論文
> 「改正」国税通則法と税務調査の変化

納税者の権利の憲法的意義と質問検査権(骨子)
弁護士 鶴見 祐策
1 はじめに

(1)新国税通則法の成立と経過
(2)憲法的観点から再構築の必要性

2 歴史の所産としての憲法

(1)日本国憲法の基本原則(国民主権、平和主義、基本的人権)
(2)基本的人権の保障の意義
(3)警戒すべき逆流の傾向

3 納税者権利憲章の生成過程

(1)大憲章(マグナカルタ・1215年)
(2)権利請願(ピューリタン革命・1628年)
(3)権利章典(名誉革命・1689年)「代表なくして課税なし」
(4)ヴァージニア権利章典(1776年)
(5)アメリカの独立宣言(独立革命・1776年)
(6)フランスの人権宣言(フランス革命・1789年)

4 日本憲法の2つの基本原理

(1)第30条と第84条の「租税法律主義」
(2)第31条と第39条の「罪刑法定主義」
(3)適正手続の保障としての第31条の意義
(4)両者一対の「双子」の関係

5 刑事手続における人権保障(第33条以下)

(1)人権侵害の過去から学ぶ規定
(2)住所等の不可侵・令状主義(第35条)「何人も住居、書類、所持品について侵入、捜索、押収を受けない権利」
(3)刑事被告人の保障(第37条)「公平、迅速な公開裁判を受ける刑事被告人の権利」
(4)黙秘権の保障(第38条)「何人も自己に不利益な供述を強要されない権利」

6 日本の租税法と国税通則法の制定

(1)戦後の税制改正と申告納税制度の導入
(2)国民主権の税法的表現
(3)国税通則法の制定をめぐる国民の闘い
(4)業者運動に対する弾圧と裁判闘争の経過

7 憲法に依拠した闘いと裁判上の前進

(1)中野民商事件国賠判決(東京地裁昭和43年1月31日・判例時報507号)憲法21条の結社権
(2)荒川民商広田事件無罪判決(東京地裁44年6月25日・判例時報565号)憲法31条の罪刑法定主義
(3)その他

8 税務調査に関する最高裁の2つの判例

(1)川崎民商鈴木事件の最高裁大法廷判決(昭和47年11月22日・判例時報684号)憲法31条、35条、38条
(2)荒川民商広田事件の最高裁第三小法廷決定

(昭和48年7月10日・判例時報708号)「諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合」「質問検査の必要があり」「かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり」「税務職員の合理的な選択にゆだねられている」

9 国税庁「税務運営方針」(昭和51年)の作成

「(税務調査は)公益的必要性と納税者の私的利益との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で納税者の理解と協力を得て行うもの」「一般の調査においては、事前通知の励行に努め」「反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行う」

10 納税者の権利をめぐるその後の展開

(1)課税当局の本音
「(国税局査察部長)「判決のように客観的必要性を厳格に要求されると事実上調査ができなくなる」(増刊「ジュリスト」昭和52年1月号)
(2)納税者権利憲章の策定回避の方便
(3)新法の法令解釈通達(平成24年9月12日)における位置づけ
「調査はその公益的必要性と納税者の私的利益との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであることを十分認識し、その適正な遂行に努められたい」

11 質問検査権の適法要件と限界

(1)新法の質問検査権の規定
 任意調査の本質に変わりがない。相手方の意思に反する調査は違法
(京都地裁昭和59年3月22日判決・判例時報1127号、大阪高裁昭和59年1月29日判決・訟務月報31巻7号1559頁、最高裁昭和63年11月20日判決・訟務月報35巻6号979頁、京都地裁平成7年3月27日判決・判例時報1554号など)
 74条の2以下の「調査について必要があるとき」「質問し」「検査し」に物件の「提示若しくは提出」の文言が追加
 127条に罰則(1年以下の懲役、50万円以下の罰金。「提示」「提出」違反には「正当な理由なく」の限定。

(2)「税務調査の必要」と「質問検査の必要」
 税務調査の「必要性」
 質問検査の「必要性」
 「純粋の任意調査」
広田事件東京地裁判決の限定解釈の判示

(3)「調査理由の開示」の必要性
 必要を認めた判決
広田事件の東京地裁判決のほか 千葉地裁昭和46年1月27日判決(判例時報618号)、静岡地裁昭和47年2月9日判決(判例時報659号)など。
 最高裁の決定
「調査理由および必要性の個別的・具体的告知のごときも、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているものではない」
 憲法31条(白地刑法の禁止)と受忍義務の認識の必要

(4)取引先調査の補充性

(5)「事前通知」と「理由開示」
 新法の74条の2・調査の事前通知
 本来の趣旨・税務行政の透明性の確保と納税者側の準備の必要
 「目的」と「調査理由」
 通知を要しない場合(74条の10)

(6)調査の相手方
 所得税の「納税義務がある者」「納税義 務があると認められる者」
 最高裁判例の「弱点」

(7)求める「提示」「提出」および「留置」
 「提示」「提出」の意義
 推測される立法の意図
青色申告承認取消事件の関連
(荒川民商春日裁判の東京地裁平成3年1月31日判決・判例時報1376号、東京高裁平成5年2月9日判決・税務訴訟資料194号258頁、京都地裁平成6年11月7日判決・税務訴訟資料206号147頁、横浜地裁平成7年6月21日判決・判例タイムス885号、東京高裁平成9年9月30日判決・訟務月報43巻9号2453頁、京都地裁平成11年2月25日判決・判例集未搭載など)
 「留置」の意義と「完全な任意」
 固有の「必要性」の具備

12 その他の問題

(1)調査終了の際の手続(74条の11)
(2)更正の請求(23条3項)
(3)罰則の新設(127条1項1号)
(4)原処分の理由付記
(5)改めて「争点主義」の徹底と「理由開示」の必要性

13 むすび(権利のための闘い)

(つるみ・ゆうさく: 東京会)

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