論文
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米国のパートナーシップを法人とする判決と任意組合とする判決と判断が分かれる
東京会 船 繁夫
[1]事案の概要

事案の概要

本件スキームは、出資金の数倍の借入れをして建物の取得価額をかさ上げした上で、法定耐用年数を経過した中古建物の耐用年数が短いことを利用して、多額の減価償却費と借入金利子を必要経費に算入することにより、不動産所得から生じる損失を他の所得と損益通算することで、節税を図るものである(平成17年の改正により、LPSが任意組合だとしても、経営に参加していない組合員の不動産所得の損失はないものとみなされるので損益通算できなくなった)。

本件のLPS(=リミテッドパートナーシップ)は、アメリカのデラウェア州で組成され、有限責任であるLP(=リミテッドパートナー)と無限責任であるGP(=ゼネラルパートナー)から構成される営利の共同事業を目的とした契約関係である。経営はGPが行ない、LPはその成果を得るために出資するにすぎない。原告の主張は、本件LPSはアメリカで損益がパートナーにパススルーする扱いのパートナーシップ課税を選択したから、原告に配賦された損失は不動産所得の損失に当たるというものであり、国の主張は、本件LPSは法人である、仮に法人でないとしても権利能力のない社団であるから、その損失は不動産所得の損失ではないというものである。

平成11年分から平成17年分の課税をめぐり全国で裁判が行なわれたが、納税者が勝訴したものと敗訴したものと判決は分かれている。

○LPSは任意組合だとして納税者が勝訴したもの

東京地裁:平成23年7月19日
名古屋地裁:平成23年12月14日
名古屋高裁:平成25年1月24日
○LPSは法人だとして納税者が敗訴したもの
大阪地裁:平成22年12月17日
大阪高裁:平成25年4月25日
東京高裁:平成25年3月13日
[2]LPSを法人とした判決の理由

租税法上で法人は定義されていないので私法上の法人を借用概念として用いる。民法で法人は「自然人以外で権利義務の主体となることができるもの」とされている。これを実態面でみると、次の3要件が法人の属性とされるので、本件LPSがこの3要件を満たすならば、本件LPSは法人といえる。


構成員とは区別された独自の財産を有し、かつその名において登記・登録できる。

その名において契約を締結し、その名において権利を取得し義務を負うなど独立した権利義務の帰属主体となり得る。

その名において訴訟当事者となり得る。

LPS法
105条(a):LPSに対する訴状はLPSの代理人、ゼネラルパートナーに手渡すか、又はLPSの代理人、ゼネラルパートナーの住居に送付することにより、送達されたものとみなされる。

106条(b):LPSは本法、その他の法律、LPS契約で付与された全ての権利を保有し、それを行使することができる。

201条(b):LPSはLPS証明書が登録された時点で設立され、又LPSは独立した法的主体(separete legal entity)である。

701条:パートナーはLPSの特定財産に対していかなる持分も所有しない。

ただし、契約4.5で「名パートナーは本件LPSの資産に、各パートナーシップ出資割合に相当する不可分の持分を有する」とされている。
LPS契約

2.7:LPSの所有する不動産その他の資産はLPS又はゼネラルパートナーが決定する名義人の名前で登録される。

上記 は、106条(b)、701条、契約2.7で、は106条(b)で、は105条(a)で満たされている。

そして日本の権利能力のない社団と任意組合は の登記ができる条件を満たしていないので、LPSは権利能力のない社団と任意組合には当たらない。

なお、201条(b)のseparate legal entityについて大阪地裁、大阪高裁は法人とはいえないとする一方、東京高裁は法人であると解釈が分かれている。

また、東京高裁は、東京地裁が損益の帰属主体を重視したのに対し、権利義務の帰属主体が即ち損益の帰属主体であるとして、損益の帰属主体をとりあげることを否定して、逆転判決をした。
[3]LPSを任意組合とした判決の理由

(ア)[2]の基準は法人の必要条件ではあるが十分条件ではないので、この基準を満たせば法人である、とは必ずしもいえない。

について
民法は任意組合について、組合財産は総組合員の共有に属すると規定する一方で、組合員の持分の処分を制限し、清算前の分割請求を禁止している。このことは組合財産が組合の事業経営のために必要な財産としてある程度の独立性を有していることを示している。

権利能力のない社団については、構成員は社団財産に対する持分を持たないとされており、社団財産は独立性を有している。

について
任意組合については、社会生活において、法律行為の名義として任意組合自体や任意組合代表者名義を用いることが許容されている(最高裁昭和36年7月31日は、手形の振出人を代表者名義とした事例で、その行為は有効で全組合員は共同振出人としての責任を負うとした)。

権利能力のない社団については、代表者によって社団の名において構成員全体のために権利を取得し、義務を負担することができるとされている。今日、銀行口座は団体名で開設することが可能である(最高裁昭和48年10月9日は代表者が社団の名においてした取引上の債務は、構成員全員に総有的に帰属すると共に、社団の財産だけが責任財産であり、構成員各自は直接には個人的債務ないし責任を負わないとした)。

について
任意組合については、最高裁昭和37年12月18日は、継続的存在を有し代表者の定めのあるものについて、民事訴訟法29条を準用して認めている。

権利能力のない社団については、民事訴訟法29条は代表者又は管理人のあるものについて認めている。

(イ)法人に当たるか否かは、次の基準で判断すべきである。
1 外国の法令で法人とする(法人格を付与する)旨を規定されているか。
1 わが国の法人と同様に損益の帰属すべき主体(構成員に直接損益が帰属することが予定されていない主体)として設立が認められているか。

この2点を検討すべきであり、後者の点が肯定される場合に限り、わが国の租税法上の法人に該当すると解すべきである。
アメリカでの法人とパートナーシップの扱いをみると。

1 については、Separate legal entity は、法人格のない協同組合や制定法上の信託にも用いられており、この用語があるからといってLPSに法人格が付与されているとはいえない。

2 については、LPS法503条:LPSの損益は、パートナーシップ契約の規定に従い、パートナー及びパートナーのクラスやグループの間で割当が行なわれる。

契約に規定がない場合、損益は各パートナーが出資した価額に基づき割り当てられる。LPS契約4.6(分配):ゼネラルパートナーの裁量により、各会計年度の3月30日までに各パートナーに対して次の分配を行なうことができる。前会計年度に4.7条で各パートナーに対して割り当てられた所得、利益その他の項目の正味金額に40%を掛けた金額。

契約4.7及び4.8(ネットでの割り当て)
会計年度の利益及び損失は、基本的にパートナーの出資割合に応じてパートナーに割り当てられる(配分される be allocated)

契約4.12(グロスでの割り当て)
契約で別途定められていない限り、LPSの所得、収益、損失及び控除のパートナーの割り当て持分は、利益及び損失の割り当て持分と同じとする。

これらの条文から見ると、LPSの損益は総額(グロス)ベースでパートナーに直接帰属することが予定されており、LPSが損益の帰属主体として設立されたとは認められない。

(ウ)日米租税条約からの検討
3条1項
(e)「者」には、個人、法人及び法人以外の団体を含む。
(f)「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体を言う。
議定書2条
条約3条1項(e)に関し、「法人以外の団体」には、遺産、信託財産及び組合を含む。
上記で、「法人」に対応する英語はcompany,「法人格を有する」に対応する英語はcorporate,「団体」はentity,「組合」に対応する英語はpartnership が用いられている。

(エ)権利能力の社団に当たらないことについて
最高裁昭和39年10月15日は私法における権利能力の社団に当たるためには次の4要件を満たす必要があるとしている。
団体としての組織が備えられている。
多数決の原則が行なわれている。
団体そのものの継続性がある。
代表の方法、総会の運営や財産の管理等が定められている。

本件LPSがこの4要件を満たしているかどうかを検討する。

LPS契約2.1
「LPSの管理及び運営は、ゼネラルパートナーに独占的に権利を付与される。ゼネラルパートナーはこれによりLPSに代わり、LPSの名前でLPSの目的の全てを実施する権限を有する。リミテッドパートナーは契約に定める場合を除きLPSの管理又は運営に参加してはならず、いかなる事項に関してもLPSの名前で行為する権限を有さない。」

本件LPS契約にはリミテッドパートナーが管理運営に参加できる定めはないことから上記の要件が満たされていない。又、7年後に建物を売却して解散することが予定されており、の要件も満たされていない。
[4]アメリカでの法人とパートナーシップの関係

(ア)2人以上の構成員を持つ事業体は、連邦税の課税上、法人(corporation)又はパートナーシップのいずれかに分類される。
所有者が1人だけの事業体は法人として分類されるか又は無視される。無視される場合、事業主、所有者の支店又は一部門とされる。

「法人」は次のものをいう。
連邦、州の制定法に基づいて組成された事業体で、会社(incorporated)、法人(corporation)、法人格のある団体(body corporate)、政治団体(body politic)として規定しているもの
社団(association)
州の制定法に基づき組成された株式会社(joint stock company)

一定の外国事業体(日本については株式会社のみ)
は自動的に法人とされ、当然法人といい、法人以外の事業体として取り扱われることを選択することはできない。

当然法人以外の主体を選択適格事業体といい、分類を選択することができる。即ち、2人以上の構成員をもつ事業体は社団(association)かパートナーシップかのいずれかを選択できる。
積極的に選択しない場合、パートナーシップとして分類される。
パートナーシップとして分類されれば、日本の任意組合のように、損益はパートナーにパススルーされる。

なお は株式会社と訳されているが日本の株式会社とは異なり法人格のない社団(unincorporated association)である。

アメリカでは の社団とパートナーシップを区別するために、40年間にわたり、キントナー規則の6基準が用いられてきたが、区別に困難な事例が多くなったため、1997年にこの規則は廃止され、現在の選択制(チェックザボックス規則)に代わった。

(イ)連邦税法上「パートナーシップ」はシンジケート、グループ、プール(pool)、ジョイントベンチャーその他非法人組織 (unincorporated organization)で事業、財務活動もしくは投機(venture)を営むもので法人、信託、遺産でないものを含むと定義されている。

アメリカのパートナーシップに関わる法律としては、統一パートナーシップ法(UPA法)、統一リミテッドパートナーシップ法(ULPA法)とこれらに基づいて各州で制定したパートナーシップ法(PA法)、リミテッドパートナーシップ法(LPS法)がある。UPA法上、パートナーシップは2人以上の者が共同所有者として営利事業を営む団体と定義されている。

UPA法はパートナー全員が無限責任を負うゼネラルパートナーシップに用いられ、ULPA法は本件のリミテッドパートナーシップに用いられる。

1914年UPA法
パートナーシップはその名義でその財産の所有権者となることができる。各パートナーはパートナーシップ資産の共同所有者であり、又、資本及び利益の持分を表象する独立したパートナーシップ持分を有する。

1994年UPA法
パートナーシップがSeparate legal entity であるという規定が初めて設けられた。

1997年UPA法
パートナーシップの資産はパートナーシップのものであり、パートナーシップが個人的に有するものでないと規定されている。
[5]任意組合とリミテッドパートナーシップの比較

(ア)成立要件
任意組合は組合員が出資し共同事業を営むことに合意することによって成立する。リミテッドパートナーシップはパートナーが出資し営利の共同事業を営むことに合意しかつLPS証明書を登録することによって成立する(登録することによりリミテッドパートナーは有限責任となる。登録しなければリミテッドパートナーはゼネラルパートナーとなり、無限責任となる)。

(イ)財産の所有形態
任意組合は総組合員が財産を共同所有している。リミテッドパートナーシップは自らが財産を所有しており、パートナーは日本とは異なる意味で共同所有しているにすぎない。
統一パートナーシップ法は次のように規定している。

UPA法25条
(1)パートナーは、パートナーシップの個々の財産を他のパートナーと共に所有している共有者である。
(2)この所有権の属性は次のとおりである。
(a)パートナーは本法の規定及び各パートナー間の合意を条件として、他のパートナーと共にパートナーシップの目的のためパートナーシップの個々の財産を占有する権利を平等に保有する。

UPA法26条
パートナーシップに対するパートナーの持分は利益及び剰余金に対する持分であり、かつそれは動産である。
すなわち、任意組合では組合員が財産を物的に共同所有しているのに対し、パートナーシップではパートナーは占有権として財産を共同所有しているにすぎない。
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(ウ)損益の帰属
任意組合は組合員に損益がパススルーされるが、パートナーシップは社団を選択すればパススルーされず、社団を選択しなければパートナーにパススルーされる。

(エ)パートナーシップ持分
法人の場合の株式に対応する概念(UPA法上は動産とされている)で、日本の任意組合でいえば、組合員たる地位ないし組合の包括的財産に対する合有持分権に当たる。出資により、パートナーシップ持分を取得し、出資金又は資産では簿価が持分の基準価格となる。基準価格は利益を割り当てられると割当額だけ増加し、損失を割り当てられると割当額だけ減少する(これにより持分売却時の二重課税が防止される)。パートナーシップ持分を譲渡した時に、対価と基準価格の差額がキャピタルゲイン(ロス)として課税される。
[6]まとめ

日本では法人格を有するもののみを法人とするが、アメリカでは法人格を有しない一定のものも法人としており、権利・義務の帰属主体としての法人の範囲は日本より広い。そして、パートナーシップは法人格はないが、権利義務の帰属主体となる法的主体(legalentity)とされている。

日本の任意組合では総組合員は財産を物的に共同所有しているが、パートナーシップではパートナーシップが財産を所有し、各パートナーは占有権としての財産の共同所有者にすぎない。財産の帰属主体としての面から見ればパートナーシップは任意組合とは異質である。

これらのことを考慮すると、本件アメリカのLPSは法人といえる(なお、[補足]で記すイギリスのパートナーシップはseparatelegal entityとはされていないこと、財産はパートナーの共同所有とされていることから不動産はパートナーの共有名義でしかできないこと、などの違いがあり、イギリスのLPSは任意組合といえる。つまり、コモンローではパートナーシップは資産(特に不動産)を所有することはできなかったが、この取り扱いをイギリスは保持し、アメリカは変更したといえる)。
[補足]関連した判決と見解
(ア)東京地裁(平成24年8月30日)[LPSは法人でない]
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 原告は組合員と借入契約とスワップ契約を結び「組合員の原告への借入金の返済額が営業者からの分配金より少ない場合は差額を組合員は原告に支払う、多い場合は差額を原告が組合員に支払う」こととした。

国は、組合員から原告へ支払われた金額が営業者からの分配金であり外国法人の国内源泉所得であるとして決定処分した。これに対し、原告は自らはパートナーシップであり外国法人には当たらないと主張した。

バミューダLPS法ではLPSは法的主体(separete legal entity)とは規定されておらず、またパートナーシップ財産はパートナーの共同所有とされていることなど本件とは異なっている点を含め、上記[3]のLPSを任意組合とした判決の理由をとりあげながら、判決は外国法人ではないとした。
(イ)名古屋地裁(平成17年12月21日)名古屋高裁(平成19年3月8日)最高裁(平成20年3月27日)上告不受理により確定[LPSは任意組合である]
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本件と同じく、減価償却費を利用して不動産所得に損失を生じさせ、損益通算を図るスキームである。ただし、本件と異なるのは、アレンジャーが国税当局になした照会に対し国税当局がその旨を認めていた事実があり、こうしたことから、国はLPSを法人とは扱わず、匿名組合の営業者とした。

地裁、高裁は共に任意組合の成立要件を満たしていることなどから、任意組合であるとした。
(ウ)さいたま地裁(平成19年5月16日)
東京高裁(平成19年10月10日)確定[LLCは法人である]
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原告は本件LLCがパートナーシップ課税を選択しているとして、損益を割り当てられた年度に不動産所得として申告したが、国はLLCは法人ゆえ現金が分配された年度に配当所得として申告すべきであるとした。

判決はLLCは法人であるとした。その理由として次の点をあげた。 LLCは本件LPSの法人の3基準を満たしている。 LLCはseparate legal entity とされている。 LLCは財産を所有している。
(エ)LPSは合資会社であるという見解(木村弘之亮)

国際私法の用いる準拠法主義は国際税法に適用されるべきでなく、法廷地法が適用されるべきである。

LPSは無限責任社員と有限責任社員からなる日本の合資会社に相当する。ゆえに法廷地法である会社法に照らせば、LPSは合資会社である。会社法3条は会社は法人であると定めているから、LPSは法人である。

(ふね・しげお)

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