能負担原則で、使い道は福祉のためということが実行されています。即ち、憲法の要請が実行されていることが前提となり認められています。
憲法25条は、国民の生存権を保障すると共に、それを支える国の責任を定めており、国が税法において人々の健康で文化的な最低限度の生活を脅かす程の低い課税最低限を規定することを禁じています(「最低生活費非課税」規定)。
最低生活費は、地域・年齢等によって異なりますが、神戸会チームの報告にあった「朝日訴訟」によると、健康で文化的な最低限度の生活の具体的判断は諸々の事情を踏まえて厚生労働大臣が決定するとされています。しかし、ここでいう健康で文化的な最低限度の生活とは、欧米先進国並みの文化的な生活水準を差すのではないかと思います。
現在は、基礎控除・扶養控除等の人的控除により生活費非課税がなされていると考えられます。基礎控除の金額が38万円と少額なことや、所得税と住民税とで金額が異なることなど問題点はここではおいておきますが、この生活費非課税を無視した上、食料品等生活必需品にまで課税する現在の消費税は生存権を侵しており、その限りで違憲であると言えます。 |
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(2) |
Q. |
消費税滞納問題をどのように考えますか? |
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A. |
消費税は商品の売値に上乗せして取引先や顧客に転嫁することを予定した税金であり、消費税法上の納税者は、消費税を実際に負担させられる消費者ではなく、課税商品を販売する業者です。
しかし、中小零細企業の場合は、親会社との力関係により消費税分の値引等を強制させられる場合が多々ある一方、販売価格には転嫁できない場合があります。この場合消費税分は身銭を切ることになり、間接税である消費税が『直接税化』していると考えられます。
国税の税別滞納状況を見てみると、消費税の滞納額が、H17年度では全体の45%を占めています。預り金である源泉税が12%であることを考えると、税務当局が『預り金的性格を有する』とする消費税は価格に転嫁できていないことを証明していると考えられます。
また近年の改悪では、免税点制度や簡易課税制度が大幅に引き下げられ、税理士に依頼することが出来ないような零細な納税者や原則課税の適用業者が大幅に増えています。
このように転嫁が十分に出来ないような業者の増加が滞納の増加につながっているのであり、現在の消費税の体系では滞納問題が解決することはないと思われます。 |
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(3) |
Q. |
消費税は政令委任が多すぎる。最悪は消費税Q&A課税している。憲法84条違反ではないのか? |
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A. |
憲法84条(租税法律主義)では、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律の定める条件によることを必要とする」と規定しています。これは、「国民の経済生活に法的安定性と予測可能性とを与える」(『租税法』第10版 金子宏 弘文堂 2005年) 機能があるものとされ、租税法律主義の内容の一部に『課税要件法定主義』があります。
※課税要件法定主義...課税要件のすべてと租税の賦課・徴収の手続きは法律によって規定されなければならない。
課税要件法定主義で問題になるのは、法律と行政立法(政令・省令等)との関係です。その趣旨からして課税要件を政令・省令に委任することが許されるのは「具体的・個別的委任に限られ、一般的・白紙的委任は許されない」(同上)とされています。
ここで問題になるのが『具体的・個別的』と『一般的・白紙的』の区別ですが、『具体的・個別的』というためには、「委任の目的・内容・程度が委任する法律自体の中で明確にされていなければならない」(大阪高裁S43.6.28、大阪地裁H11.2.26)と判例で示されています。
そこで消費税における課税要件法定主義を考えてみると、消費税がこれだけ複雑怪奇な制度であるにもかかわらず、ほとんどが政令・省令に委ねられています。
例えば消費税法第37条では簡易課税のみなし仕入率は60%と規定され、他の割合は政令57条に委任されています。明らかに「委任の目的・内容・程度が委任する法律自体の中で明確にされている」とは言えません。さらに税務職員のバイブルである通達に様々な規定を託し、そのうえシロホンと呼ばれる『消費税Q&A』に全ての解釈を任せているという有様です。
これらの『課税要件法定主義』に反する様々な規定は明らかに憲法84条違反だと言えます。
これは、法律制定の時点で実務家の意見が全く反映されていないことが最大の原因だと考えられます。実務を知らない人々のみで密室で付け焼刃的に決定した法律が、施行の段階でほころびが出るのは当然です。あらゆる可能性を考えないまま『とりあえず法律を通してしまえ』という立法がまかり通ってはいけないと思います。その為にも今こそ日税連、各税理士会、そして新人会が声を上げるべきではないでしょうか。 |
第43回神戸全国研究集会 東京会・埼玉会・神奈川会合同チーム
青野友信、井上春幸、井上礎幸、井上優里、岡野哲也、菅隆徳、鳥居敦子、保泉雄丈 |