私たち税経新人会全国協議会は、憲法にもとづく納税者の権利をまもる立場から、50余年にわたり税制、税務行政、税理士制度などの研究活動を行っている団体で、全国に18の地域会があり、税理士を中心に1,000名を超える会員を擁しています。
さて現在、東日本大震災(以下、「大震災」)の復興財源に充てるために、色々な増税案が出てきています。復興財源のための増税策を間違えば、逆に復興の足を引っ張ることにもなりかねません。そこで私たちは憲法にもとづく税制、すなわち応能負担原則にもとづく税制の観点から、復興財源のための増税のあり方に関し、私たちの基本的な意見を表明させていただきます。 |
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1.2011年度の「所得税等の一部を改正する法律案」は白紙撤回すべきです
「大震災」が起こった現在において、未だに成立していない「平成23年度所得税法等の一部を改正する法律案」(以下、「改正案」)は、法人実効税率の引き下げや証券優遇税制の延長による減税案、成年扶養控除の原則廃止や相続税の基礎控除の縮小による増税案など応能負担原則の観点からして多くの問題を含んでいます。
復興のために財源を生み出さなければならない現状から、「改正案」は一旦白紙に戻し、未曽有の危機に対処しなければならないと考えます。 |
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2.復興財源に消費税を増税することに反対です
私たちは、消費税を増税して復興財源に充てることに反対です。反対する理由は、第1に、消費税はそのしくみ上、特定の人や地域を適用除外することが困難であり、くらしや事業の再建に取り組む被災者・被災地にも復興財源の負担を求める矛盾から逃れられないからです。
第2に、低所得者層ほど負担率が重い消費税を増税すれば、逆累進性という消費税の構造的欠陥が拡大します。震災からの復旧復興のために、低所得者層ほど重い負担を課すという政策には合理性がありません。第3に、消費税の転嫁が困難な中小事業者にとって、身銭を切って負担する消費税が大きくなり、経営が成り立たなくなります。第4に、家計収入の減少と国内消費の低迷が続き、デフレ経済の出口が見えない中で消費税の増税を行うことは、日本全体を更なる景気後退に導くからです。
このような理由から、消費税を増税して復興財源に充てれば、復興の足を引っ張ることは目に見えています。大震災の上に、新たな人災を上乗せすることになります。絶対に消費税を増税するべきではありません。 |
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3.復興財源は法人税、所得税、相続税などを応能負担で増税すべきです
復興の財源として増税が不可避であれば、応能負担原則にもとづいて行うべきです。応能負担原則とは憲法の理念にもとづいて、生活費非課税、直接税中心、総合課税、勤労所得軽課・不労所得重課、超過累進税率など、収入や所得の負担能力に応じた課税を行うことです。これが公平な税制のあり方です。復興財源もこの応能負担原則にもとづいて、次のような観点から集めるべきです。
(1)法人税
今わが国で、税の負担能力が最もあるのが大企業です。日本経済が悪化する中で、大企業だけは年々利益をあげ、内部留保は244兆円(内、現預金の手元資金だけでも64兆円)にものぼると言われています。この内部留保の増加は、最近20数年間の数次にわたる法人税率の引き下げによる減税がその一因になっています。
大企業の法人税率の引き上げで復興財源の手当てすることを提言します。
(2)所得税
次に負担能力のあるのが高額所得者です。高額所得者の税負担も、この20数年間で極端に減っています。原因の一つは法人税と同様、数次にわたる超過累進税率の引き下げによる減税措置です。もう一つは証券優遇税制に代表される分離課税による低率課税です。このことによって所得再分配機能が失われ、貧富の格差が大きくなっています。
超過累進税率の引き上げと分離課税に総合課税の税率を適用することを提言します。
(3)相続税
相続税・贈与税の超過累進税率も極端に引き下げられ、資産家の税負担が軽くなっています。
このことによっても所得再分配機能が失われ、貧富の格差が大きくなっています。
相続税・贈与税の超過累進税率の引き上げを提言します。
以上、復興財源にあてる税金のあり方にしぼって提言させていただきました。負担能力のある大企業・大資産家への、その能力に応じた負担と中小企業の活性化こそが日本経済を救う道だと確信しています。
真摯にこの提案を政策に反映されることを重ねて要望します。 |
以上 |