年次有給休暇に関するトラブルといえば、退職時に労働者が残日数全部を請求してきた場合に、会社が有給休暇を認めず、その結果としてトラブルになるケースは多い。年次有給休暇は要件を満たせば自動的に発生するものであり、会社は従業員から有給休暇の請求があれば認めなければならない。ただし、使用者側にも請求された時季を変更することができる権利があるので、繁忙期などに請求を受けた場合には他の日に変更することができる。しかしながら、退職間際に請求された場合には、変更してもらおうとしても他に日がないのだから、請求を受けなければならない。ただし業務の引継ぎなどで会社側が出社を要請し、その結果として退職日までにどうしても消化できなかった年次有給休暇がある場合には、会社は年次有給休暇を買上げることができる。
パートタイマーにも週の勤務日数に応じて年次有給休暇が付与されることを知らない経営者も多い。パートといっても例えば週に5回、1 日6時間勤務している勤続8年のパート社員の場合、出勤率要件も満たしていれば、正社員と同じように40 日分(消化日数0の場合で繰り越し分も含む)の年次有給休暇を保有していることになる。仮に時給1,000円とすると、合計24 万円分にもなってしまうことは理解しておきたい。いずれにしても年次有給休暇を計画的に取得してもらえるように、会社としても体制を整えていかなければならない。また場合によっては労使で協定を結んで年次有給休暇を計画的に付与するのも1つの方法である。
最後に労働基準監督署の立ち入り調査について簡単にふれておく。調査には定期的に行われる定期監督と労働者からの法令違反の申告を受けた場合に行われる申告監督、定期監督後や申告監督後の指導後の状況確認のための再監督の3つの種類がある。近年は、申告監督が多く、これまでにあげたサービス残業代の請求や解雇予告手当未払いなどは申告により、法令違反が発覚するケースが多い。労働基準監督署からの出頭要請や現地に調査が入ることになった場合には、まずは専門家に相談し、今後の対策を一緒に検討するのがよいだろう。
そもそも労使トラブルが起きる背景には、労働環境や職場の雰囲気に問題があるケースも多いので、そのあたりをもう一度チェックし、経営者側は、働く労働者の気持ちになって考えてみることも重要ではないだろうか。 |