住基ネットで使われている住民票コードは、「住民本人と行政機関のみが知りうるような性格の番号」である。本人と関係行政機関のみが知りうる番号は、納税者整理番号、パスポート番号、運転免許証にもついているが、本人と関係行政機関しか知らず、他人にはわからない。 これに対し、民主党政権が進めている共通番号制は、官民にまたがり、かつ、他分野で共用する汎用の番号である。本人と関係行政機関以外の第三者も容易に知りうるような性格の番号である。 共通番号は、「目に見える番号(可視的な番号)」として使わざるを得ず、番号付き情報が行政機関や民間機関のデータベースに蓄積されていく。住基カードは、ほしい人だけが任意で取りに行った。共通番号付国民IDカードが導入されたら、全ての国民に発行、交付されるという。そしてそれを携帯しないと、一定金額以上の取引や金融機関での口座開設、雇用契約等ができなくなるおそれがあるという。
松田コーディネーターの司会で討論に入った。共通番号、国民IDのテーマは税制プロパーの問題ではない。幅広い分野にまたがるため討論でも様々な意見が出た。国家は、あらゆる情報を集めることができる。例えば診療履歴、犯罪歴等があげられるが、悪いことをしなけりゃいいじゃないか、という意見がある。 石村教授は個人情報を一生涯管理して逃げられない社会にすることは、国民の幸せにつながるか。人はだれしも過ちを犯しながら成長していくのであり、過ちを一生涯管理し続けることが人権を護ることになるかと、すばらしい提起をされた。 また、スウェーデンのように、既に共通番号が導入されている国の現状を問われて、高福祉高負担の国では全ての国民が満足している訳ではなく、窮屈な社会だから闇経済がはびこっているとも指摘された。また、共通番号が税務行政に与える影響について、浦野教授は、消費税では取引のつどインボイスに共通番号を記載しなければならず、課税売上はすべて把握されてしまう。番号を書かないと書類不提示犯にされてしまうだろうと回答した。
(しみず・ひろたか)