論文
> 現在の改憲論をどうみるか

大企業優遇税制の是正こそ財源
明らかになった措置法特例の適用実態
埼玉会 菅 隆徳
はじめに

平成25年3月、財務省は開会中の通常国会に「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」(第183回国会提出)を提出しました。全文1284頁に及ぶ分厚い報告です。

租税法学上、租税特別措置とは、もっぱら産業経済政策的観点から、税の負担公平原則(応能負担原則)を犠牲にして、特定の納税者の税負担を傾斜的に軽減する一切の措置をいうとされています。この意味において、租税特別措置は、単に租税特別措置法に規定するものだけではありません。法人企業に関して言えば、措置法に規定する各種の準備金、特別償却、圧縮記帳、試験研究費にかかる税額控除などが租税特別措置に該当することは言うまでもありません。あわせて、法人税法に規定する引当金、受取配当益金不算入、株式発行差金の非課税、連結納税制度なども租税特別特別措置に該当すると考えられます。租税特別措置は、経済政策社会政策その他の政策的理由に基づき、税負担の公平という税制の基本理念の例外措置として設けられているものです。したがって租税特別措置は、担税力のある者から徴収すべき租税を徴収しないというものであって、「隠れた補助金」「隠れた歳出」の性格を持つものであると言われてきました。

このような不公平な税制に対する批判が強まる中で、民主党政権下の平成22年度税制改正で、(租税特別措置法上の)租税特別措置の適用状況を透明化するとともに、適切な見直しを推進し、国民が納得できる公平で透明な税制の確立に寄与する目的から、いわゆる「租特透明化法」(租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律)が制定されました。(1)これにより各法人はその法人税の申告に際して、平成23年4月決算法人から、法人税申告書に、その事業年度に適用した租税特別措置の明細を記載した「適用額明細書」の添付を義務付けられました。租特透明化法では、財務省は提出された「適用額明細書」を集計し、法人税関係の措置法特例の適用状況を調査し、毎年1月からの通常国会で報告することとされたのです。昨年10月に報告の一部が仮集計として公表されていましたが、冒頭の報告書は租特透明化法に基づく初めての本集計報告です。これにより法人税のすべての措置法特例の実際の適用件数や減税額(資本金規模別、所得金額規模別、業種別)などが初めて明らかになりました。

本稿では発表された「適用実態調査の結果」の集計状況を明らかにするとともに、「隠れた補助金」といわれる租税特別措置法の適用実態を解明し、あわせて措置法以外の租税特別措置(その多くは大企業優遇税制)との比較、検討を行うものとします。
(1) 中小企業者等の法人税率の特例について

(表 )は今回の報告書を措置法の項目毎に要約したものです。このうち(中小企業対策)の 中小企業者等の法人税率の特例の計算は次のように行いました。平成23年度の法人税率は年800万円以下の所得について22%、年800万円超の所得について30%であるが、措置法42の3の2で、年800万円以下については18%に引き下げられています。(表 )の減税額は、措置法によって引き下げられた4%分について、公表された適用額に乗じて算出したものです。減税額は942億円となっています。

中小企業に対する軽減税率は、ひとしく租税特別措置といっても、社会政策的な観点から中小企業の租税を軽減する措置であり、憲法上(応能負担原則)むしろ必要な措置であって、これは租税特別措置とはいえません。法人を独立した課税単位として考えるときに、現行の法人税率が比例税率となっていることは応能負担原則からいって批判されなければなりません。法人税においても累進税率を適用すべきです。法人税率は10%から50%の累進税率が望ましい。したがって、(表 )の中小企業者等の法人税率の特例については、租税特別措置の分析から除いて考える必要があります。同様に 中小企業者等の機械取得の特別償却等、 中小企業者等の少額減価償却資産の特例についても、租税特別措置の分析から除いて考える必要があります。

(表
租税特別措置による減税額
(平成23年4月1日平成24年3月31日に終了した事業年度)
  適用法人数(社)
減税額(億円)
1社平均
減税額(万円)
大企業の割合(%)注
(一般減税)
試験研究費の税額控除
使用済燃料再処理準備金
投資法人に係る課税の特例
特定目的会社に係る課税の特例
保険会社等の異常危険準備金
エネルギー需給構造改革の特別償却等
特定の基金の負担金の損金算入
公益法人・協同組合の貸倒引当金の割増
原子力保険等の異常危険準備金
探鉱準備金、海外探鉱準備金
11収用換地の場合の特別控除
12海外投資損失準備金
13船舶の特別償却
14特定株式投資信託の受取配当益金不算入
15新幹線鉄道大規模改修準備金
16特別修繕準備金
17特別償却不足額の1年間繰越
18原子力発電施設解体準備金
19その他 53項目
小計
(買換え等の課税の繰延措置)
特定の資産の買換えの特例
収用等の圧縮記帳
換地処分の圧縮記帳
その他 8項目
小計
(中小企業対策)
中小企業者等の法人税率の特例
中小企業者等の機械取得の特別償却等
中小企業者等の少額減価償却資産の特例
小計
合計 注

9,858
9
51
364
49
3,904
48,123
9,274
16
44
2,856
14
40
7,964
1
641
1,731
9



1,317
517
137



676,080
36,734
424,751



3,395
1,400
474
464
388
338
221
206
190
150
123
115
111
102
100
99
89
56
535
(8,556)

1,486
494
173
111
(2,264)

942
714
704
(2,360)
1兆3,180億円

3,443
1,560,000
92,941
12,747
79,183
883
46
223
118,750
34,091
430
82,143
27,750
128
1,000,000
1,544
515
62,708



11,283
9,555
12,627



14
194
17



85
100
100
88
100
38
34
85
32
97
9
100
5
71
100
78
1
100

(78)

69
56
71

(65)

-
-
-
(0)

適用法人数は、単体法人と連結法人の合計数。調査対象法人数は、単体法人919,261社、連結法人456社。
減税額の計算の基礎となる法人税率は、当該事業年度の法人税率30%として計算。準備金の減税額は、累計の減税額ではなく、その事業年度の損金算入にかかわる減税額を表示。。
大企業の割合は、全体の減税額に占める大企業(資本金10億円超)が受ける減税額の割合を示したもの。
報告された租税特別措置の項目数は、全体で85項目である。そのうち、適用件数のないものが7項目あり、適用件数が10件以下のものが24項目ある。上位10社で、適用額の90%以上のものが16項目ある。(単体法人の集計)。
(出所) 財務省平成25年3月発表「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」(第183回国会提出)をもとに税理士菅隆徳が減税額を計算。

(表
租税特別措置による減税額
(平成23年4月1日平成24年3月31日に終了した事業年度)
   億円
1位
 億円
2位
 億円
3位
備考
(一般減税)
試験研究費の税額控除
使用済燃料再処理準備金
投資法人に係る課税の特例
特定目的会社に係る課税の
保険会社等の異常危険準備金
エネルギー需給構造改革の特別償却等
特定の基金の負担金の損金算入
公益法人・協同組合の貸倒引当金の割増
原子力保険等の異常危険準備金
探鉱準備金、海外探鉱準備金
11収用換地の場合の特別控除
12海外投資損失準備金
13船舶の特別償却
14特定株式投資信託の受取配当益金不算入
15新幹線鉄道大規模改修準備金
16原子力発電施設解体準備金
(買換え等の課税の繰延措置)
特定の資産の買換えの特例
収用等の圧縮記帳
換地処分の圧縮記
(中小企業対策)
中小企業者等の法人税率の特例
中小企業者等の機械取得の特別償却等
中小企業者等の少額減価償却資産の特例

139
710
27
23
172
27
22
23
129
37
0.3
35
13
18
100
19

94
18
25

0.0032
3
0.029

117
377
26
23
59
3
12
8
18
27
0.3
13
5
6
-
18

91
7
19

0.0032
3
0.024

101
146
23
19
45
3
8
5
11
25
0.3
10
5
3
-
8

30
7
15

0.0032
3
0.024

単体 注
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体
単体

単体
単体
単体

単体
単体
単体
単体法人と連結法人と比較し、減税額の大きい方を表示。単体は、単体法人を表示。
(出所)財務省平成25年3月発表「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」
(第183回国会提出)をもとに、税理士菅隆徳が減税額を計算。

(2) 浮き彫りになった大企業優遇
(表)では公表された適用額に基づいて減税額を計算しました。(「適用実態調査の結果」には適用額は表示されているが、減税額は表示されていない)さらに1社平均の減税額、減税額のうち大企業(この調査の分類では資本金10億円超)の割合を算出しました。次のようなことが明らかになりました。

 減税額の最大は「試験研究費の特別控除」3395億円です。大企業割合は85%でこの特別控除はほとんどが大企業の減税であることがわかります。(2)(3)この減税額には中小企業のみに適用の減税額230億円も含まれています。この減税額のうち「試験研究費の総額に係る税額控除」2848億円の大企業割合は91%でした。全体として1社平均減税額は3443万円となっています。減税額上位10社の減税額は明らかになっていますが、企業名は明らかにされていません。しかし、大企業製造業の上位各社の1社あたりの減税額は莫大なものとなっていると思われます。(表)は、筆者が各社の有価証券報告書をもとに推計したものです。必ずしも調査年度と一致していないものもありますが、自動車製造業、製薬業の大企業が莫大な減税を受けています。

(表
大企業の試験研究費の減税額(法人税)
(単位:億円)
会社名 減税額
トヨタ自動車 512
本田技研工業 217
武田薬品工業 244
キャノン 136
アステラス製薬 88
(出所) 各社の有価証券報告書から税理士菅隆徳が推定計算を行った。
トヨタは、平成17年3月期平成21年3月期の平均減税額。
ホンダは、平成20年3月期。武田薬品は、平成24年3月期。
キャノンは、平成23年12月期。アステラス製薬は、平成24年3月期。

 (一般減税)では大企業割合が85%以上となっている項目が、上位18項目中10項目あります。一般減税全体の78%が大企業減税です。大企業は「新幹線鉄道大規模改修準備金」の1社で100億円、「使用済燃料再処理準備金」の1社平均156億円をはじめ、少ない適用件数で、1社あたりの減税額は億単位の多額な減税を受けています。

 原子力発電関係にも、使用済燃料再処理準備金、9社で1400億円、原子力発電施設解体準備金、9社で56億円と多額な減税が行われています。東京電力の有価証券報告書によれば、使用済燃料再処理引当金の残高は、1兆1627億円(平成24年3月期)となっており、約3500億円の累計減税額が推定されます。

 投資法人に係る課税の特例(51社で474億円)、特定目的会社に係る課税の特例(364社で464億円)保険会社等の異常危険準備金(49社で388億円)など、一般になじみのうすい知られていない特例があります。この機会にその特例の根拠を広く明らかにさせ、適正な見直しが必要ではないでしょうか。「補助金であれば常にチェックされる」事項が、「隠れた補助金」であるがゆえに、租税特別措置が一度税制改正で入ると、議会の統制を受けず、既得権化して、税制改正によって廃止されるまでは見直しがされづらいのです。

 買換え等の課税の繰延措置においても、大企業割合は全体で65%になっており、大半は大企業減税に使われています。

(表)では、項目毎の高額適用額の上位3社の減税額を表示しました。

 試験研究費の税額控除など、大企業に専ら適用される項目で、100億円以上の巨額の減税額が適用されています。(試験研究費の税額控除、保険会社等の異常危険準備金、新幹線鉄道大規模改修準備金)

 原子力発電関係で大手電力会社に巨額な減税が適用されています。(使用済燃料再処理準備金、原子力発電施設解体準備金)

 大企業割合の大きい項目で巨額な減税が行われています。(投資法人に係る課税の特例、特定目的会社に係る課税の特例、探鉱準備金海外探鉱準備金、海外投資損失準備金)

 中小企業対策の項目では1社あたりの減税額は大企業割合の大きい項目と比べると極端に少ない金額です。
(3)租税特別措置法以外の租税特別措置

以上今回公表された「適用実態調査の結果」を見てきましたが、租税特別措置は冒頭に述べたように、措置法だけではありません。ここではその他の租税特別措置について、簡単にその内容と減税規模を明らかにします。

 大企業の受取配当益金不算入

企業が国内の他の企業から受取った株式配当は、企業の決算上では、収益に計上されています。しかし法人税の計算上は「益金不算入」とされ、一部を除いては「益金」とはみなされず、その分だけ企業の利益(申告所得)が減少します。法人は個人株主の集合体(法人擬制説)という、大企業の実態とは違った前提で減税になっています。大企業優遇税制で租税特別措置に該当します。(表 )にみるように、大企業の益金不算入額は、平成17年以降年間4兆円を超え、減税額は毎年1兆円を超えています。個別大企業の減税額を各社の有価証券報告書から計算してみると、トヨタ自動車は5年間で1152億円(年平均230億円)、三菱商事は5年間で3179億円(年平均636億円)もの多額な減税となっています。(4)

(表
大企業の受取配当益金不算入額と減税額
(単位:億円)
平成13年 1兆5243 4573
平成14年 1兆8745 5623
平成15年 1兆7609 5282
平成16年 2兆3659 7097
平成17年 4兆233 1兆2070
平成18年 5兆8712 1兆7614
平成19年 7兆2765 2兆1830
平成20年 6兆6027 1兆9808
平成21年 4兆3711 1兆3113
平成22年 5兆982 1兆5295
(出所) 国税庁「会社標本調査」(税務統計から見た法人企業の実態)。
大企業は、資本金10億円以上の法人。

 外国子会社配当益金不算入

この制度は多国籍企業の海外での投資収益を国内に還流させるためとして、平成21年度から創設されました。(国税庁は平成21年度のデータは公表していません)これは外国企業であっても一定の要件を満たす子会社であれば、その配当の95%までは益金に算入しなくてよいという制度です。従来の制度では、外国で納めた税額は控除し、日本の税率で計算した税額との差額は納税していました。この制度の導入で差額すら納税しなくてすむことになりました。この制度を受けて、平成22年度には海外子会社の利益3.27兆円のうち3.12兆円が配当として国内に還流されており、国内還流の比率は、平成20年度までは50から60%程度だったものが、平成21年度に72%、平成22年度には95%まで上昇しています。(日本経済新聞2011年7月19日)。海外に留保されている利益の残高は平成18年度で17兆円に達していると言われています。多国籍企業の大企業優遇税制で、租税特別措置に該当します。(表 )は国税庁が発表した平成22年の益金不算入額と減税額です。、大企業は4兆円近い益金不算入と、年間1兆円を超える減税を受けています。

(表
大企業の外国子会社受取配当益金不算入額と法人税減税額
(単位:億円)
年度 益金不算入額 減税額(法人税)
平成22年 3兆7839 1兆1352
(出所)国税庁「会社標本調査」(税務統計から見た法人企業の実態)。大企業は、資本金10億円以上の法人。

 連結納税による大企業減税

連結納税制度は平成14年度に創設されました。親会社が子会社の株式を100%保有している場合、すべての100%保有子会社の所得を親会社の所得と合算して法人税を計算する仕組みです。親会社も子会社もすべて黒字なら、個別に納税した場合と大きな違いはありません。

ところが連結納税グループ企業の中に赤字法人がある場合は、所得を合算することによって、各企業の黒字と赤字が相殺されるため、個別に納税するよりも税額が低くなってしまいます。連結納税法人の個別所得金額と申告所得金額を、国税庁「法人税等の申告(課税)事績の概要」から、垣内亮氏が計算したものが(表)です。個別所得金額から申告所得金額を差し引いた所得金額が、課税所得金額の減少、つまり課税ベースの圧縮になります。それに税率30%をかけたものが、連結納税による減税額になります。最近では毎年5000億円前後もの減税になっています。

この減税によって、連結法人は基本税率30%のうち、10.3%を一気に引き下げているのです。(5) 企業会計レベルでは、結合企業全体の財政状態及び経営成績を総合的に表示するため、連結財務諸表の導入は必要性があります。しかし、「課税単位」ごとの応能負担を前提とする法人企業税制においては、連結納税制度は、税法学的には、憲法の意図する担税力に応じた応能負担原則を著しくゆがめるものであり、形を変えた大企業優遇税制となっています。租税特別措置に該当します。
図6

 株式発行差金への非課税

株式発行差金(プレミアム)については、企業会計理論においては資本剰余金とされ、会社法においても資本準備金とされています。現代税法もこのような企業会計理論及び会社法の考え方と同じように、株式発行差金を資本準備金とみて、益金としては扱っていません。しかし株式発行差金は、資本市場メカニズムを通じて産出されたものであって、それは大企業の利潤の「投影」であり、現代的利潤の「変型」といえます。それは一種の「利益」であって「資本」ではありません。株式発行差金への非課税は租税特別措置と見なければなりません。(6)(7) 大企業の資本準備金の残高は(表)のように推移しており、最近の年平均の増加額は4兆4454億円です。これに対する減税額は年平均1兆3336億円に達します。

(表
大企業の資本準備金額の推移
(単位:億円)
年度 資本準備金の残高
平成17年 51兆5030
平成18年 52兆8270
平成19年 55兆7766
平成20年 65兆6794
平成21年 73兆8600
平成22年 73兆7301
(出所) 財務省「法人企業統計」
大企業は、資本金10億円以上の法人

年平均増加額 4兆4454億円

年平均法人税減税額 1兆3336億円
(4)まとめ

「適用額明細書」の本集計、発表によって、1兆円に及ぶ租税特別措置法の減税の実態が初めて明らかになりました。一方、措置法以外の租税特別措置も受取配当益金不算入をはじめ4項目で、年間減税額4兆円を超えます。いずれも大企業優遇の不公平な税制を明らかにしています。消費税導入後の法人税率の大幅な引き下げ(導入前は42%、現在は25.5%)と、見てきたような様々な大企業優遇税制によって、大企業の実際の税負担は驚くほど軽いのです。昨年までの法人税率30%のときに、資本金1億円の企業の実際の法人税負担率は27.7%に対して、資本金が増えるにしたがい負担率は下がり、資本金50億円以上で24.6%、資本金100億円以上の大企業の負担率は21.2%となっています。さらに連結法人の負担率はわずか9.3%です。(8)

大企業は売上は増えないのに、賃金の切り下げ、非正規雇用増による人件費の圧縮と下請けコストカットで莫大な利益を上げました。同時に法人税率引き下げと大企業優遇税制で、支払う税金を大幅に減らしました。これが大企業が内部留保266兆円を蓄積できた理由です。

消費税増税が国民多数の反対を押し切って強行されようとしています。租税特別措置による多額の減税、財政の減収は、結局、一般大衆に対する所得税、住民税等の重課、消費税増税の大衆課税をもたらします。税の負担は応能負担原則で、負担能力ある大企業、大資産家は相応な税負担をすべきです。不公平な税制をただせば財源はあります。庶民増税の消費税増税はやめて、大企業大資産家に税負担を求めるべきです。租税特別措置の実態の解明はこのことを示しているのです。
(1) 中村稔氏は租特透明化法制定の趣旨について次のように述べています。「個人・企業の自由な経済活動を尊重し、それらの経済活動に中立的な税制とすることが求められる経済社会の中で、特定の政策目的のために税制上の優遇措置という手段を用いることは極力回避されるべきであること、また、税制によって経済社会を誘導しようとすることにはおのずと限界があることから、その政策目的効果や政策手段とその適正性を十分に吟味する必要があります」(中村稔「日本の税制」平成24年度版、財経詳報社2012年9月、150頁)
(2) 国税庁平成22年会社標本調査結果によれば、「試験研究費総額」の特別控除の大企業割合は94%であり、この調査でもほとんどが大企業の減税となっています。(この調査では資本金階級の分類は資本金10億円以上となっています。)
(3) 麻生財務大臣は平成25年3月19日の衆議院財務金融委員会で、研究開発減税の大企業割合についての質問に答えて、「平成23年度における研究開発税制の総額型の適用実績は、資本金10億円超の企業の適用額は、・・・・パーセントで約8割にあたります。」と述べています。
(4) 菅隆徳「一体改革と大企業の負担」「税経新報」2012年3.4月号、54頁。税経新人会全国協議会。
(5)  菅隆徳「なぜ大企業の法人税は中小企業よりも軽いのか」「税経新報」2012年9月号、29頁、税経新人会全国協議会。
(6) (株式発行差金(プレミアム)は、企業が増資をするときに、これに応じた株主が払込む金額のうち、資本金に組み入れられなかっ株式払込剰余金などのことです。)「これは企業の財務活動を通じて実現した利益であり、この利益を資本化したものです。これは株主の払込金額のうち株主が権利行使できない部分であり、利益の内部留保と考えることができます。」(小栗崇資谷江武士「内部留保の経営分析」学習の友社、2010年、101頁)法人税ではこれを資本等取引としてこの利益には課税していません。
(7) 北野弘久「現代企業税法論」314頁、岩波書店、1994年5月。
(8) 菅隆徳「なぜ大企業の法人税は中小企業よりも軽いのか」 
(すが・たかのり:2013.4.5)

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