論文

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> 第47回加賀全国研究集会 分科会・懇親会・記念公演そして全体会
"加賀全国研物語" 総集編
加賀全国研実行委員会 事務局長 北 正幸
はじめに

去る9月9日kara555.gif10日、石川県加賀市の山代温泉「ゆのくに天祥」において開催された、第47回加賀全国研究集会は290名以上の参加のもと、無事終了しました。全国より参加された新人会会員の皆さんにはこの場をお借りし、感謝申し上げるとともに、至らぬ点が多々あったことをお詫びいたします。
また、全国協議会の佐伯事務局長には全面的なご指導・ご支援を頂き厚く感謝いたします。

今回の加賀全国研究集会は、計らずも、あの3.11大震災から6ヶ月、9.11米国同時テロから10年という時期に開催された全国研となりました。
また開催直前には、和歌山県等を中心とした台風12号の大豪雨により、参加を取りやめられた会員さんもおられ、心痛む思いのなか開催されることとなりました。
北陸での開催を決意

北陸会が主催した全国研は過去、1979年の第15回(和倉温泉)と1989年の第25回(金沢)の2度です。今回は実に22年ぶりの開催となったわけですが、言うまでもなく積極的に開催の名乗りを上げたわけではありませんでした。
正直なところ、「今をおいてはもうやれなくなる」との、いわば追い詰められた状況に近いものでした。

わが北陸会は、開催を正式に引き受けた2010年1月当時、会員のうち70歳以上の会員が約半数と高齢化が進んでいました。最も若い会員でも54歳です。ましてやパソコン・ITを得意とする人などいません。開催など全員が無理だと考えるなか、関信会の方の言葉が私たちの心に火をつけてしまったのです。「先送りすればするほど人は減っていく」まさにその通りでした。「そうだ!」この天からの声にあっさりと "やる気モード" に大変身!!
今回の全国研は、正真正銘「関信会」後援と言っても過言ではありませんでした。

しかし、開催を決意したのはいいけれど誰が中心になるのか?これが一番の重要問題です。誰もが、自分以外の人がやるものだと思い開催に賛成したようで、雲行き怪しく今にも空中分解しそうになります。御破算になりかけては、「開催するんだ」という原点に何度も立ち返りました。

ここで地上の誰かの声が響きます。
「皆でやればいいじゃん!ちゃんと手伝うから!」なんとシンプルなお声なんでしょう!
動ける人全員が実行委員になる、分かりやすい結論。気持ちよく煽てて頂き、その中の若めの会員が三役となりました。こうして実行委員9人(残念ながら今年6月に1人亡くなられました)のオールスタッフ兼もうこれ以上誰もいない体制がスタートしました。
準備は楽しく

同じやるならイヤイヤより楽しく、これが基本です。旅行へ行くにしても当日より下調べの期間のほうがワクワクし、想像もどんどんと広がっていくものです。どうせ苦労するなら楽しくユーモアをもって、そしてできるだけ安くて喜んでもらえるように、これが大切です。

全国研のスローガンも最後まで決めませんでしたが、めざすベクトルも最後まで心から楽しんでもらうことでした。
直前の9月1日の実行委員会では、本番に見立てた全国研リハーサルを行いました。

第1日目朝10時のスタッフ打合せに始まり、出迎え、受付、分科会開催、懇親会前の休憩、そして懇親会、さらには第2日目の日程をも、こちらの想定したタイムスケジュールに従って進行し、細部までチェックをしたお陰で全員疲れ果て、本番終了の気分に皆笑ったものです。

今全国研を終え、無事終えられた理由を振り返って考えてみると、これかなと思えるポイントがあります。
一つは、実行委員みんなで千葉全国研へ参加したことです。事前の打合せで、誰が、何を視察してくるか?綿密に、漏れなく役割分担を決めて参加したことが後々に生きてきました。分担テーマごとに記録と写真をとり、北陸に帰ってから合作で視察結果一覧表を完成させました。記憶の新鮮なうちに現地千葉で参加者会議をもち、意見交換をしたことも良かったと思います。

もう一つは、記念講演と懇親会アトラクションを直接体験し、録音等によりみんなで確認してから決定したことだと思います。なかなか出来ない場合も多いでしょうが、いくらかでも内容が把握できていた方が安心感が生まれます。
北陸・静岡のオールスタッフ
北陸・静岡のオールスタッフ
本番当日を連想し、これなら楽しんでもらえるのではとイメージしました。記録を見直すと、記念講演の先生には、昨年の11月8日にすでに正式な依頼をし快諾を得ています。

楽屋姫さんには、6月7日に正式な依頼をし即日快諾を得ています。どちらも候補にはかなり前から上がっていたものです。大きなテーマの目途が立てば、あとは千葉の視察を思い出しながら、煮詰めていく作業となります。

実行委員会は確定申告期の1月kara555.gif3月を除くほぼ毎月1回のペースで、昨年7月8日の第1回を皮切りに、最終9月1日まで延べ12回開催しました。それ以外に、千葉全国研参加者会議・臨時実行委員会各1回、三役・四役会議4回、現地確認2回、他には例会・総会が5回開催されました。北陸は比較的集まりやすいこともあり、参加率はほぼ100%に近く、実行委員の方々には頭が下がる思いです。

運営方法の面では、みんなで討議・準備し、日常の実務管理を事務局長に集中させたのが、むしろ良かったのかもしれません。

加賀全国研の宣伝活動の一環として、北陸会をPRしようと取り組んだのが税経新報への投稿でした。とりわけ2011年7月号では「北陸会特集」にまで編集していただき、北陸会にとって歴史的な出来事となりました。

ここでの最後になりましたが、忘れてはならない新しい取組があります。それは静岡会との協力運営を実現したことです。共催とまではいえないかもしれませんが、全国研本番では、北陸会と一緒にスタッフとして3名に参加していただきました。これによりスタッフ総数は32名となりました。

そもそも事の発端は、全国会議終了後に小さな会が共通してもつ悩み・・会員が少ない、活性化しない・・などを率直に出し合い、その改善の第一歩として全国研を活用しようとお互い考えたことからです。一般参加者としてではなく、スタッフとして参加するほうがより新人会の良さが感じ取れると思いました。その後は、会議後に報告しあったり、メールという便利なツールのお陰で、ある程度の情報・進捗度の共有は出来たのかと思います。
キャラクターについて

キャラクターに関して一言。大きな集会にとって、集会の雰囲気を高め、後々まで記憶に残してもらうには、キャラクター作成は大事だと思いました。「北陸・加賀」と「税理士」のイメージを併せ持つキャラクターとして、加賀藩御算用者が映画化された「武士の家計簿」が参考になりました。

加賀・前田利家が、税理士の必需品・電卓に変えてソロバンを片手に高く掲げるポーズ・・・・、プロの方に安価な料金(10,500円)で作成していただいたとはとても思えない出来栄えではないでしょうか。これも感謝です。

会場に張り出された歓迎ポスター →
キャラクター
ホテル "ゆのくに天祥"

ホテルの選定では、千葉全国研終了直後、会場変更を余儀なくされ多少心配はしましたが、第2候補であった "ゆのくに天祥" にすんなり決まりました。全国研終了まで、ホテル営業部長さんには、こちらの方が申し訳ないと思うくらい親切・丁寧な対応をしていただき、選んでよかったと感謝しています。
あとで聞いて複雑な思いになりましたが、震災後は、連日 " ゆのくに天祥 " さんは満員状態だそうで、申し訳なさそうにおっしゃっていました。「参加された皆さんには大変ご不便をおかけいたしました」と部長さん。ちなみに部長さんは全国表彰された営業マンで、その力量はなかなかの方でした。
加賀全国研はじまる

全国研当日がやってきました。前泊スタッフ11人を初め、初日の9日午前10時に全スタッフが集合しました。会員以外は、当日に各人分担の仕事手順が責任者より説明されます。空港・JR駅の出迎隊が慌しく出動。
受付班も準備に取り掛かります。受付がスムーズに行なえるか、ホテルのテーブル数に限りがあるため名札を並べられず、今回は参加者自身に分科会会場で書いてもらいます。これが混乱しないか一番の心配です。
神戸会の到着を皮切りに、各会が順次無事到着。何とか、皆さんを受け入れることができました。しかし、今回の東京会などツアー参加の場合には、団体受付が良かったかもしれません。
分科会は全国研の柱

新人会の分科会は全国研の一番の柱です。今回は時宜にあったテーマばかりです。開催担当会として、発表会の方が気持ちよく研究発表が出来るよう、運営面からサポートすることが大切な役割ですが、いざ本番となると予想外のことが起こるものです。

開始直前になって、ある会の配布資料の一部が見当たらないとの連絡。しかし何とか届けられ事なきを得ました。
実際の参加者数と事前予約数とに大きなずれが生じ、資料が足りなくて急遽増刷したところや、また逆に、会場の座席にかなりの余裕が生まれてしまったところもありました。
施設面では、分科会会場をすべて集中させたことは好評だったようです。空調設備をはじめ、各種器材も大きなトラブルもなく対応できたようです。ドリンクとおしぼりも喜ばれました。

ただ和室会場では、靴の履き替えが大変だったようで、入口が煩雑になるかと躊躇したのですが、履き替え用のスリッパ類が必要だったかもしれません。

長時間の研修・討議お疲れ様でした。発表者の皆さん、本当にご苦労様でした。
第4分科会(神戸会)風景
第4分科会(神戸会)風景
懇親会で絆を深める

温泉へ入浴後の六時半定刻に、恒例の懇親会が清家理事長、寺前加賀市長のご挨拶、彼谷北陸会会長の乾杯の音頭により始まりました。加賀料理にお酒飲み放題も手伝ってか、開始早々あっと言う間に会場は、絶好調な雰囲気となりました。全国の会員さんを迎え、北陸の銘酒に酔いしれていただきたかったのですが、ホテルでのお酒の持ち込みはかなりハードルが高く、ごく一部しか実現できなかったことが残念です。

先陣をきってのアトラクションは、加賀・浅野太鼓の和太鼓グループ「藍(らん)太鼓」です。女性3人によるパワフルな創作太鼓は、お酒に酔った会場全体に響きわたりました。実は演奏前、佐渡の鼓童公演を多くの参加者が鑑賞している、と知った彼女たち。負けずに、ファイト!で頑張ってくれました。
トリは「楽屋姫」の男性3人のメンバーです。" かぐや姫"からもじったユニークな名前ながら、歌唱力・演奏力は確かなものでした。
往年のフォークソングから、笠木透さんの「わたしの子供たちへ」、東北を励ます「ふるさと」や「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」etc、参加者とともに大合唱となり会場が一つの絆で結ばれました。その中、東北会の中川会長より挨拶を頂き、いっそう心つながる素晴らしい懇親会となりました。
懇親会風景
懇親会風景
皆さん、楽しんで頂けましたでしょうか?
実行委員会では、医療専門スタッフも待機し救急体制も準備していましたが、取越し苦労に終わり何よりで、ひと安心しました。

ただ参加者の方より、音響が不十分で聞き取りにくかったとの指摘がありました。楽屋姫さんも自前で有料大型スピーカーをレンタルされ、リハーサルでも十分にチェックされていましたが、予想以上に会場が広かったと謝っておられました。とりわけ会場の後部席で集中しづらかった、東京会、大阪会の方々等には改めてお詫びいたします。
記念講演 "期待に反してよかった" の声

記念講演は富山国際大学教授大谷孝行さんに「笑いの効用」を講演していただきました。
私たち税理士の仕事は、いわば毎日が緊張の連続で、心のゆとりやユーモアが忘れがちになるのではないでしょうか?
そんな思いから大谷先生のお話が皆さんの、クライアントとの関係や事務所運営・経営、あるいは家庭でのヒントや潤滑油になればとの思いから企画しました。偶然にも震災があり、よりタイムリーなテーマとなった気がします。

「案ずるより横山やすし」「にもかかわらず笑うこと」・・忘れられない言葉となりました。
二日酔いの方も楽しく聞けたのではないでしょうか。
大谷先生の講演の様子
大谷先生の講演の様子
全体会の方針・決議は "活動の羅針盤"

全体会前に関西テレビで放映された消費税報道のDVDが上映され、続いて大塚洋美副理事長の司会のもと全体会が進められました。議長団選出後、清家裕理事長の挨拶と2010年度活動報告がなされ、それを受けて8名の会員より発言がありました。発言した会員より「脱原発」の緊急決議案が提案され、全員の拍手をもって採択されました。

続く特別決議は、東京会平石共子会員により「国税通則法に関する決議案」、名古屋会大橋泰子会員により「税と社会保障に関する決議案」がそれぞれ読み上げられ、同じく全員の拍手を持って採択されました。
副理事長の1名増加により体制が強化された新役員の方が紹介され、新役員を代表して引き続き理事長を務められる清家理事長から決意を込めた挨拶がされました。 来賓としてお越しいただいた平野豊北陸税理士会会長よりご挨拶を頂き、なかでも韓国の税務行政のお話は、参加者も興味深く聞き入りました。

最後に機関誌表彰で2名の会員が表彰を受けたあと、壇上には今回の全国研を担当した北陸会と次回開催の名古屋会の会員が登壇し、加賀から尾張・名古屋へバトンが引き渡されました。
全体会での清家理事長の挨拶
全体会での清家理事長の挨拶
終わって思うこと

 いくつかの反省点・教訓についてはこれまでに述べましたが、最後に今回の分科会で生じた問題と意見を追記したいと思います。

一つ目は、一部分科会の当日参加者数が事前予定数と大きく違ってしまったことです。分科会への参加予定者249名(北陸会・静岡会除く)のうち40名(16%)が事前集計では未定者となっていました。開催担当会では、これも考慮した上で会場毎の座席数を決定しその旨発表会へ直前報告もしましたが、当日は未定者だけでなく事前予定者でも移動が起こったようです。事前から未定者を極力なくすとともに、事前予定者は原則変更不可とし、当日は会場の状況等により一部希望者の変更を認めるなどのルールがあっても良いのではないでしょうか。担当会も準備しやすいはずです。今回は複数の会場で資料が不足し、参加者の皆さんにはご迷惑をおかけしましたが、用意すべき資料部数も会場の座席数が目安となれば過不足は基本的に改善されます。または、初めから会場の定数を決めて予約を受け付ける方法もあります。

二つ目には、参加できなかった分科会資料がほしいとの要望が毎年のように出されるということです。このような要望は至極当然とも思えます。希望者全員には対応できないかと思いますが、各地域会へは当日配布された全資料を提供してもよいのではないでしょうか。これにより全国研への参加者が大きく変動するのではないかといった心配もない気がします。多くの方は懇親も大きな目的なのだから・・・。

三つ目は、分科会の進め方についてです。各分科会は発表会が中心になることは間違いないのですが、やはり、進行上調整役が必要なのではと強く感じました。討議中に軌道修正の必要が生じた場合、発表者では遠慮から難しいときがあったり、客観的立場から時間の配分などをチェックできたりもします。

また、発表と討議時間のバランスも重要です。発表ばかりに偏りすぎず、討議も何点かに絞ったり、テーマによっては一定の結論まで導き出す集中討議方式がよいかもしれません。継続的なテーマのときは、単発で終わらぬようにステップアップさせていく階段式討議となるような終わり方もある気がします。そこで事前に発表会の責任者と全国会とが一同に会して進め方を研究することも重要な気がします。

税経新人会会則第2章「目的と事業」第4条の(1)には、「専門家として必要な理論と実務の調査研究活動」が掲げられていますが、全国研を通じて会員の専門家としての社会的地位と専門能力の向上だけでなく、若手を中心とした会員拡大にもぜひ結びついてほしいと願っています。
北陸会もきっとこの経験が会の活性化と拡大の大きな力となることでしょう。

最後に、今回の全国研では皆さんにアンケートをお願いしましたが、たくさんの方からご協力を頂きました。北陸会へのご祝儀的な回答もあるかとも思いますが、何とか及第点をいただけたのではと、スタッフ一同やり遂げた充実感でいっぱいです。

参加者の皆さんからの暖かい心も名古屋会の皆さんにお渡しし、来年は尾張・名古屋で元気にお会いしましょう。
本当にご協力有難う御座いました。
(きた・まさゆき)
アンケート集計結果(回収総数114)
◎ 受付について
スムーズだった93
まあまあ18
改善の余地あり 3
◎ 分科会について
良かった86
まあまあ25
期待外れ1
その他・無回答 各1
◎ 懇親会について
良かった92
まあまあ20
良くなかった1
その他1
◎ 記念講演について
良かった96
まあまあ17
良くなかった0
その他1

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