実務の現場から立場を変えて検証を試みる。 |
(1)適用例の検証 |
わが国の法令で税負担を軽減する規定に、税額控除等の控除方式と税負担を免除する免除方式がある。今回は免除方式の適用例を検証する。法令で「免税」の用語を使用した例は、措置法第25条・「免税対象飼育牛」がある。条文は「所得税を免除する」である。「○税を免除する」適用例は消費税第7条や酒税第29条・関税定率法第14条等であるが見出しも「輸出免税」「無条件免税」等である。免税の派生語として免税所得・免税取引、輸出免税、免税事業者等がある。
税額の免除の適用例では災害減免で、条文は、「所得税額を免除する」である。消費税第9条は納税義務の免除とは「一旦納税義務が成立し、納めるべき税額の免除」が文意である。税負担の免除制度においては免税とは「○税を免除する」規定のみであって、税額の免除は一旦納税義務が成立するので免税と解することは妥当な解釈であろうか。
免税点とは免税の用語であるがこの意味は「課税することができない」との条文であり免除規定ではなく課税除外の適用である。納税義務の免除をあえて、表現すれば「免除点」規定である。15年改正は免除点の引き下げとすべきであった。又、用語の意味から「納税義務を免除する」とは、納税義務があるから納税義務の免除と表現したもので、仮に、納税義務がなければこの表現はありえないと解するのが妥当な解釈ではないか。 |
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(2)国税通則法と消費税法の関係 |
国税通則法と消費税法は特別法と一般法の関係であり、通則法の解釈が上位解釈で、消費税法が組み立てられている。消費税の納税義務の成立は商品の販売と同時に納税義務が成立する(通則法第15条2)。第4条で対価を得た譲渡等は消費税が課され、販売と同時に納税義務が成立する。第9条は「〜納税義務を免除する」であり、通則法第15条2で発生した税額を免除すると解するのが妥当な解釈ではないか。 |
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(3)事業者は納税代行機関 |
消費税は第6条の非課税以外は全て課税対象である。小規模事業者も課税商品を販売すれば
税が課され、販売と同時に納税義務が成立する。
上乗せされた税の所有権は国庫であり、納税義務者である事業者は納税代行機関である(当時の主税局長水野勝・わが国における一般的な消費課税の展開より)。納税義務は第9条で国庫所有の税が免れれば免除益の発生である。販売利益も価格上乗せであるが、上乗せ分の利益は事業者の所有であり納税義務の成立は暦年であり消費税の上乗せ税金分との性格が違う。 |
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(4)立法者の立場 |
消費税の課税理論があり、それを作文した人がいる。課税理論をもれなく表現するに単語を選び法令用語でつなぎ、作文のルールに従い簡潔な文章で表現する努力をしている、所定の手続きを経て成立する。そのルールは課税権者、納税者にとって共通のルールである。立法者は解釈されることを意識して主語プラス述語、目的語・条件句・装飾句・但し書きなどを加えたものである。しかし、課税理論を文字で表現するには限度があり、そこに解釈が必要となるが、解釈は目的・趣旨が第一、用語は二の次である。
用語は趣旨に合わせた意味内容となる。 |
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(5)比較税法の視点 |
比較憲法に準じ、消費税法・旧物品税法及び売上税を比較し、その違いを検討する。共通する事項は事業者が納税義務者であるが、事業者に税負担を求めたものではなく販売する商品に税負担を求めたもので、いずれも納税義務免除規定はある、事業者は「納税代行機関」である。違いは税の上乗せの仕組みである。旧物品税は特殊用途免税で購入者の資格証明で税が免除された。売上税の場合、小規模事業者は上乗せ義務の免除は税額票番号の交付が無いので実際の免税事業者である。
消費税の場合、小規模事業者は上乗せ義務の免除手続は無く、事実を以って免除される。
消費税の非課税以外は課税対象で、納税義務だけが免除されている。消費者が負担した税金分が事業者の手許に残る仕組みで免除益の発生であると解することが妥当ではないか。 |
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(6)判定用語の解説 |
消費税の課税判定用語に、課税取引・非課税取引・不課税取引・免税取引等がある。この用語の意味を今一度点検した。免税取引とは、具体的には輸出や輸出類似取引のみである。「消費税・課否判定早見表・石山弘・金井裕仁・共編・財団法人大蔵財務協会15頁」 |