(2004.7.8合併号)
社会福祉法人の実務
税制問題の検証
民法と税法の接点
消費税施行15年、改めて制度と実務の問題点を考える
証券税制における中小企業の立場


特集第40回常陸野全国研・分科会テキスト「社会福祉法人の実務」
埼玉税経新人会社会福祉法人プロジェクト
河崎陽子・清塚健二・清野智江・松本重也・持田晶子
II 消費税の実務

(社会福祉法人の消費税)
はじめに
平成15年度税制改正において、免税事業者となる課税売上高の上限及び簡易課税制度を選択できる課税売上高の上限が大きく引き下げられたことにより、これまで免税事業者であった社会福祉法人が課税事業者となることか考えられます。 この改正は今年度より施行されており、今回社会福祉法人の実務に関する消費税の課税判定、計算方法等を検討してみました。
収入区分
資金収支計算書よりの総収入金額を区分しますと次のようになります。
課税、非課税判定のポイント

社会福祉事業にかかる非課税規定は消費税法第6条別表1第7号イロハから検討し、必要に応じ政令、通達という流れになります。

補助金事業と委託事業の区分について、消費税法上では委託収入は基本的に課税取引であり、補助金収入は不課税取引と異なることから適正に区分する必要があります。

委託事業と補助金事業の判定は、形式的な契約書及び交付要綱等に記載された呼称によってではなく、実態によって判定しなければなりません。具体的には、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の適用があるかどうかにより判定します。

作業収入については授産施設におけるものと身体障害者更正施設等におけるものがあり、授産施設におけるものは消費税が課税され、身体障害者更生施設等におけるものは非課税となります。 クリーニングや食品製造等が授産事業として行われている場合と身体障害者更生施設等における作業訓練として行われている場合では同じ作業収入でも課否判定が異なります。

公益事業や収益事業を営む場合は、公益事業については消費税法第6条別表1第7号ロの規定が直接的に適用されないので、同号ハの「社会福祉事業等として行われる資産の譲渡等に類するもの」に該当するか否かにより判定し、さらに補助金事業か委託事業かにより課否判定をします。 収益事業については、おおむね資産の譲渡等に該当すると考えられ、一般企業における判定と同様に課否判定をします。

法人内消費(内部取引)については、その収支は対価ではなく費用の内部振替に過ぎず課税扱いにはなりません。
本則課税と簡易課税
簡易課税
長所 支出に係る消費税等の記録及び計算についての事務作業の軽減。

実際の仕入率がみなし仕入率より低い場合は有利。
短所
一旦選択すると2年間取りやめが出来ないので、選択にあたっては2年間の有利不利を考慮する必要あり。
消費税の還付がない。
みなし仕入率が実際の仕入率より低い場合は不利。

社会福祉法人の場合は、収入のうちに非課税売上や特定収入の占める割合が大きいので本則課税の場合は仕入税額控除額の計算にあたり、課税売上割合や特定収入割合 による調整計算を行なうことになり、事務作業が煩雑となります。そこで、簡易課税 制度を選択することにより事務負担を軽減することが出来ます。
本則課税
課税売上割合が95%未満の場合は、個別対応方式や一括比例配分方式により、仕入税額控除の対象となる消費税を計算し、さらに特定収入割合が5%を超えると、調整割合を用い仕入税額控除の対象となる消費税を計算するという2段階の調整が必要となります。

つまり、消費税の納付額(または還付額)は、課税収入にかかる消費税額からその課税収入に要する課税支出にかかる消費税額を控除することが消費税における転嫁の仕組みですから、非課税収入や特定収入という転嫁のない収入に対応する課税支出にかかる消費税は控除しないことになります。このような計算をする為、仮に多額な施設設備があっても消費税の還付ということは極めてまれであると思われます。
参考図書 「社会福祉法人のための消費税課否判定と申告の手引き」
宮内忍・宮内眞木子
第一法規(株)発行
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税経新人会全国協議会