論文

  > 第47回加賀全国研究集会 分科会・懇親会・記念公演そして全体会
> "加賀全国研物語" 総集編
東日本大震災と国税滞納処分
東京会 飯島 健夫
はじめに

国税通則法第46条第2項第1号の規定には「納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け」た事実がある場合において「納税者の申請に基づき、1年以内の期限を限り、その納税を猶予することができる」ことになっている。

東日本大震災から6か月になる今日、警察庁調べで死者・行方不明者20,208人、避難生活者58,922人に及んでいる。

国税庁は国税通則法第11条に基づき、災害地である青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県に対し国税に関する申告・納付等の期限の延長の措置をとった。

これにより、被災地域に納税地を有する納税者は、すべての税目について申告・納付の期限が自動的に延長されることになった。

3月15日の国税庁告示では「その期限を別途国税庁告示で定める」としていたが、青森、茨城の2県は平成23年7月29日、岩手、宮城、福島の3県は平成23年9月30日と定められた。

なお、被害が甚大であった石巻市、大槌町、飯館村など岩手、宮城、福島の10市12町3村はいまだに期限が指定されていない。期限が指定されていないということは、3月11日以降に到来した申告・納付の期限は未定ということになる。

このように、申告・納付期限については国税通則法の規定により国税庁は一定の措置をとったが、これで徴収関係は解決されたとはいえるだろうか。

例えば、個人事業者の消費税の本来の納期限は3月31日であるが、それが9月30日、または未定といっても、未だ大震災から復興されていない現下の経済情勢の下で、納税者に納付資力が回復されているかどうかである。すなわち個々の納税者が延長された納期限後に納付できる状態になっているかどうかである。

また、大震災前に滞納していた国税の納付についてはどのような措置をとるのか。
このような事柄への措置は、本来は震災特例法に盛り込むべきと考えるが、去る4月27日施行の震災特例法では、徴収関係については住宅・家財に被害を受けた者への租税の減免、徴収猶予の規定があることを述べているにすぎない。

ただ、国税庁は4月5日「東日本大震災により被害を受けた滞納者に対する滞納整理について(指示)」という通達を発遣している。
通達では滞納者を次のように定義してそれぞれの対策を指示している。

被災滞納者: 東日本大震災により被害を受けた滞納者(震災により被害を受け、震災後に滞納となった納税者を含む)
延長適用者: 青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県に納税地を有する納税者
延長適用滞納者: 上記5県に納税地を有する滞納者及び延長期限経過後に国税が滞納となった延長適用者

通達では上記定義の三者には「適切に納税緩和制度を適用」するとして、国税通則法第46条の納税の猶予の要件、つまり申請期限、猶予期間、担保の徴取について柔軟な対応を見せている。

また、国税徴収法第151条の換価の猶予について、延長適用滞納者については「まずは納税の猶予の適用を検討し、納税の猶予を適用できない場合は換価の猶予の適用を検討する」としている。

国税通則法第63条第6項第3号には「震災に・・・より、国税が納付できない場合、事由発生日(大震災日)からその事由の消滅後の7日までの期間は延滞税の免除ができる」とあるが、これについても延長適用滞納者については「3月11日から延長期限日までは延滞税を免除して差し支えない」としている。

さらに、延長適用滞納者の滞納額100万円未満は「調査を省略して滞納処分の停止をして差し支えない」とするなど、滞納処分の停止についても、延長適用滞納者に対しては現況把握、財産調査等の簡略化を指示している。また、100万円以上の滞納事案の滞納処分の停止調査である現況調査、財産調査は「税務署長が認める方法」でよい、としている。

筆者はこの通達を情報公開法により全文9ページの開示を受けた。いうまでもなく、通達は納税者や税理士を拘束するものではないが、このような措置(指示)が、我々税理士や納税者に広く周知されていないこと自体、問題と考える。

新人会会員の諸兄姉、特に被災地の納税者を受け持つ諸兄姉に広く理解してもらえるよう全文9ページを公開したいと考えたが、紙面の都合上、新人会のホームページに掲載することにしたので、下記文書をアクセスしていただきたい。

(いいじま・たけお)

平成23年4月5日徴徴2-9「東日本大震災により被害を受けた滞納者に対する滞納整理について」(指示)

▲上に戻る