去る1月22日、午後2時から3時25分まで、参議院議員会館会議室で、財務省主税局税制第一課課長補佐の神谷信氏に、福島原発事故被害・完全賠償請求中小業者連絡会(完賠連・自由法曹団、税経新人会全国協議会、全国商工団体連合会)としての別紙要請を行い、出席者からおのおのの立場から非課税にすべきとの主張をし、財務省としての考えも聞いた。
この会合は、大門実紀史参議院議員(日本共産党)の仲介により開かれたもので、運営は大門議員の司会で進行された。出席者は、税経新人会全国協議会は東京会5名、茨城会1名、関信会1名の計7名、全商連は本部から3名と商工新聞記者1名、地元福島から県連会長・事務局長以下4名、計8名であった。
冒頭、佐伯正隆前理事長から別紙要請書に基づいて、完賠連としてのこれまでの活動の経過、賠償金非課税の実現のための現地での各団体への申し入れ行動などを説明し、本日改めて税制の立案担当部署としての財務省に緊急申し入れをしたい旨を説明した。
これに対して、神谷氏は
- 過去や現在の同様なケースを比較してそれとのバランスということにどうしても拘束されること、
- 私法上の契約や事実関係に基づいて税法上の評価をして税法への適用の是非を判断していること、
などから今回の賠償金を非課税にすることは難しいと考えていることが述べられた。
また過去の事例を取り上げ
- 水俣病の賠償金は、立法的対応ではなく、見舞金的性格のものとの解釈で非課税にしたこと、
- 口蹄疫発症の手当金として支払者は国であること、議員立法での対応であったこと、
- オウム真理教事件では、給付金の支給に関する法律に非課税規定を入れて対応したこと、
などが述べられた。
今回の賠償金の支払者は東京電力という民間企業であること、逸失利益に対する課税は所得税法上も非課税所得から除かれていることがこれら3事例と異なることにも言及した。
さらに出席会員からの非課税の主張に対して神谷氏は、東京電力の照会に対する国税庁見解は、論点となっている賠償金は逸失利益の補填であり、その性質上解釈上で非課税とするには難しいことなど繰り返し表明した。
大門議員からは、参議院での委員会質疑などにおいて、今回の原発災害は通常の事故とは異なる事故との認識に立って対応するように要請しており、財務省としてもそうした対応を心がけるような答弁もあったが、現在では振り出しに戻った感がありおかしいとの疑問も示された。
また、出席者から逸失利益という名目ではなく実質的には再建のための賠償金であり、課税は再建を不能にすること、また形式的には東電対被害者国民となっているが実質には国対被害者国民であるとの認識に基づいて賠償金の性質を評価すべきとの主張について、神谷氏は、確かに異常な災害との認識は持っているが、財務省としては逸失利益について詰めた評価はされてはいないこと、また、民対民のことについては言及を避けた。また、神谷氏は財務省としては従来の取り扱いを踏まえて対応せざるを得ないこと、財務省としては重大な事故である都の認識はあるが主導的に変えていくということは難しいとの判断も示した。
筆者の感想としては、神谷氏の話を聞く限りでは、財務省はみずから汗を流して非課税にするような意欲は全く感じられず、議員立法を求めて国民的運動を広げて展望を打開する道しかないのかとの思いを強くした。 |