時潮

選挙と暮らし
税経新人会全国協議会事務局長佐伯正隆
12年に1度の選挙(一斉地方選挙と参議院選挙)の地方選前半戦が始まった。何十年も選挙運動に関わってきたが、いつも投票日が終ると、その結果が気になると同時に何故かホッとした気持ちになる。どうも選挙、というより選挙活動があまり好きではない、これが本音であります。(ただし、他人から見ると選挙好きに見えるかもしれませんが。)

選挙中に政治のあり方や政策について真剣に討議する機会が少ないこと、掲げられた政策がいつのまにか反古されてしまうことなどへの反発もありますが、自らの主義主張を他の人に語りかけるのが苦手であり、日本の風土のなかにも議論を避ける傾向があるようだ。

この国の未来がどうなるのか、その方向を決める行動には大きく分けて2つあると思っている。

ひとつは国民諸階層の要望や要求にもとづいた様々な運動・活動である。平和を守る活動、環境保護を守るための活動、労働者が自らの権利を広げる活動、税制の民主化を求める活動など数え切れないくらいある。

私たち税経新人会も一定の理念に基づいて活動している団体であり、その会則でも明らかにしているように「みずからの職業を通じて、憲法にもとづく国民の諸権利を擁護する」ことを使命とし、研究活動等を行っています。

このような様々な運動・活動の広がりは日本の将来にとって貴重な成果をもたらすものと思う。

もうひとつは、やはり選挙です。

東京都の平成19年度の一般会計の予算規模は、6兆6,020億円、私の住む大田区の予算規模は2,147億円となります。地方自治体の存立基盤は「住民の福祉の増進を図ること」(地方自治法第一条第二項)であり、この巨額の予算が真に住民の福祉の増進に活用されれば、冷たい国の政治のもとでも格差社会の広がりやワーキングプアの増加などをいくらかでも押し留めることができるのではないだろうか。

昨年3月の税制「改定」頃から、国民健康保険料(税)の賦課についての関心を深めてきた。昨年の税制改定では「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」などに大きな衝撃が走ったが、今年6月から始まる住民税の一律10%化が国保料にどう影響するのか気がかりであった。東京都23区では、国保料の負担額は(世帯の被保険者の住民税額の合計額×1.82)+(被保険者の数×33,300円)で計算される。今年から課税所得200万円以下の者の住民税額は5%から10%と2倍となり、さらに定率減税廃止の影響も受けることとなる。従来の負担額(料率)では想像を絶するような負担となってしまう。

2月下旬に大田区議会の委員会(生活産業委員会)を傍聴したが、ここで「大田区国民健康保険条例の一部改正(案)」が提案された。改正(案)では、1.82倍を1.24倍に引き下げる。均等割33,300円を35,100円に引き上げる(介護保険料については省略。)との提案であった。この計算では低所得者は大幅な国保料の値上げとなるので、「税制改正にともなう激変緩和措置」がとられた。それでも低所得者は4〜29%程度の保険料値上げとなるが、生活産業委員会では1人の反対だけですんなり了承されてしまった。

国保料の滞納世帯が全国で488万世帯(国保加入世帯数2,530万世帯)にものぼり、国民健康保険証を取り上げられた世帯は35万世帯を超え、保険証がないために病院に行けず亡くなる方が続出している。「福祉の増進」は何処へ。

東京都が2008年度から低所得者に対する住民税の所得割の免除方針を打ち出した。選挙目当てのような気もするが、格差社会に一石を投じることになるのではないだろうか。住民税10%のうち6%は市区町村分であり、市区町村が同様の措置をとればさらに大きな効果がある。

減免された住民税額にもとづき国保料の算出を行うことも可能である。

住民税や国保料だけでなく、住民の暮らしや命に関わる事柄について、このような姿勢で行政を行える自治体が誕生することを今回の選挙に期待するものである。

(さえき・まさたか)


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