審査庁が、審査請求についての裁決をする場合、その裁決が審査請求人の主張の全部を認容するものでない場合は、特定の場合を除いて、全国に一つだけ設けられる行政不服審査会に審理員の意見書を添付して諮問しなければなりません(法案42条)。その答申を受けた後、審査庁は遅滞なく裁決をすることになります。審査会の答申は、裁決を拘束するものであるのかどうかについては規定がありません。もっとも、審査会が答申を出す事案は、重要な行政先例となるようなものにかぎられ、「先例となる答申が存在し、調査審議しても明らかに同じ結果になるものなど、処分の類型や審査請求の趣旨及び理由等に照らし、審査会等の関与を要しないと認めるもの」については、意見を述べないというような運用を予定していることが最終報告から読みとれます(最終報告34〜37頁)。
したがって、行政不服審査会が今回の行政不服審査法の全文改正の目玉だという派手な宣伝にかかわらず、この審査会が実際に果たす役割はそれほど大きなものではないように思われます。
それにもかかわらず、審査会の組織や運営、調査審議手続などについては、法案第四章「行政不服審査会」にこと細かに規定されています。その概要を示すと次のとおりです。 |
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(1) |
審査会は、総務省に置かれ、情報公開法、個人情報保護法に規定された情報公開・個人情報保護審査会の権限を引きつぐ(法案60条)。 |
(2) |
審査会は、会長1名、委員23名で構成され、うち7名は常勤とする(法案61条)。 |
(3) |
会長及び委員は両院の同意を得て総務大臣が任命、任期は3年とする(62条)。 |
(4) |
必要に応じて総務大臣は専門委員を任命することができる(63条)。 |
(5) |
個別事案を処理するため委員3名による合議体を作るが、重要事案については委員全員で審議する(64条)。 |
(6) |
審査会は、「必要があると認められる場合」は審査請求事件について、審査請求人、参加人、審査庁に書面の提出を求め、陳述、鑑定等必要な調査をする(66条)。 |
(7) |
審査会は、審査関係人(審査請求人、参加人、審査庁)から申立てがあった場合には、口頭で意見を述べる機会を与えなければならないが、審査会がその必要がないと認めるときはこの限りでない(67条)。 |
(8) |
審査関係人は、審査会に提出された書面等の閲覧を求めることができる(70条)。 |
(9) |
審査会は、諮問に答申をした時は、答申書の写しを審査請求人、参加人に送付し、かつ、その内容を公表する。 |
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以上の概要でわかるように、審査請求人の申立てがあった場合は、すべて口頭意見陳述や書類等の閲覧請求が認められるというわけではないと解されます。 |