1月23日「2008(平成20)年度の税制改正法案」(以下法案)が国会に提出された。この法案は2007年11月10日の政府税制調査会答申「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」(以下政府税調答申)及び12月13日に決定した与党「平成20年度税制改正大綱」(以下与党大綱)を受けて「所得税法等の一部を改正する法律案」として提出されたものである。
政府税調答申は、消費税を「社会保障財源の中核的役割」と位置づけ、法人税以外の各税目の見直しとともに消費税等による大衆増税と法人課税の軽減及び金融所得の軽減をセットにし、「平成20年度以降どのようなタイミングで実施に移していくかについては、今後政府において適切に判断されたい」と述べている。
政府税調答申を受けた与党大綱は「平成20年度税制改正においては、税体系の抜本的改革に向けた橋渡しとして、これまでの構造改革の過程で生じた諸問題への対応に重点を置いた」と述べ、また、地域間の財政力格差の縮小では「消費税を含む税体系の抜本的改革が行なわれるまでの暫定措置として」進めると述べている。
第169通常国会において福田首相が施政方針演説で「消費税を含む税体系の抜本的改革」について「早期に実現を図る必要がある」と述べたことはこのような背景がある。
法案は、中小企業活性化策として特定中小会社発行の株式取得の課税特例、増加教育訓練費の減税等を盛り込んでいるが、その一方で、研究開発減税の拡充、減価償却制度の見直しなど大企業優遇措置が盛り込まれている。空前の利益を上げている大企業と低迷をつづける中小企業との格差は拡大する一方である。中小零細企業の倒産は前年比25%増、個人事業者は75%増(帝国データバンク)になっている。
また、「構造改革」政策により国民のなかには貧困と格差が広がり、庶民の生活は深刻になっている。不安定雇用の派遣労働者が増え、ワーキングプア、ネットカフェ難民が政府の経済政策のもとで増加している。先の参議院選の結果はこうした政府の経済政策に痛烈な審判を下したものである。今次税制改革ではその参議院選の「反省」に立つべくところ、その姿はみられない。法案は「金持ち優遇」の批判に耐えかねてか上場株式の譲渡益課税と配当所得についての優遇税制を廃止したが、なお2年間の特例を設けた。
また、株式譲渡損と配当所得との損益通算という新たな金持ち優遇策を導入した。さらに、無駄な道路をつくり続けるシステムの温床となる道路特定財源の1O年間延長を決めた。大企業への行き過ぎた特権的な減税措置は温存されたままである。
消費税は低所得者ほど負担が重い「逆進的」税制であることはいうまでもない。さらに、消費税は中小零細企業や零細な個人事業者には負担を強いる「悪税」であることは導入以来実証されている。その消費税の増税に向けての「橋渡し」とか「消費税を含む税制抜本改革までの暫定措置」と位置づけた今次税制改正法案には反対である。
税制は能力に応じて負担を求めることが公平理念の実現につながる。
税制改正にあたっては、引き下げた法人税・所得税の税率をもとにもどすとともに、最低生活費には課税しないこと、不労所得には重課し、勤労所得には軽課することを基本とすべきである。 |