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税理士試験を振り返って
埼玉会 滝山 英太
平成24年度税理士試験に合格し、昨年税経新人会に入会致しました。入会のご挨拶を兼ね税理士試験を通じた経験を書かせて頂きたいと思います。大学を卒業し入った会社が税理士事務所へOA、事務用品を卸している会社であり、そこで多くの税理士の方々と出会ったことが税理士を目指す大きなきっかけとなりました。

私が社会に出た当時はちょうど消費税が3%から5%に上がった時期であり、翌年には山一證券や北海道拓殖銀行の破綻などもあったことで、経済情勢も非常に不透明な状況でした。そのような経済情勢のもと手に職をつけたいと強く思い、新卒で入社した会社を1年で辞め、会計事務所に勤務しながら税理士試験を毎年受験するようになりました。会計事務所に勤めながらの税理士試験の受験は困難を極めました。

先生方も十分ご承知かと思われますが、1科目に合格するだけでも複数年かかってしまうという現在の試験の現状です。せっかく1年間勉強したにもかかわらず、合格することは非常に稀であり、殆どの年は残念な結果で終わってしまいました。毎年高い学費を払い、年間数百時間の勉強時間がたった一枚の不合格通知で終わってしまうという年が何年も続き、本当に理不尽な試験だ、という実感でした。

仕事をする関係上1年で複数科目を受験することは難しく、毎年コツコツと1科目を何年もかけて受験する、という根気強い作業が必要でした。それでも2 3年毎に1科目づつの合格を重ねることができ、昨年14年をかけてようやく5科目合格までたどり着きました。税理士試験を通じて特に思ったのは、やはり「生みの苦しみ」だったと思います。私も何年も結果が出ない年もあり、このまま受験を辞めてしまおうかと何度も思いました。

ただし、今振り返って思うのは、努力した結果が出る、出ないにかかわらず、努力を継続することが大切で、自分自身を磨くという作業の先に、試験合格という一つの形があるのではないか、と思いました。努力の結果がその時々では出なくても、継続することで、必ず自分の力になっていると思います。大切なのは結果ではなく、どれだけ努力を積み重ねたか、という過程ではないでしょうか。それだけの過程があれば結果は必ずついてくるものだ、ということが実感できました。

私達が仕事上取引をさせて頂く中小企業の社長様は、我々の想像を絶する努力をされており、税理士試験以上の努力をされている方々ばかりと思います。それだけの方々と同じ土俵で仕事をする、ということを考えると税理士という資格以上に、税理士試験で経験した「生みの苦しみ」が、これからの人生の支えになるのではと思います。長い受験生活から開放され、私自身どこか慢心を抱いている部分もあります。

ただし、試験に合格したから終わり、ではなく、これからも違った形で自分を磨き続けなければ、税理士に値しない人間になってしまう危機感もあります。努力を続けているとどうしても見返りを求めてしまいますが、見返りを求めて努力するのではなく、ただひたむきに一つのことを継続できる、そんな人間になりたいと思っています。

(たきやま・えいた)

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