政府税制調査会は今年6月、「個人所得課税に関する論点整理」を発表した。
その内容は、2000年7月の中期答申「わが国の現状と課題−21世紀に向けた国民の参加と選択」以降応能負担原則を無視した国民大増税路線のもと、個人所得課税の具体的な方向を示したものとなっている。
ここ数年、配偶者特別控除(上乗せ部分)や老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小など主に高齢者に対する課税が強化されてきたが、今回の論点整理ではサラリーマンをはじめ全ての勤労者への大増税が計画されようとしている。
給与所得控除について「経費が適切に反映されるような柔軟な仕組みを構築していく」との表現であるが、マスコミでは実際には給与所得控除の大幅縮小計画と報道され、定率減税の廃止、配偶者控除・特定扶養控除などの廃止計画を含め「年収500万円で30万円増税?」(東京新聞)とも試算されている。
その他、退職所得控除の引下げ、不動産所得や一時所得の所得区分の廃止など増税計画がめじろおしである。
さらに、事業所得については「実額での必要経費は正しい記帳に基づく場合にのみ認めるとし、そうでない場合には一定の概算経費のみを認める」と、力の弱い事業所得者については押し付け増税も検討されている。
しかも、国民大増税計画はこれだけでなく、すでに政府税制調査会は消費税の税率二桁を宣言し、税率引上げの前提条件として免税点の引下げや総額表示の義務付けなどが実施された。
これらが全て強行されると年30兆円近い巨額増税《所得課税17兆円増(朝日新聞)、消費税12.5兆円(1%で2.5兆円)》と試算され、家計と経済に大打撃を与えることとなる。
この間の政府税制調査会の議論は、個人所得税・住民税の大増税、消費税率の二桁への増税が中心となっており、消費税の導入以降引下げられてきた法人税の基本税率や所得税、相続税の最高税率の引き上げについては全く触れようとしていない。
担税能力のあるものにそれなりの負担を求めること、最低生活費に税金をかけないことは、憲法にもとづく生存権の保障、国民の福祉増進の理念に沿うものであり、近代国家における租税のあり方の原則である。
私たちは理念なき国民大増税路線、個人所得課税や消費税の大増税計画に反対し、憲法の要請する応能負担の原則にもとづく税制を強く求めるものである。
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