まず政府税調のメンバ−は国民のための「税制」を考えるときに本当にふさわしいかということだ。言うまでもないことだが、税制は、経済、財政と国民生活に直接大きく影響する。なればこそ影響を受けるそれぞれの職業、階層、立場の代表と、理論に精通した人で調査会は構成されなければならない。特に所得税については圧倒的な多数を占める給与所得者の意見を代弁できる人(ちなみに平成17年予算で見れば納税者の85.6%が給与所得者である。また税収でみると源泉所得税は全税収の25%を占める。表2を参照)、 |
(表2)
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(備考) |
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給与所得者・・・「民間給与の実態」(国税庁)及び源泉所得税の課税実績から推計しました。 |
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申告所得者・・・「申告所得税の実態」(国税庁)等によっています。
平成17年改正税法より |
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専業主婦の代表、これからますます多くなる年金生活者の気持ちが汲み取れる代表がいなければならないと思うが、そうした人選は現在のところなされていない。サラリ−マンやOLのことがよくわかっている人が代表になっていれば、後で述べる給与所得控除についても別な見解が出るものと信じたい。
同様に収入こそないが専業主婦の意見も大事だし、お年寄りの年金暮らしと税金負担のあり方の発言も忘れてはいけない。私は学識経験者と言われる人たちをそんなに信用してはいない。 それに財務省が求めに応じて提出するいわゆる資料についても、批判的に検討できる人がぜひ必要だ。現在の人選は政治家と官僚が勝手に選び、国会の承認事項にもなっていない、あきらかに片よった人選だ。
「平成18年度の税制改正に関する答申」をした政府委員は次のとおりだ。
秋山咲恵(ササキコーポレ―ション代表取締役社長)、石弘光(一橋大学名誉教授、中央大学特任教授)−会長−、井戸敬三(兵庫県知事)、井上裕之(愛知産業(株)代表取締役社長)、猪瀬直樹(作家)、大宅映子(ジャ−ナリスト)、岡田ヒロミ(消費生活専門相談員)、翁百合((株)日本総合研究所主席研究員)、奥野正寛(東京大学教授)、菊池哲郎(毎日新聞論説委員長)、神津十月(作家)、上月英子(税理士)、佐竹敏久(秋田市長)、神野直彦(東京大学)、高木剛(日本労働組合総連合会会長)、田近栄治(一橋大学教授)、田中直樹(経済評論家)、丹羽宇一郎(伊藤忠商事(株)取締役会長)、水野忠恒(一橋大学教授)、村上政敏(時事通信社顧問)、以上20名。ほかに特別委員16名、専門委員4名。
内訳は学者が5名、マスコミ関係者2名、財界4名、官僚2名、その他7名で構成されているが、この構成では財界の意向、マスコミ対策、高額所得者の気持ちは理解しえても、まじめに働く「庶民」の切実な願いを代弁してくれることを望むのは無理な注文というべきだろう。
また前に紹介した平成12年7月の「わが国税制の現状と課題」−21世紀に向けた国民の参加と選択−答申時(加藤税調)の委員等の名簿は次のとおり。
榎本庸夫、大澤雄三、太田弘子、加藤寛、栗田幸雄、神津十月、子長啓一、今野由梨、笹森清、島田春雄、竹内佐和子、田中直樹、津田正、中西真彦、塙義一、平田公敏、本間正明、松浦幸雄、松尾好治、松本和夫、松本作衛、水野忠恒、水野勝、宮島洋、森下洋一、森田明彦、諸井虔、吉永みち子、和田正江。
ほかに特別委員12名(この特別委員の中に後の税調会長になる石弘光氏がいた)、専門委員16名で組織されていた。すべての委員の人の肩書きを知っているわけではないけれど、学者、マスコミ、財界中心のメンバ−であることには変わりなく、庶民に理解あると思われる人は極めて少ない。 |