論文

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「税務支援」の正体みえたり!
大阪会  清家  裕

2月初旬、N税理士から「税務支援の日に無予告の税務調査があり、往生しましたんや」という電話がかかってきた。事の経過はこうだった。

2月4日、N税理士が「公的年金の事前相談」の「税務支援」に従事していた最中、関与先に無予告の税務調査があり、「税務支援の最中なので調査は受けられない、事前通知のない調査は受けられないから、今日は帰ってほしい」と要請したにもかかわらず、調査官、統括官は頑として譲らず、副署長と交渉してようやく調査官は引上げた。この間、電話での交渉に2時間程要し、「税務支援」どころではなかったようである。「税務支援」に来ていた他の税理士も心配していたようだった。

「公的年金の事前相談」は大阪国税局の「外部委託事業」で、いわゆる外注である。随意契約の公募方式で発注し、落札した近畿税理士会が会員税理士を公募で派遣している。「外部委託事業」は近畿税理士会にとって、いわゆる下請である。「外部委託事業」には、他に「記帳指導」「確定申告無料相談」「確申期電話相談」がある。これらの「外部委託事業」を日本税理士会連合会は「受託事業」と称して、「税務支援」に取り込んだのである。

大阪国税局の「確定申告無料相談」の仕様書には、「地区相談会場等において、税理士が直接、税務書類等の作成に関する指導及び税務相談を行うとともに、作成された確定申告書等をその場で収受することにより、税務署職員の指導事務量の軽減と、確定申告期間中に申告相談や申告書提出等のために来署する者の削減を図ることを目的とする。」となっている。

では、何のために事務量の軽減や来署者の削減をするのか。税務署職員が捌き切れない相談者を外部委託によって対応するためなのか。実はそうではないらしい。国税局の四つの「外部委託事業」は、税務署職員が従来やってきた「指導・相談・調査・広報」の業務体制から、「指導・相談」業務を投げ捨て「調査・徴収」の業務に専念する体制のためだといわれている。「受託事業」の「税務支援」は、それを保証するための税理士会の下請事業である。

税理士を「外部委託事業」に動員して指導・相談に従事させておいて、手空きになった税務署職員が、無予告でその税理士の関与先に税務調査をかける。「外部委託事業」=「受託事業」の「税務支援」は税務署の税務調査のためであることが、このN 税理士の事案で白日の下にさらけ出される結果となった。「税務支援」の正体みえたりである。

超多忙な確定申告期に税務調査をやる暇があったら、税務署職員こそ行政サービスとしての指導・相談をおこなうべきである。また、「税務支援」開始日から確定申告終了日までの税務調査は、当然自粛すべきである。そして、無予告調査は無用な軋轢を生むだけであり、調査に際して事前通知は必ずおこなうべきである。これらの事をやらない限り、N税理士の事案が繰り返されることになる。

(せいけ・ひろし:副理事長)

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