さっそく、次の日××支店長に電話します。「取引をやめて下さい。」
「え?どうしたんですか?やっと今、少しずつ目が出てきそうなときに、これまでずっと我慢して来て、これからってときにどうしたんです?」
「いや、もういいんです。無理です。やめたいので。」
「ダメです、ダメです。何を言ってるんですか。これからですよ。やっと値が戻って来つつあるのに。外電でも強気情報一辺倒になりつつあります。ここ2、3日、長くても1週間です。頑張りましょう。」
「1週間なんて、とても・・・」
「どうしたんです?いやあ、私もプロとしてここでは終われません。みすみすチャンスだと分かってて、ここであなたを見捨てて損で終わらせるなんて。絶対にダメです。いっしょに勝ちましょうよ、ね?」
「そうでしょうか・・・。」
「頑張りましょう、ね。いいですね。」
「はい・・・。」
結局、取引は続けることになります。やめたいというと、担当者は情熱をもって引き留めます。証拠金が残っている間はなかなかやめさせてもらえません。もし、利益が出ているときに、その利益を引き出してやめようとしたら、絶対にやめられません。そうでなくとも、自分の入れた証拠金がまだまとまった額残っているとなかなかやめさせてくれないのです。
1週間待っている間に、また相場が悪くなって、ついに最後の400万円の証拠金もほとんど損で無くなってしまいました。やっと××支店長も、あなたが辞めると言っても引き留めなくなりました。最後、あなたは1,350万円も入れた証拠金が、たったの62万3千円になったところで取引をやめることができました。預金も生命保険も無くなり、戻って来た清算金から友人に借りた50万円を返したら、手元にはほとんど無くなりました。悪い夢を見ていたような気持ちです・・・。
まとめるとこんな被害です
さて、いかがでしょうか?私どもは、商品先物取引被害の解決を目指す研究会に所属している弁護士です。私どもが日頃取り扱う先物事件は、ほぼ、今述べたような経緯をたどっています。もちろん、少しずつ事件ごとに差がありますが、大筋では同じです。とくに、取引の内容が似ているのが特徴です。
でも、なぜ、そんなに似てくるのでしょうか?商品は、人によって原油だったり金だったりガソリンだったり、トウモロコシだったり、色々です。取引の時期も違います。それなのに、最初はほとんどが買いから入り、途中、損が出たところから両建てになります。一旦両建てになるとなかなかその状態は解消されません。値が上がり始めると買いの方が売り買いされて玉が増やされますが、逆に値が下がると今度は売りの方の売り買いが盛んになって増やされます。但し、その間、損が出ている方の玉が整理されることはありません。そのため、一見利益が出ているように見えても含み損も嵩んでいます。また、盛んに売り買いが繰り返されるので、手数料が嵩んできます。
最後の頃は、含み損を抱えた玉しか残っていないので、損切りをするだけになります。損がどっさり出て、玉も減って取引が終息に向かいます。結局、それまで入れた証拠金はほとんど戻って来ません。途中の頻繁売買は、なぜそんな売り買いをしたのか、わざと手数料がかかるようにやったのかと思うほど不合理です。また、途中、客がやめたいと言っても、すぐやめさせてもらえず、まだ証拠金が残っているとやめさせてもらえません。仮に、利益が出たところで出金してやめたいといえば、絶対に許されません。会社は出金を極端にいやがります。預け金さえ出金したがらないのです。
客殺し、客に損をさせても会社が儲かればいい、これが客殺し商法です。先物業者はみな同じようなやり方で、客に損を出させています。 |