論文

> 危険な普天間基地は即時撤去を!
> 米海兵隊普天間基地の即時返還を求めて
【特集  沖縄・米軍基地問題】
沖縄の米軍基地と普天間移設問題
沖縄会  知念  正雄  

沖縄米軍基地の成り立ち

日本の支配層が引き起こした太平洋戦争はアジア諸国と日本国民に様々な悲劇をもたらし、沖縄県においては米軍の上陸による国内初の地上戦となり、県民が巻き込まれ、多くの生命を奪われ、住居をはじめ形あるものすべて焼き尽くされた。

県民は難を逃れるため沖縄本島北部や南部の山野や壕に避難を強いられることになった。米軍の艦砲や機銃掃射などをくぐって生き延びた者は米軍収容所に入れられ、自由な移動が禁止され、拘束されることになった。

1945年6月沖縄での組織的戦闘は終結し、米軍に占領支配され、避難していた人々が避難前の居住地に戻ることが許されなかった。米軍が1947年になって漸く郷里の町村への帰還を認めたが、少なくない旧の集落地が既に米軍基地として鉄条網で囲われていたため、多くの人たちが帰りたい所へ帰れない事態となっていた。

沖縄を全面占領した米軍は、住民の避難中(移住後奪われたところもある)に個人有地を奪い、広大な基地を建設したのである。その結果が65年経っても土地を返さず、国土の1%にも満たない沖縄県に米軍基地の75%を押し付けられ、日常的発生する基地被害と犯罪に県民が苦しめ続けられているのである。沖縄県民は「本土防衛」の盾にされた地上戦、サンフランシスコ条約で見捨てられた27年の米軍直接支配、祖国復帰後の基地優先策による基地被害と事件事故等々、日米両政府の沖縄に対する施策に強い憤りを持っている。

大学構内へのヘリ墜落事故を起こした世界一危険な普天間基地がまさしくそうであり、極東一の空軍基地である嘉手納基地など、県民が望んで造った軍事基地など全く無い。
米軍基地の役割

岡田外務大臣が沖縄の海兵隊駐留は日本防衛にとっての抑止力であると述べている。果たしてそうだろうか。過去の沖縄の基地がどのように使用されてきたかを検証すれば明らかではないか。

かつて嘉手納空軍基地から飛び立ったB 52爆撃機がベトナムを爆撃したように、沖縄の米軍基地が他国の攻撃に使われることは、戦争の無い平和な島沖縄を願う県民の心を踏みにじるものである。沖縄の基地はアメリカの世界戦略に組み込まれ、日米安保体制の下でアメリカが自由に使用できるように求めきたものである。

米英の首脳がフセイン政権の大量殺戮兵器を云々してはじめたイラク戦争に、沖縄駐留の海兵隊員が派遣されている。このようにアメリカの戦争で突撃(殴り込み)の役割の任務を負うのが海兵隊で、他国から日本を守る兵力ではない。外務大臣の「抑止力」云々は普天間移設を沖縄県内にたらい回しする口実作りであり、全く認められないもので県民にとっては許しがたいものである。
普天間移設と県民の闘い

普天埋移設めぐる沖縄県民の闘いが今まさに正念場を迎えている。鳩山民主党政権は2010年5月には「アメリカ」と「沖縄県」に理解が得られるような結論を出すと表明しているからである。

鳩山総理大臣(当時は党代表)は先の衆院選の遊説中に沖縄県民の前で「普天間基地移設は国外か県外、最低でも県外」と、県民が最も注目した「普天間」について表明している。沖縄県における選挙の結果は小選挙区で辺野古埋め立て容認派が全員落選し、比例区も県出身者の容認派の当選は無く、辺野古沿岸埋め立てを進めた自公政権の敗北となった。

ところが政権交代をするや否や、官房長官、外務大臣、防衛大臣の関係閣僚は「地元の民意に拘束されない」「マニフェストに国外県外は書いてない」「現行案も含めてゼロベース」云々している。さらに総選挙後に実施され、地元名護への基地移設に反対の候補者が当選した市長選挙の結果さえ無視する言動を繰り返し民主党支持者さえ失望させている。米軍基地に長い間苦しめられた沖縄県民は選挙の争点となった「普天間問題」での公約違反を絶対に許さないだろう。

鳩山連立政権は沖縄県民に具体案を示すことなく、キャンプシュワーブ(辺野古)陸上案と徳之島(鹿児島県大島郡)への分散移転、勝連半島(沖縄県うるま市)沖埋立案でアメリカと協議していると報じられている。勝連半島埋立は巨大な基地建設で、さらに沖縄の基地負担と増大させる最悪なものである。この政府の動きに早々と徳之島の移設反対島民大会、うるま市民の反対集会、名護市長の反対表明があり、沖縄県においては4月25日10万人規模の県民大会が計画され、保守革新を越えた県民ぐるみの取り組みとなっている。
普天間基地は国外か県外かではない

鳩山政権は日本の外交防衛について「日米同盟が機軸」「沖縄駐留の海兵隊は抑止力」と国会答弁等で繰り返し述べている。この立場は歴代自民党(公明)政権と変わらず、辺野古移設が決まってから13年間も解決できなかったように、民主党中心の連立政権でも普天間基地問題は一歩も前進しないだろう。

政府が日本の安全保障(防衛)のためだから全国民が均しく負担すべきと煽っても、移設の候補地では反対の声が大きくなるだけである。沖縄の米軍基地被害の現実を見れば移設候補地が拒否するのは当然であり、普天間基地は移設ではなく、直ちに閉鎖し無条件撤去すべきである。基地被害のない平和な沖縄を願う県民と武力で世界覇権を狙うアメリカの双方が理解する普天間移設などあり得ないのである。
憲法9条と米軍基地は両立しない

憲法9条は日本が太平洋戦争で幾千万のアジアの諸国と自国民に不幸をもたらし、その反省から制定されたものである。条文は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力による行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。(第2項略)」と国民の進むべき道を示している。これに反し歴代自民党政権はアメリカの要求で自衛隊(警察予備隊→保安隊)を創設し、日米安保条約の下でアメリカの戦争に協力し、自衛隊を海外派兵するなど憲法第9条を辱め続けてきた。

この戦争放棄の条項を持ちながら外国の軍隊を駐留させ、他国への侵略行為に自国の領土を使用させることが許されるか。

普天間基地の無条件撤去を求める宜野湾市民と沖縄県民に、「米海兵隊は日本を守る抑止力」云々する鳩山政権に道理はあるのか。移設先が無ければ「普天間基地は現状のまま継続使用になる」と恫喝し、新たに巨大な基地(勝連半島沖埋立)建設を企むことは言語道断である。ここに県民要求を無視し、県民の犠牲を省みない歴代政権が持ち出す「抑止力」があり、県民との相容れない矛盾となっているのである。

沖縄は鳩山政権の背信的な言動に怒り、普天間基地撤去と新たな基地建設に反対し県民ぐるみで立ち上がっている。(沖縄税経新人会は4.25県民大会に会旗を高く掲げ全会員が参加します)

(ちねん・まさお)

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