税経新人会全国協議会研究部主催の西日本シンポジュームは、11月27日(土)午後1時から5時まで、大阪市・東淀川勤労者センターで開催、西日本各地域会から90名が参加しました。
25日、政府税制調査会が17年度税制改革に関する答申が発表され、2日後のシンポジュームであり、その内容にも触れながら、税制改革について約2時間の中身の濃い講演でありました。
まず次の三点についての問題提起があり、それぞれについて解説された。
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税制改革を検討する視点―特に法的視点とは何か |
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最近の税制改革の特徴と問題点 |
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近時の特徴的な裁判例にも言及 |
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1966年以降の建設公債の発行以後、健全財政主義の原則は大きく崩れていく。単純な家計との類推は適切でない。国家共同体は何をするためにあるのか、構成員である国民はその費用をどのように負担するのかという問題提起があり、敗戦と憲法原理から人権保障と応能負担が基本的に導かれることを強調。 |
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抜本的税制改革の背景、理念は、1980年代からの新自由主義、新保守主義が台頭し、1986年のレーガン税制改革、イギリスのサッチャーイズム、日本では中曽根内閣からその端を発する。経済的強者のより自由な経済活動の拡大を、経済的弱者は国に頼ることなく自己責任をという思想、結果の平等ではなく、機会の平等を強調しだした。 |
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抜本的税制改革の基本的な方向とその是非―新自由主義の進行と9.11、
消費税への依存方向、所得から消費に担税力の指標の移動
累進性の緩和
法人税の軽減(法人活動の自由の拡張)
相続税の負担の軽減等々。税調の位置づけ、税調の軽さ、経済財政諮問会議の政策的誘導により、政府税調の答申は軽くなってきているのではないか。 |
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税制改革の理念:その歴史性、規範性について、『公平』『中立』『簡素』をその理念としているが、『中立』の意味、その法的基礎は何か、税制を評価、判定するための法的基準といい得るのか。租税特別措置の整理をいいつつ、他方では金融所得一体課税の整備は整合性があるのかどうか。
『簡素』の意味は:その法的基礎は何か、税制を評価、判定するための法的基準といい得るのか、という問題。租税法律主義(憲法84条)は勿論のこと税制の実体(負担の配分)を規律する法的基準として、課税の平等(憲法14条)、財産権の保障(憲法29条)、生存権の保障(憲法25条)などを基本であるというべきであろう、と憲法の観点からの解明をされた。 |
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また、税制の手続面、訴訟面における制度的整備を図るべきだと指摘。特に行政事件訴訟法の改正(17年4月施行)−義務付け訴訟の拡大、被告適格化の明確化、訴願期間の延長などの問題。しかし、税務訴訟の抜本的な課題は例えば二つの前置主義、訴訟における総額主義など手つかずの状態であり、問題である。 |
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所得税の問題では、広く課税、配偶者に関する控除や給与所得控除など諸控除を見直すとして、課税人口の拡大の方向。所得税の基幹税としての機能を回復させることがいいのかどうか。所法56条の問題、夫・弁護士、妻・税理士事件、立法趣旨・目的が明確でない、法改正の必要性がある。 |
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法人税の改革の特徴は、税率の引下げのほか組織再編税制、連結納税制度、法人形態による経済活動の展開を支援する税制の方向。法人擬制説の問題、法人の実体的把握とその税制への反映等々。 |
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消費税の問題点、否定できない逆進性、総額表示の問題、誰が消費税を払うのか(納税義務者)の不明確性、益税論の問題性、法律上転嫁義務はない、預り金・預り金的性格、法律上はない。一千万円に引下げ仕入税税額控除否認の問題は深刻となる。インボイスへの移行の問題点などなど解明された。 |
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最後に、税理士が実務を通じて問題意識をもち、立法提案することも必要であるとして、締め括られた。 |
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後半の討論は、清家副理事長の司会で10人の会員の発言があり、講演の中身をさらに深めることができました。
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