会計参与制度とはいったいどのような制度なのであろうか。またその創設の理由とはいったい何なのであろうか。今回の会社法制の現代化において、株式会社と有限会社との規律が一体化され、有限責任会社は株式会社のみという会社類型が採用される。有限責任会社という前提に立てば、債権者保護等の観点から、その財務の透明性の確保は当然に必要である。
現在、商法特例法上の大会社に会計監査人の監査が強制(商特法2 )されている理由である。ただしここには、会社が直接金融により市場から資金を調達するという前提がある。銀行からの借入金等による資金調達という間接金融を前提としている会社(一般的には、商法特例法上の中・小会社)には、企業財務の透明性の確保という問題はあまり実感がない。なぜなら、そこでは計算書類に基づく信用ではなく、オーナー株主による無限連帯責任により債権者保護機能が担保されているという実態があるからである。しかし、株式上場方法の多様化等、社会情勢の変化とともに、これら中・小会社においても、直接金融を求めるケースが増加していることも事実である。
このような事実を考えれば、中・小会社の「財務の透明性の確保」の法的手当ても当然に必要となろう。この必要性から現在、中会社においては会計監査人の監査が任意で認められている(商特法2)。しかし、小会社には現状何ら法的手当てがなされていない。これを手当てするための制度のひとつが今回の会計参与制度である。
つまり、会計参与制度とは、有限責任会社における「財務の透明化」を図るため創設される制度である。特に小会社においては、内部統制問題、その他コスト・パフォーマンス等の観点から会計監査人の監査には耐えられない現状などを考慮し、外部監査とは異なるスキーム、すなわち会計に関する専門識見を有する者を利用した「内部機関」としての財務の透明性を担保する制度として創設し、手当てした制度が会計参与制度である。
しかし、会計監査人の監査こそが本来「財務の透明性」を担保する制度であることから、今回の会社法制の現代化に伴い、任意での小会社の外部監査も当然に併存される。つまり、会計参与は、有限責任会社における財務の透明化を図る目的で、また、その必要性の観点から、大・中・小会社すべて会社において任意設置とされた会社の内部機関である。
また、この会計参与の職能(注3)であるが、5項目に限定列挙されている。その1つ目が、「計算書類の作成」である。具体的には、「会計参与は、取締役・執行役と共同して、計算書類を作成する」こととなる。2つ目として、「株主総会における説明義務」が挙げられている。そして、3つ目の職能として、「計算書類の保存」と、さらに4つ目として、「計算書類の開示」がある。現行商法は、計算書類の保存、開示義務を取締役に課している(商法282)。
今回会計参与制度の導入に伴い、計算書類の作成と株主総会における説明義務をその職務とする会計参与にも、取締役同様、その保存・開示義務を課したものといえる。当該会計参与制度は、取締役と共同で計算書類を作成し、彼らとは別に会計参与が計算書類を保存・開示することにより、取締役・執行役による計算書類の虚偽記載や改ざんを抑止し、計算書類の正確さに対する信頼性を高めることができる。つまり、当該会計参与制度の本来的法的存在意義は「共同作成」と、この「保存」と「開示」に見出すことができる。そして最後にその他の職能として、「計算書類の作成等に必要な権限を有する」とされている。
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