横浜地裁 平成20年3月19日
東京高裁 平成22年2月25日(上告)
〔1〕事実経過
被告神奈川県は県税収入の減少から新たな財源確保を考え、当期利益をあげながら欠損金額の繰越控除で法人事業税の全部又は一部を納めていない資本金5億円以上の法人に対し、欠損金額を事業活動から生じたものと投機的活動から生じたものに分け、後者はその内30%として、控除欠損金額の30%部分に課税する企業税を法定外普通税の制度を活用して条例で創設した。
これに対し、原告いすず自動車は企業税は法定税である法人事業税の課税方法を変更するものであり、本来は法改正によるべきなのに、条例でやることは許されないとして、本件訴訟をおこした。 |
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〔2〕地方公共団体の課税自主権について
(原告の主張)
憲法92条からして、地方公共団体には直接具体的な課税権は与えられておらず、地方税法の定める準則や枠の下に課税権を付与されているにすぎず、条例は地方税法その他の法律又は法令に反しない範囲で制定できるにすぎない。
(被告の主張)
地方公共団体の課税権は地方自治の自治権の一環として憲法により直接与えられており、地方公共団体はいかなる租税をいかなる課税要件の下に賦課、徴収するかを自主的に決定することができる。
地方税法は地方公共団体ごとに課税自主権を行使することによる弊害を防止する観点から必要な規整を加えたものにすぎない。
(地裁の判断)
地方団体の課税権は、地方自治の自治権の一環として憲法上保障されているが、具体的な課税権は地方税法の規定に従って行使される必要がある。
(高裁の判断)
上記地裁と同じ考えに立ちながら更に加えて平成11年の地方分権改革に基づく地方自治法の改正で、国と地方公共団体の適切な役割分担や地方自治が強調されたことを受けて、課税条例が地方税法に違反するか否かは慎重に行うべきであるとした。 |
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〔3〕法人事業税の趣旨・目的
(原告の主張)
法人事業税の原則的課税標準を所得金額としているのは、納税者の担税力を配慮の上規定されたものであり、これは全国一律の最大限規制の強行法規の規定である。
(被告の主張)
法人事業税は地方団体の行政サービスの受益に着目して課される応益課税であり、本来は所得ではなく、事業規模を適切に反映する外形標準課税が望ましい。
(地裁の判断)
シャウプ勧告を受けて、応益原則に基づき事業の外形に課税標準を求める付加価値税が創設されながら、昭和29年の地方税法の改正により、同税が実施されることなく廃止され、所得を課税標準とする現在の法人事業税が整備されたのは、法人の担税力に配慮したからである。
(高裁の判断)
事業の情況に応じて、外形標準課税を認める特例規定があることからして、所得を課税標準とすることは全国一律の強い要請とまではいえない。 |
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〔4〕欠損金額の控除の趣旨・目的
(原告の主張)
法人税法上、欠損金額の繰越控除は必要的調整事項とされ、納税者がその適用を選択しなかった場合でも、税務当局がこれを是正して欠損金額の繰越控除を行うものとされている。法人事業税についても、同制度が取り込まれており、地方税法又は政令で特別の定めをする場合を除くほか、法人税の課税標準である所得の計算の例によるとしており、条例によって変更できるものではない。
この制度により、各事業年度単位毎に課税した場合の過重な負担を軽減し、法人の担税力を的確に課税に反映させることができる。
(被告の主張)
法人税においてすら、欠損金の繰越控除は青色申告法人の政策的特典にすぎず、まして応益課税である法人事業税では当期の事業活動の規模と何ら関連性のない繰越欠損金の控除は必須のものではない。行政サービスの対価としての応分の税負担の必要性を考慮した場合には、欠損金額の控除を暫定的に停止することも租税政策的には許容される。
(地裁の判断)
法人税において、青色申告法人に限定しているのは、控除を認める欠損金額についてその根拠を明確にする必要があるためにすぎない。欠損金の繰越控除により法人の担税力を的確に課税に反映させることができる。
(高裁の判断)
法人税において、欠損金の繰越控除が過去において全く認められていなかった時期もあり、シャウプ勧告も2年間に限って控除することを提案していた。注 現在も白色申告者には災害等の場合しか認められておらず、青色申告者も5年間ないし7年間に限られている。このようなことからして、欠損金の繰越控除は絶対的要請とまではいえず、立法的裁量にかかる問題であり、欠損金の繰越控除を時限的に認めない制度を創設することも許容される。
(注)シャウプ勧告は繰越控除は無制限に認めるべきとしており、2年間は繰戻還付のことである。 |
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〔5〕企業税の内容
企業税の課税標準は、法人事業税の所得の金額の計算上、繰越控除欠損金額を損金に算入しないものと計算した場合における所得の金額である。なお、この金額が繰越控除欠損金額を超える場合は、繰越控除欠損金額に相当する金額となる。
ここで、繰越控除欠損金額とは法人税法の規定による所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされている欠損金額に相当する金額をいう。
(設例) |
(注) 欠損金額の30%を企業税の対象にする方法として9.6× 0.3= 2.88→3%と税率で反映した。
なお、平成16年改正により所得割の部分へ縮少したので税率は2%になり、21年3月31日に廃止することが決まった。 |
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〔6〕企業税の制定経過
企業税という法定外普通税は次のようにして作られた。
1)地方税法262条(法定外普通税の非課税規定)2号「道府県外に所在する事務所及び事業所において行われる事業並びにこれらから生ずる収入」の反対解釈として、道府県内に所在する事業所及び事業所において行われる事業に法定外税を課すことは禁止されていないとして、企業税を考案した。
2)地方税法261条(総務大臣の同意)
以下の各号の事由にあたらなければ、総務大臣は同意しなければならない。
1号:国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ住民の負担が著しく過重となること。
3号:前2号にかかげるものを除くほか、国の経済施策に照らして適当でないこと。
前記〔5〕の設例のように、企業税と法人事業税の課税標準は同じでないので、1号には当たらない。また、国の経済施策の意義は特に重要な又は強力に推進することを必要とするものとされているので、企業税は3号には当たらない。こうしたことから、総務大臣は企業税に同意した。
また、法260条の財務大臣の異議や法260条の2の地方財政審議会の反対意見もなかった。
(注)東京都銀行税訴訟では、国の不良債権処理策が3号に当たるので、東京都は法定外普通税の導入をあきらめた。一方、神奈川県は法72条の19の「事業の状況」は特定の業種を想定していることから、全業種を対象の企業税では外形標準課税の導入をあきらめた。 |
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〔7〕法定税と法定外税の関係
(原告の主張)
地方税法が全国一律の規定として定めた法定税たる法人事業税の課税標準等を法定外税たる企業税の形式で実質的に変更することは法定税に係る規定の潜脱である。
法定税が主要なもので、これに付加するものとして法定外税がある。
(被告の主張)
地方税法は法定税と法定外普通税を並列的対等な制度と規定している。地方団体は法定外普通税の課税要件等を課税自主権に基づき定めることができる。
(地裁の判断)
シャウプ勧告においては地方団体間の事情の相異による法定外税の必要性が指摘されていたこと、平成11年の地方税法改正前は法定外税の許可要件として当該地方団体の税源及び財政需要の存在が必要とされていたこと等に照らせば、法定外税の趣旨は、第一義的には法定税を課し、実情に応じて法定外税を補充的に課することである。そうすると、地方税法の規定に従い、法定税を課すべき場合であるにもかかわらず法定外税の創設により、実質的に法定税について定めた規定の趣旨に反するような課税をすることは、法定税を法定の準則に従い課すべきものとした地方税法の趣旨に反し許されない。
(高裁の判断)
法定税が基幹的、法定外税は補充的なものではあるが、両者の間に優劣はない。地方税法は法定外普通税の課税要件等について特段の定めは置かず、それは地方公共団体に委ねている。もっとも、法定外普通税の形式を採りつつも、法定普通税の課税要件等それ自体を変更することは許されない。しかし、趣旨、目的は法定税と近似しているが、課税標準を異にする法定外普通税が地方税法により禁じられているという根拠はない。 |
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〔8〕法人事業税と企業税の関係
(原告の主張)
企業税は県税制研究会が最終報告書で述べているように、欠損金額のうち投機的活動に起因するものについてその繰越控除の適用の遮断を目的としており、いわば第2法人事業税である。
これにより、法定税たる法人事業税が実質的に変更されている。この変更は地方税法の改正によるべきなのに、法定外税という形式を用いて条例で変更することは地方税法の規制を潜脱するものである。
(被告の主張)
法人事業税を課した上で、当期利益のうち、法人事業税の課されていない部分に企業税を課すことにより、法人事業税を含めた全体として、行政サービスの受益と税負担との関係がより的確に反映される。つまり、企業税は法人事業税と相まって地方税本来の趣旨・目的の具現を助けようとする法定外税であり、まさに地方税法の許容するところである。
このような解釈は地方自治法2条12項注の定める解釈指針とも整合する。
(注)地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて、これを解釈し、及び運用するようにしなければならない。
(地裁の判断)
企業税は、法人事業税における欠損金額の繰越控除のうち一定割合についてその控除を実質的に遮断し、当該部分に相当する額を課税標準として法人事業税に相当する性質の課税をする効果を持つものである。そして企業税と法人事業税は、法人の行う事業を課税客体とし、また法人の事業に対する行政サービスの対価として応分の負担を求めるという趣旨・目的で共通している。にもかかわらず、企業税と法人事業税の欠損金の繰越控除は相反する方向で機能している。企業税により法人事業税の欠損金の繰越控除を定めた規定の目的及び効果は阻害されている。
(高裁の判断)
企業税が課されることにより、法人事業税において欠損金の繰越控除を認めて税負担を軽減することにした地方税法の目的及び効果は徹底されない結果を生ずることは否定し得ない。しかし、企業税の税率が2%や3%にとどまることも考慮すれば、そのことから、直ちに地方税法の欠損金の繰越控除規定の目的及び効果を阻害するとまではいえず、両者の間に矛盾抵触があるとはいえない。2つの税制の目的及び趣旨が異なるために、一方の政策の一部が他方の政策により減殺されてしまうことは起こり得るからである。
企業税は行政サービスを享受し、かつ当該事業年度において利益が発生していながら、欠損金の繰越控除により相応の税負担をしていない法人に対し、担税力に見合う税負担を求めることを趣旨、目的としている。したがって、このような意味の税は理念としては応益性を考慮しながら課税標準の選択においては応益性をほとんど考慮に入れていない現行の法人事業税とは別個の、より応益性を重視した性格を有する税として成り立ち得る。そうすると、企業税は法人事業税を補完する別の役目として併存し得る実質を有する。
企業税は法人事業税が控除する繰越欠損金に課税するものであるという意見があるが、企業税はあくまで当期利益の内の繰越欠損金相当部分に対し課税するものである。 |
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〔9〕法律と条例に関する最高裁判決
昭和50年9月10日の徳島市公安条例事件最高裁判決は反戦集会の集団行進のだ行進をせん動した者に対し道路交通法と条例の両方に違反したとして罰金刑が課せられた事件である。
地裁と高裁は憲法94条の趣旨から条例は「法令に違反しない限りにおいて」すなわち国の法令と競合しない限度において制定しうるものであるから、条例は道路交通法の道路使用許可の対象とされるものを除く行為を対象としうるのに、本条例はその内容が明確でないので憲法31条の趣旨に反し、条例については無罪とした。
これに対し最高裁は大法廷で条例についても有罪とした。
その理由は、本条例は道路その他公共の場所における集団行進及び場所のいかんを問わない集団示威運動を対象とし、その目的は道路交通秩序の維持にとどまらず、地方公共の安寧と秩序の維持であり、道路交通法の目的である道路交通秩序の維持よりも広大でかつ総合的である。
条例が法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾接触があるかどうかによってこれを決しなければならない。
法令と条例の目的が同一でない場合で、条例か法令の目的と効果をなんら、阻害しない時、また法令と条例の目的が同一の場合で、法令が全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨でなく、各地方公共団体に、別段の規制を施すことを容認する趣旨である時には、条例は国の法令に違反しない。
道路交通法は各県の公安委員会に禁止事項の内容を裁量で決定することをゆだねている(注) ことからして、全国内に一律に定めることを避けている。このことからして、道路交通法による規制は、条例の規制の及ばない範囲においてのみ適用される趣旨と解される。
(注) 道路交通法77条1項4号「道路において行為で、公安委員会が必要と認めて定めたものをしようとする者」
この最高裁判決の本件へのあてはめについての、当事者の主張と裁判所の判断は次のとおりである。
(原告の主張)
企業税と法人事業税の目的は同じで、法人事業税の欠損金の繰越控除は全国一律に規制を施す趣旨である。かりに、両者の目的が異なったとしても、企業税は法人事業税の目的と効果を阻害している。したがって、企業税はこの最高裁判決の基準に照らして、違法・無効である。
(被告の主張)
地方税法は法定外税たる企業税を創設することを許容しており、この最高裁判決の前提としている法律と条例の関係とは異なっているので、この最高裁判決の基準は当てはまらない。かりに、この最高裁判決の基準の適用があるとしても、適法である。
なぜなら、企業税と法人事業税の目的は異なり、かつ企業税は欠損金の繰越控除により減少した法人事業税の分を補うことにより、受益に応じて負担してもらうという法人事業税の本来の目的を推進するゆえ、法人事業税の効果を阻害していない。
かりに、企業税と法人事業税の目的が同じだとしても、法人事業税の欠損金の繰越控除は全国的に一律な規制を施す趣旨ではない。
(地裁の判断)
なし。
(高裁の判断)
この最高裁判決のいう「矛盾抵触」というのは、一方の目的や効果が他方によりその重要な部分において否定されることを意味する。これを本件について当てはめると、地方税法の法人事業税に関する規定が、条例で企業税を創設して繰越控除欠損金額に相当する当期利益に課税することを許さないとしているかどうかが問題になる。
企業税は税率が2%、3%と小さく法人事業税の重要な部分において効果を否定していないので、地方税法は企業税を課すことを許容していると考えられる。 |
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〔10〕結論の導き方
地裁
1)地方税法の趣旨は法定税は法に定められた規定に従って課されるべきであり、法定外税の利用はこの範囲で認められる。
2)企業税と法人事業税は課税客体、趣旨、目的が共通するから、企業税は法人事業税と類似の性質の税である。
3)企業税は法人事業税の規定の内、欠損金の繰越控除と制限税率の規定の効果を阻害しており、これは地方税法の趣旨に反する。
4)企業税は、法人事業税と一体として、実質的には法人事業税に係る課税標準の規定を変更している。法定税の課税標準の変更は、地方税法の改正かまたは平成15年改正前の法72条19の特例規定により行われるべきで、法定外税の形式で実現することは地方税法の趣旨に反する。
5)企業税は法人事業税の欠損金額の繰越控除の規定の趣旨に反して違法であるから、本件条例は違法である。
6)地方自治法14条1項「地方団体は、法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができる」地方税法2条「地方団体は、地方税法の定めるところによって地方税を賦課徴収することができる」に照らせば、本件条例は地方団体の有する条例制定権を超えており無効である。>
高裁
1)地方税法の趣旨は、法定税は全国一律に課すべきであるが、法定外税は各地方公共団体の裁量に基づいて課すことを許し、総務大臣の同意を通じて、調整することにとどめている。
2)憲法92条は地方公共団体に課税権を保障し、地方税法の内容が地方自治の本旨にかなうよう要請している。そして、平成11年の地方分権改革に基づく地方自治法の改正により国と地方公共団体との適切な役割分担や地方自治の本旨が強調され、これは地方税法を解釈する場合にも通用する。
3)企業税と法人事業税は趣旨・目的が異なり、法人事業税を補完する別の税目としての性質を有する。
4)法人事業税を地方税法の規定に従って課した上で、法人事業税が捕捉していないところの課税されない当期利益の部分に担税力を見い出して課税するのが企業税である。したがって、企業税は法人事業税の規定を変更するものではないから、これと矛盾抵触するものとは解されずこれに違反するものではない。 |
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〔11〕検討
上記表の各項目について検討する。
1)について
高裁の言う本来の法人事業税とは法人事業税と企業税を合計したものである。
この「本来」とは地方公共団体が独自に主張している内容である。すなわち、地方公共団体の立場では、法人事業税は外形標準課税が最も望ましい。なぜなら、赤字会社でもサービスを受けている以上は税金を払うのが当然であるからである。とはいえ、所得を課税標準とするのが現在の制度であるので赤字会社に法人事業税を課すことはできない。ここで、地方公共団体に第1の不満が生じる。
そして、第2の不満が欠損金の繰越控除である。法人は、赤字年度にサービスを受けていながら法人事業税を払わず、黒字年度では赤字年度の欠損金を利用して法人事業税を少なくしている。
そこで、地方公共団体の立場で次に望ましい法人事業税は黒字年度では赤字年度の欠損金を使わせないことである。
これを実現するために考案されたのが本件企業税である。ただし、欠損金の内30%を使わせないことにとどめた。
一方、現行の法人事業税は納税者の負担を地方公共団体の税収入の両方のバランスを考慮して作られている。欠損金の繰越控除もその一部である。
本件企業税はこのバランスをくずして、地方公共団体の税収入の方にウエイトをかけることを目指して作られた。地方公共団体はそれを正当化するために、これが本来の法人事業税であると主張し、高裁はこれを受け入れた。
しかし、現行の法人事業税を地方公共団体の言う本来の法人事業税にするために地方税法の改正でなく、地方条例の制定でできるかというと疑問である。
2)について
被告は、この規定の反対解釈により企業税を創設し、総務大臣の同意を得て本件課税を行なった。しかし、そうであるからと言って企業税が適法であるとは必ずしもいえない。
なぜなら、総務大臣の同意は除外要件と国の経済政策への悪影響がなければ、いわば自動的になされるのであり、違法か適法かという観点で総務大臣は同意をするわけではないからである。
3)について
憲法では、地方自治の本旨とは団体自治と住民自治の2つの意味における地方自治を確立することを意味するとされる。前者は国から独立して地方公共団体が自己の事務を自己の機関により自らの責任において処理することであり、後者は地方の行政を地方の住民が自己の意思に基づき自らの負担と責任において処理することである。
しかし、被告が主張している地方自治の本旨の現状は住民自治を後に置いて、団体自治を全面に出しているもののようである。例えば、住民自治のひとつである住民訴訟は平成11年の地方分権一括法成立後の平成14年に住民自治の視点からは後退した形で改正された。すなわち、改正前は住民が地方公共団体に代位する方法で首長等の個人へ直接損害賠償請求をしていたのだが、改正後はまず住民が地方公共団体に対し上記請求をせよという訴えをし、それが認容されたら、次に地方公共団体が上記請求の訴えをおこすという2段階の方法に改悪された。
これは、首長個人に対する賠償責任を認める判決が多数出たため、それを押えるための改正要求を地方公共団体が声高にしたことによる。
住民訴訟に関する現在の状況は、第1段階で認められた首長に対する損害賠償請求を議会が権利放棄する議決をして司法判断を無視しようとしていることである。これにより、平成14年の改正の地方公共団体の目的は達成されることになる。
本件について地方自治の本旨をみると、
まず、団体自治については、企業税は国が定めた地方税法の規定する法人事業税の領域にかかわってくるので、団体自治はこの点で制約を受けると思われる。
次に、住民自治については、選挙権のない法人(注) がその意思を反映させる方法はあるのか、それがないのに負担と責任だけ負わされて良いのかという点がある。
現在の法定外普通税の納税義務者を見ると住民自治とは関係のないものがほとんどである。 |