論文

ー 特集商法・新会社法 ー
省令案でより明確になった計算書類など
神戸会国岡

1 はじめに
2 来年5月以降終了事業年度の計算書類が変化します
3 従来の計算書類と変わった点
4 変わった計算書類の様式例示
5 会計参与に関して

1 はじめに

会社法の法務省令案が11月29日に発表されました。今回発表の省令案は、本体の施行規則案の他に8つの枝省令案の9本立てで、約500条弱になっています。とりわけ、税理士の関心が高い会計参与報告や株式会社の計算に関する枝省令案の内容に関して記したいと思います。なお、法務省令案に関して年末まで意見照会がされており、来年1月下旬に正式な会社法施行規則等として確定発表される予定です。

2 来年5月以降終了事業年度の計算書類が変化します

来年5月の会社法施行日(1日か8日)以降終了する事業年度から新会社法による計算書類を作成することになります。来年4月末決算期までは従前の商法の例によります(関連整備法99条)。具体的には、来年5月以降、中小会社が作成する各事業年度の計算書類は、次の4つの計算書類です(会社法435条、計算規則32条)。

貸借対照表
損益計算書
株主資本等変動計算書
個別注記表

そして、これらの附属明細書、事業報告書を会社が作成することになります。従前の利益処分案(又は損失金処理案)が廃止されます。

3 従来の計算書類と変わった点

(1) 貸借対照表の資本の部が、「純資産の部」に変わります(計算規則47条)。
(2) 損益計算書の末尾が、当期純利益又は当期純損失で終わります(同規則64条)。
(3) 株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部の増減を表示します(同規則65条)。
(4) 個別注記表は、12項目の注記です(同規則67条)。ただし、公開会社でない株式会社(=株式譲渡制限会社)は、株主資本等変動計算書に関する注記と関連当事者との取引に関する注記の2項目以外の10項目を省略することができます(同規則82条)。
(5) 上記の4つの計算書類に係る附属明細書が簡略化されました(同規則83条)。

4 変わった計算書類の様式例示

(1) 貸借対照表 純資産の部の表示(計算規則47条)

(2) 損益計算書の末尾の表示(計算規則62〜64条)

(3) 株主資本等変動計算書の表示(計算規則65条)
(注) 当期変動額は、株主資本の各項目の変動事由ごとに変動額と変動事由を明示し、株主資本以外は純額表示します。

(4) 公開会社でない株式会社の個別注記表の表示(同規則82条)
公開会社でない株式会社は、下記一・二以外の10項目が省略可能です

株主資本等変動計算書の注記(計算規則74条)
1 事業年度末日における発行済株式総数(種類株式発行の場合は、種類毎の総数)、自己株式の総数(種類株式発行の場合は、種類毎の総数)および自己新株予約権の数及びその目的となる株数(種類株式発行の場合は、種類毎の数)
2 事業年度末日において発行している新株予約権の数及びその目的となる株数(種類株式発行の場合は、種類毎の数)
3 事業年度末日後に行う剰余金の配当に関する事項
4 事業年度中に行った配当により減少したその他資本剰余金又はその他利益剰余金の別に関する事項で、当該剰余金の配当時に適切な開示がなかった事項
関連当事者との取引に関する注記(同規則78条)
親会社、子会社などの関連当事者(同規則78条で定義)との取引がある場合に、掲げるべき事項で重要なものを、関連当事者ごとに区分して表示します(規則78条)。議決権総数の10%以上を保有する主要株主とその2親等内の親族、当該会社役員及びその近親者も関連当事者になりますので、これに該当すれば中小会社でも注記が義務付けられ、要注意です(同規則78条六、七)。
1 関連当事者が会社である場合、その名称、議決権総数に占める割合
2 関連当事者が個人である場合、その氏名、議決権総数に占める割合
3 株式会社と関連当事者との関係
4 取引により発生した債権債務に係る科目別の事業年度末日の残高
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