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「税の不公平」といったときに漠然としたイメージはあるが、具体的にピンとこない人が多い。その理由は、応益負担、水平的負担など一般人には意味不明な文言で説明がされるからに他なりません。本書は租税原則を簡単に説明しながら、わが国の税制が抱える奇怪な現代病について幾つかの例を挙げながら解説し、その処方について記されています。特に我々の身近にありながら気づかなかった問題を理解することに優れています。
タックスヘイブンの存在が広く一般国民に明らかとなり、やっと新自由主義政策によって消費税の導入と拡大、所得格差の拡大が話題となってきました。そこで本書ではまず消費税の本質に迫り、大企業ではなく、日本国憲法に寄り添う課税の提言、応能負担の実現について、幅広くわかりやすく解説しています。
また、導入されたばかりの共通番号(マイナンバー)制度の欠陥と将来の懸念については刮目すべき指摘があります。憲法の保障する労働基本権を勝ち取った法律闘争を例に挙げ、法律が成立したからといって政府の管理支配下におかれることは、法律が施行されてしまったとしても、形式上であっても単純に法律に従うといった専門家の姿勢は批判されるべきであり、政府の管理体制を支えることに繋がることを指摘しています。中途半端な法律家への強い警鐘といえます。さらに共通番号制の形骸化についてなど具体的な対応についても触れています。
税理士の役割について、著者の以前からの主張である「納税者の権利」を守るべきプロフェッショナルとして、独立した公正な立場というものを確立する必要性についても述べられています。また近い将来起こりうる問題や、税務署との紛争解決の為のヒントとして、いくつかの具体例を示しており、本書が貴重な資料となると考えられます。
現代の税制については、憲法を念頭に置いた設計が必要であるのだが、「支配階級としての大資本家の私的思惑」により構築されている現状に警鐘を鳴らし、日本版タックスヘイブンもその産物であることを指摘しています。 |
(さえき・かずまさ) |
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