論文

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ウォール街の金融危機と世界大不況
  群馬大学教授  山田  博文  

1. はじめに

いま、世界に衝撃が走っている。金融中心地アメリカのウォール街で、大手金融機関がつぎつぎに破綻しているからである。世界の金融機関は狼狽し、経営者達は、売れ行き不振と株価の暴落に頭を抱えている。欧米では、従業員の大量解雇といった事態も発生している。世界中が金融混乱に巻きこまれ、やってきつつある大きな不況の影におびえている。

世界の首脳達は鳩首協議に走り、サミットを開催しても、内部での意見の対立を克服できず、効果的な政策が打ち出せないでいる。それは、ほぼ1世紀にわたって続いてきたアメリカを頂点にした世界体制・パックスアメリカーナ時代の終わりのはじまり、ともいえる歴史的な地殻変動を示しているようである。

いま、世界で何が起こっているのか、これから世界経済はどうなっていくのだろうか、21世紀の入口で、わたしたちは、のっぴきならない事態に直面しているようだ。

2. 国際金融センターの機能麻痺

周知のように、アメリカのニューヨーク・マンハッタン地区・ウォール街は、世界中の巨大金融機関の集積地になっている。そこは、ドルとアメリカ中心に組み立てられた戦後の国際金融システムにおいて、世界中のマネーが集中し、さまざまな金融取引が展開される国際金融センターとして機能してきた。ウォール街は、いわば世界のマネーの心臓部にほかならない。今回、その心臓部で、金融機関の経営破綻が広がっている。

ウォール街の金融機関は、世界中からマネーを集め、さまざまな金融商品や取引手法に組み替えて運用し、気の遠くなるような巨額の利益を手にしてきた。ちなみに、今回破綻した全米第4位の大手証券会社リーマン・ブラザーズのファルド最高経営責任者(CEO)は、2000年以降、4億8000万ドル(約500億円)もの高額の報酬を受け取っていた。アメリカ議会の公聴会では、彼がフロリダに1億4000万ドル(約150億円)の別荘などを保有していることなども取りあげられた。公聴会の出席議員のあいだでは、「ウォール(金融)街の幹部は利益を私有するが、損失は国民に押しつける」との批判が続出した。

今回の金融危機が、過去のさまざま危機と違っているのは、戦後の国際金融センター・ウォール街の金融ビジネスが破綻し、世界のマネーの心臓部で機能麻痺が起こっていること、その影響が世界大不況をもたらしつつあることである。

アメリカでは、この1年間で、まず、銀行では、破綻に瀕したワコビアが151億ドル(1兆5800億円)で、ウェルズ・ファーゴに買収された。また業務停止となった貯蓄貸付組合大手のワシントン・ミューチュアルは、JPモルガン・チェースに買収された。買収するサイドの巨大銀行も、シティグループは、アブダビ投資庁から出資を受け入れることになったし、そもそも銀行全体が、金融救済法による公的資金(全体でほぼ75兆円)で、政府から不良債権を買い取ってもらわないと破綻しかねないほどの経営危機に陥っている。

証券会社となると、さらに深刻で、壊滅状態にある。まず、山一証券を買収し日本でも有名になった全米第2 位の巨大証券会社メリルリンチは、バンク・オブ・アメリカに救済合併された。5位のベアー・スターンズも、JPモルガン・チェースに救済合併された。あのライブドアに買収資金を提供していた4位のリーマン・ブラザーズは、破綻してしまった。政権が替わっても絶えず時の政府の財務長官を出し続けている世界最大の証券会社ゴールドマン・サックスは、公的資金で救済してもらうために銀行に転換した。2位のモルガン・スタンレーも、同じ理由で銀行への転換を図った。

保険会社では、子会社アリコなどを売却しはじめた保険大手のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)は、中央銀行のFRBからほぼ15兆円の融資を受けても追いつかず、政府からほぼ4兆円の公的支援(資本注入)を受けた。

こうした事態は、アメリカ型金融モデルが破綻したことを意味している。周知のように、わが国は、1990年代後半以降、貯蓄よりも投資を優先するアメリカ型金融モデルをめざして金融ビッグバンを強行してきたので、早晩、金融モデルの再見直しに着手せざるを得なくなるであろう。

これほど深刻な大手金融機関の破綻と再編成は、戦後60数年のうちではじめてのことであり、1930年代の世界大不況の再来を暗示している。戦後、世界のさまざまな金融ニーズに対応し、かつ金融商品や取引手法自体を提供してきた国際金融センターは、機能麻痺の状態にある。その影響は広範囲かつ深刻であり、アメリカ国内だけでなく世界各国の経済へも波及している。

3. 巨大投機市場ー住宅バブルと証券化商品

ウォール街の金融危機の直接のきっかけは、2007年夏頃から表面化したアメリカの住宅市場をめぐるサブプライムローン(信用力の低い層への略奪的な変動金利型住宅ローン)問題である。

住宅バブルが進行し、住宅を持てない層が増大していたなかで、アメリカ国内に流入する世界のマネーに新しいビジネスチャンスを提供しようとする金融機関は、住宅市場をターゲットにした新しいビジネスに着手した。住宅ローンを担保にした証券化商品(MBS=Mortgage Backed Securities, CDO=Collateralized Debt Obligations )を組成し、それを販売するビジネスである。これは、ローンが焦げ付かないうちに、証券にして販売し、広く投資家にリスクを転嫁する仕組みでもあった。

最初の3〜5年は低金利で誘い込んで住宅ローンを組ませ、その後は2倍もの高金利に変動する略奪的なローンのため、遅延や返済不能に陥る事態が広がった。そのようなアメリカの住宅市場の問題なのに、その影響が世界中に及ぶことになったのは、住宅ローンを証券に組成し、その証券化された金融商品(MBSやCDO)が世界中に販売されたからであった。住宅バブルの崩壊で、MBSやCDOの価格が暴落し、その推計損失額は、IMFによれば、2008年4月段階で、ほぼ1兆4000億ドル(150兆円)に達した。

ウォール街の金融機関は、新しいビジネスのフィールドを自分たちで創り出し、莫大な利益を手中にしてきた。世界中のさまざまなリスクこそ、自分たちの新しいビジネスチャンスであり、リスクがない場合には、自らリスクを創り出してきた。

こうしたビジネス展開の背景には、資本主義経済にとって不可避の過剰マネー(資本)の存在がある。利益の追求が最優先される資本主義経済にあっては、社会や貧しい国からどんな金融ニーズがあっても、そこに利益が期待されなければ、マネーは投資されない。人類のほぼ40%にあたる25 億人の人々が1日2ドル未満の生活(世界銀行「世界開発指標(WDI)2007」)を余儀なくされていても、過剰なマネーは、そのような国や人々には向かわず、利益を生み出す機会を求めて世界中を徘徊する。マネーが入り込んだ市場は、価格が異常に膨張する。株式バブル、不動産バブル、ITバブル、住宅バブル、原油バブル、などさまざまなバブル市場の膨張と崩壊が繰り返され、経済を混乱に陥れてきた。

投資機会がなければ、金融機関は、自ら投資機会を作り出してきた。投資(インベストメント)機会というよりも、むしろ、金利や価格の変動に利益を見いだす投機(スペキュレーション)のための機会を創り出してきた、といってよい。投機(スペキュレーション)とは、新しい富は何も生み出さず、もっぱら金利や価格の変動を利用して、自分たちに有利に富を配分させる寄生的・腐朽的な経済行為である。各種のローン、リース、不動産などを担保にして新しく組成される証券化商品は、アメリカとドルを中心にした世界の過剰マネーに、ハイリスク・ハイリターン型の新しい大規模の投機的なビジネスチャンスを提供してきた。

バブル経済の膨張と破裂が繰り返されたのは、新自由主義的な規制緩和と投機的なビジネスチャンスを優先したアメリカ・イギリス・日本であり、その結果、国民経済と国民生活は多大なリスクにさらされた。だが、市場原理と新自由主義に距離を置き、公的な規制を緩和しなかったドイツ・フランスでは、バブル経済は発生していない。

4. アメリカ型金融モデルの台頭と崩壊

アメリカ型金融モデルの特徴は、「銀行よさようなら、証券よこんにちは」というキャッチフレーズに象徴される。つまり、預金の受入と貸出といった伝統的な銀行業務にともなう金利収入よりも、資産管理や企業の合併買収(M&A)、さまざまな金融商品の開発、投資、売買にともなう手数料収入などの非金利収入を最優先する金融ビジネスである。実際、アメリカの大手金融機関の利益構成は、7〜8割が非金利収入によって占められている。

アメリカ型金融モデルが広がれば広がるほど、物づくりから離れて、より効率的にマネーを運用することが最優先される。人間の生存にとって不可欠の衣食住に関連した物づくりや製造業とは乖離して、マネーが一人歩きをするようになる。

マネーが自由に飛び回れるように、各種の規制を緩和し、国境すらなくす。旧ソ連の崩壊と中国の市場経済の導入によって、経済取引上の国境の壁はなくなり、市場経済の原理で世界の経済活動が行われるようになった。そのことは、マネーの地球的な規模での運動と拡大した世界市場の分割合戦に拍車をかけた。

マネーが大掛かりに運動するためには、その運動の受け皿が必要なので、次々に新しい金融商品が企画立案され、販売される。金融デリバティブのような新しい取引手法も開発され、金融市場は爆発的な膨張を遂げていく。そのような金融市場の巨大化に即応して、金融業界も巨大化する。

世界の金融市場は、アメリカの金融機関を中心に、わずか1桁の巨大金融機関によって独占される。実際、国際発行株式の引受の場合、イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙によればi 、すでに10年前の1998年の時点で、今回破綻や再編を余儀なくされたアメリカの大手証券会社5社の市場占拠率は、ほぼ40%にも達していた。上位10社なら70%台の市場占拠率を記録した。

また経営的には、銀行と証券会社が一体化することによる投機の危険、それぞれの業務の違いと利益相反などを考慮した1930年代の銀行・証券・保険の分離規制(グラス・スティーガル法)が緩和・撤廃され、あらゆる金融ビジネスが効率的に展開できるような金融ガリバー、むしろ巨大で複雑すぎて自分自身すら管理できないような巨大な金融コングロマリットを誕生させてきた。

周知のように、日本版金融ビッグバンは、アメリカ型金融持ち株会社を誕生させ、三菱UFJ、みずほ、三井住友の3つの金融ガリバーが出現した。この3つの金融ガリバー達の目標は、アメリカ型金融モデルを体現することだったので、今となっては、かれらの希望の星はかすんでしまったことになる。

人々の暮らしや国民経済と乖離した金融ビジネスは、人類に対して貢献することもなく、実体経済の金融ニーズとは無縁に展開されるので、もはや存在価値を喪失したも同然であろう。アメリカで製造業が衰退してきたこと、財政赤字と貿易赤字を拡大しつつ、中国や日本から、暮らしや経済に必要な物を大量に輸入するようになったのも、アメリカ経済においてアメリカ型金融モデルが支配的な傾向になったからである、といえる。

5. 経済のグローバル化、情報化、金融化

アメリカ型金融モデルと金融ビジネスが一世を風靡したのは、20世紀末から今日にかけて、世界経済のあり方が大きく変化してきたからである。その変化は、さしあたって、以下の3つのキーワードによって、読み解くことができようii

第1に、経済がグローバル化したことである。グローバル化(Globalization)とは、地球(Globe)的な規模で経済活動が行われることである。世紀末には、世界の200カ国ほどの国々で、ほぼ共通して市場経済システムを採用することになり、1国の経済規模すら上回る巨大な多国籍企業・金融機関が登場し、地球そのものを自分たちの掌に置いたようなビジネスが展開されるようなった。

資金や原材料を地上のもっとも安価な国から調達し、それを人件費の安価な国に運んでいって、そこに工場を立地し、生産する。完成品は、高所得の国々に運んで行って、販売する。このような地球的な規模の経済活動を行うには、手足を縛られる各種の規制や国境の壁を緩和・撤廃しようとする。

第2に、経済の情報化が進展したことである。インターネットなどの情報通信技術(Information Technology)の発展は、地球の裏側との取引でも、相手がすぐ隣にいるような速度、リアルタイムの速度で遂行できるようになった。いままで経験したことのないようなスピードでビジネスが展開される時代がやってきた。

それだけではない。本社(本店)と世界各国に配置された支社(支店)をコンピュータのグローバルなネットワークで接続する。このネットワークを利用すると、時々刻々、地球上のどこかで起こる出来事も、自分たちのビジネスチャンスにできるようになる。まさに地球を掌の上に置いてビジネスを展開する時代がやってきた。

第3に、このような恩恵を最大限に引き出したのは、金融ビジネスであり、経済の金融化、さらには金融の証券化が急展開してきたことである。というのも、マネーや各種の金融商品の取引は、質的には同じで、量的に異なるだけの数字の処理のために、コンピュータの性能を最大限に引き出だせるビジネスだからである。グローバルに連結されたコンピュータのネットワークのなかで、一瞬でも速く取引相手を探し出し、100億円単位の取引も、わずか10秒ほどで完結させる。

ロンドン→ニューヨーク→東京、と地球の自転にあわせて次々にオープンする市場において、24時間休むことなく取引が継続する。時間と空間を超えたビジネスが行われる時代となった。予測が的中すれば、巨万の富を手にするが、そうでない場合には、破産するハイリスク・ハイリターン型のビジネスが展開される。

かのジョージ・ソロス率いるヘッジファンドは、1992年のイギリス・ポンドをめぐるイングランド銀行との通貨攻防に勝利し、わずか数ヶ月で9億5000万ドル(ほぼ1200億円)を手中にしたが、その6年後の1998年のロシア危機では、20億ドル(ほぼ2560億円)の損失を被った。イギリス王室の資産管理を担当した名門マーチャント・バンクのベアリング社は、弱冠28歳の支店長の取引(日経平均株価指数先物)の失敗で、233年の歴史の幕を下ろしてしまった。

アメリカ型金融モデルと金融ビジネスは、このような経済のグローバル化、情報化、金融化の流れに沿って、かつ自らその流れを創り出しつつ展開されたことになる。

6. 世界大不況の足音ーエコノミストの驚愕

今回の金融危機は、過去の危機とはまったく違った問題iiiを内包する。戦後の国際金融センター・アメリカのウォール街発の危機である点はすでに指摘した。加えて、証券化という金融手法によってリスクを転嫁したはずなのに、その転嫁されたはずのリスクが世界の金融市場において一挙に表面化したことである。

さらに、販売された証券化商品は、世界中に拡散しているので、各国の金融機関や投資家は巨額の損失を抱えこむことになり、世界の実体経済に対しても、深刻な影響を与え、世界の経済混乱と不況への引き金を引いてしまったことである。

そのうえ、今回の危機の深刻さは、規制当局が実態をよく把握できていないことにある。というのも、金融デリバティブ取引の場合、単に取引額が巨額であるだけでなく、規制のない自由な相対取引のため、簿外で処理され、金融当局に報告されない。そのため、破綻に瀕した金融機関の報告があってはじめて、事態の深刻さが表面化する。

そこで、現場やさまざまな情報に通じている玄人筋の声にも耳を傾けよう。かつての大蔵省(現財務省)財務官で、ヘッジファンドやウォール街の情報にも通じ、「ミスター円」と呼ばれる榊原英資氏は、新聞のインタビューで、今回の金融危機について、次のように答えている。

すなわち、「今起こっていることは戦後最大の金融危機だ。しかもまだ2合目くらい。・・・市場は金融混乱があと2年以上続くとみている。そして実体経済に波及するのはさらにその後だ・・・米国金融王国の終わりの始まりが来た、と見るべきだ」 iv、といった厳しい指摘である。

まじめな物づくりを放棄し、金融主導で濡れ手に粟のビジネスに邁進してきたアメリカが、金融危機に陥ることによって、銀行は貸し渋りに走り出した。そのため、企業も、個人も、貯蓄よりも投資と消費に走っていた従来型の行動パターンは、資金面での支えを失ってしまった。借金をしてでも世界中の物を大量に消費してきたアメリカ経済が、物を買わなくなってしまった。

トヨタのレクサスも、中国製の衣料や食品も、ヨーロッパのブランド品も、消費大国アメリカで売れなくなってしまった。世界は、なんでも買ってくれ、消費する巨大な胃袋を失ってしまった。アメリカ相手の世界の輸出産業は、売上高を下方修正し、赤字に陥る企業も続出した。アメリカ発の金融危機と不況の大波は、世界に伝播してきた。

7. 激変する21世紀の世界経済地図と日本の選択

21世紀の世界経済地図は、そう遅くない時期に激変する。その兆候はすでに現れている。中国のGDPは、すでにドイツを抜き去り、世界第3位の経済大国の地位にある。日本も、2015年頃には、中国に追い抜かれてしまう。いま、世界経済地図は急速に塗り替えられようとしている。

「人類史上最大規模かつ最速で貧困層の削減を達成した」v 中国は、すでに「世界の工場」になり、さらに「世界の市場」へと発展してきた。

21世紀の前半において、従来のようなアメリカを頂点にした先進工業国の世界体制は崩壊するようだ。アメリカのゴールドマン・サックス社の調査研究vi によれば、中国の経済規模(GDP)は、2040〜50年にアメリカを抜き、世界最大の経済大国に君臨する。中国だけではない(図表1及び2を参照)。BRICs 諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)は、21世紀の世界経済を主導するであろう。ドルとアメリカの時代の終わりがはじまっている。

図表1

図表2
日中経済関係も、近年著しく進展し、すでに日中貿易額(27兆8743億円ー2007年)は、日米貿易額(25兆2448億円ー同年)を上回る時代になった。日本の最大の貿易相手国は、アメリカから中国に交代した。今後、日中貿易はさらに拡大していく。そして、近い将来、中国の所得水準が上昇し、一家に一台の自家用車を持つようになれば、日本海を挟んだすぐそこに、アメリカのほぼ4倍もの巨大市場が登場することになる。日本の対外関係のあり方は根本的に変わっていくであろう。

現在の日中関係は、経済は熱く、政治は冷え込んだ「政令経熱」のゆがんだ関係にある。だが、日本の21世紀の国際社会における地位を構想したとき、こうした中国とのゆがんだ関係はすぐにでも改善することが重大な課題となり、さらにはヨーロッパ連合(EU)に学び、当面はアジア経済共同体のような関係を創出することが求められる。

たしかに当面は、世界経済は大きな不況に飲み込まれて行くであろう。だが、中長期的にみれば、21世紀はアジア経済圏を中心にして世界経済が動く時代になる。

ヨーロッパ連合(EU)は、経済機関車のドイツと外交上手なフランスを軸にしてアメリカ経済圏やアジア経済圏に対抗してきた。この例にならうなら、経済機関車としての日本と外交上手な中国を軸にしてアジア連合(AU)のような国際的な連合体がアジアにおいて創出されるなら、その先には大きな展望が開けるであろう。日本は、現在、歴史的な選択を迫られているのである。
(やまだ・ひろふみ)
i Financial Times、December 31,1998
ii 現代経済の劇的な変化と金融ビッグバンなどについて、より詳しくは、拙著『これならわかる金融経済(第2 版)』大月書店、2005年12月、を参照されたい。
iii 詳しくは、「米国初の金融危機とドル体制のゆくえ」『経済』2008年10月号、18-19ページ、を参照されたい。
iv 『朝日新聞』、2008年10月7日。
v 「ルポ  中国西部成長の奇跡」『週刊東洋経済』2008年8月9日号、104ページ。
vi 「 Dreaming With BRICs : The Path to 2050」(GoldmanSachs ,Global Economics Paper No:99、1st October 2003)

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