税経新人会の魅力の一つは、税務調査に強い税理士になれる会だということです。なぜなら、新人会は納税者の権利を擁護する立場に立っているからです。そのことについて述べてみたいと思います。
1.税務調査の現場での対応
「最近、税務調査で一言もしゃべらない税理士さんがいます」「税務調査でどう対応したらいいのかがわからない若い税理士さんが増えています」「権利を主張する税理士さんが少ないです」と、税務署の元調査官からこんな話を聞きました。税務調査の立ち会いは、税理士としての重要な業務です。税務調査での納税者との関係はいかにあるべきか、調査官との対応はどうしたらいいのか。「税理士とは何か」の理念と調査の経験が求められる業務です。
事前通知のある調査、事前通知のない調査、一般調査、特別調査、リョーチョー調査、強制調査、調査官一人の調査、調査官複数の調査など、また納税者の性格や考え方、状況などの違いがあり、色々なケースに合わせて対応しなければなりません。
強制調査の経験は未だありませんが、強制調査の法的知識や調査現場の様子も、ある程度知っておく必要があります。任意調査も色々なケースがあり、ケースに応じた柔軟な対応が求められます。若かった頃、税務調査の現場での対応が不十分で、納税者との関係や調査官との関係がギクシャクし、思うようにいかなかったことが思い出されます。
税務調査の現場での対応をどうすれば、納税者の人権と財産権を守ることができるのか、この自問自答に新人会が大いに役立ちました。新人会の研修、「税経新報」の記事、新人会の「税務調査十カ条」、会員からの色々なアドバイス、今年亡くなられた北野弘久先生の「北野税法学」など、「税理士は納税者の権利を擁護する代理人制度である」との理念を、共有する者同士ならではの役立ちでした。税務調査への対応はこの理念以外にないと考えます。
税務調査の現場での新人会の良さとして、こんな例もあります。ある会員の関与先で起こった15人の調査官による強権的なリョーチョー調査に対し、人数をそろえて対応するための呼びかけに、理念を同じくする新人会の税理士16人が馳せ参じ、強権的な調査を抑え込んだ事件がありました。また今、「査察くずれ」の事案で査察部門の指示で税務署が問答無用の修正申告を強要する事件が起こり、会員からの呼びかけで新人会の税理士が即座に12人集まり、納税者の権利を守るための対応を始めています。
税務調査の現場で納税者の権利が擁護できた優れた事例は、新人会の会員が多数持っていると思います。税務調査に立ち向かうノウハウの数々を学び合うことは、新人会ならではの大きな魅力です。税務調査の現場での優れた対応ノウハウを会員同士がもっともっと深めれば、新人会の魅力が一層増すでしょう。 |