論文

特集商法改正・会計参与制度
会計参与(仮称)制度の問題点
東京会阿部徳幸

4会計参与制度と税理士

要綱案によれば、会計参与の資格として、公認会計士(監査法人を含む。)・税理士(税理士法人を含む。)としている。これは、公認会計士・税理士の会計専門家としての職能を認め、これらの職能を会計参与に活かそうとすることからきている。しかし、要綱案はさらに兼任禁止規定を設けて、「会計参与は、会社又は子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人または支配人その他の使用人を兼ねることができない」としている。

会計参与とは、会社内部の独立した機関なのであるから、他の独立した機関、使用人を兼ねることができないのは当然のことである。また会計監査人が兼任できないのは、会計監査人が自ら作成した計算書類を自らが監査(自己監査)したのでは、外部監査としての意義が意味のないものとなるからであり当然のことである。

公認会計士法はその第1条で、公認会計士の使命として、「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする」と規定している。

会計参与制度における会計監査人の兼任禁止規定は、この公認会計士法第1条がいう公認会計士の使命を会計参与制度において具体化したものとして捉えることができる。また、この兼任禁止規定から、会計監査人監査が原則であり会計参与はその意味で例外であることが窺える。

では何故会計参与における兼任禁止規定に、「税理士法第2条の税理士の業務を受任している税理士」という文言がないのであろうか。逆解釈をすれば、「税理士法第2条の税理士の業務を受任している税理士」も会計参与を兼任することができるということとなる。

では、税理士の業務を受任している税理士が会計参与を兼任することに問題はないのであろうか。税理士法も公認会計士法同様その第1条において、税理士の使命として、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」と規定している。公認会計士法も税理士法もともにその使命において「独立」という言葉を使用している。

つまり、公認会計士も税理士も、それぞれの業務を執行するにあたってはその独立性が求められるのである。この税理士法のいう独立性とは、いわば納税者と課税庁との課税関係における税理士の立場をいっている。また、会計参与の職務は、公認会計士・税理士の会計専門家としての職能を活かすものであり、会社からの委任を受け債権者・株主に対しての職務である。さらに会計参与はその会社の内部機関であるが、関与税理士とはあくまでその会社の外部からの関与と位置付けされる。

したがって、このような立場の違いから兼任した場合でも十分に税理士としての「独立性」が確保できるとの議論がある。しかし、会計参与が作成した計算書類を前提に課税関係が成立することから、自己が作成した計算書類を前提とした課税関係において独立性を確保しなければならないこととなる。法律上の立場は異なることとなろうがいずれにしろ同一人物であることには変わりはない。

税理士の業務を受任している税理士が会計参与を兼任することは、税理士の業務を執行するに当たり独立性を確保することは明らかに不可能である。根拠法の違い、立場の違いから同一の税理士が兼任することができるというのであるのならば、会計監査人が兼任できないのは何故なのであろうか。

いずれにしろ「税理士法第2条の税理士の業務を受任している税理士」も会計参与を同時に兼任することができる。しかし、この形態が進んでいくこととなれば、「納税者の代理人制度としての税理士制度」は崩壊することとなるであろう。

今回のこの会計参与制度の導入により、「監査」は公認会計士が、「税務」は税理士が、その「会計」は公認会計士または税理士が、ということで公認会計士と税理士の区分が明確になるともいわれる。しかし、従来から「監査」は公認会計士業務であり、「税務」は税理士業務であることにはかわりがない。

残る「会計」について、公認会計士と税理士がともに行うというということが商事基本法において明らかとされた場合、税理士の地位は低下することとならないであろうか。なぜならば、先に見たとおり、計算書類の適正性を担保する手段としては、会計監査人監査が原則であり、その特例的・簡便的手段がこの会計参与制度である。

しかし、この会計参与制度は、任意とはいえ設置する会社サイドにとってコスト的にも、その機能的にも決して使い勝手の良い制度とは言い難い。また、会計参与就任者にとっても責任ばかりの目立つ制度である。このような機能的に不十分な制度の担い手が税理士であり、本来の計算書類の適正性を担保する職務を行うのが公認会計士という、いわば公認会計士は一流の会計専門家、税理士は二流の会計専門家としての認識が一般に広まることとはならないであろうか。

現代社会は「租税国家」といわれる。旧型の社会主義国家体制の崩壊からしても、今後も租税国家体制が維持され続けることは容易に想像がつく。例えば今日わが国の財政は巨額の債務を抱えている。この債務も国民からの「税」により手当てがなされる。このように今日、「租税」のあり方はわが国の存亡にまで係わる問題なのである。したがって、財政民主主義の発展がわが国の民主主義のさらなる発展につながってくることとなろう。

わが国における唯一の税務の専門家(プロフェッショナル)は「税理士」である。わが国における「税理士制度」のさらなる民主的発展こそが、財政民主主義のさらなる発展に寄与し、ひいてはわが国の民主主義の発展につながると筆者は考える。

会計参与制度が導入され、商事基本法である商法法典上に税理士が明記され、税理士の日々の業務が認知されることとなるということがいわれる。そもそも商法は私法に分類され、税理士は納税者の代理人であり、原則としてその対象は課税庁であり、国であり、いわば公法関係である。この公法関係に位置する税理士を私法の分野に入れること、すなわち会計参与制度の導入とその担い手としての税理士を活用することは、その引き換えとして、税理士の地位を低下させ、結果的には税理士制度を崩壊に導くこととならないだろうか。そもそもこの会計参与制度とは、一体誰のための制度を予定しているのであろうか。

5結 語

これまで商法改正と会計参与制度について、特にその担い手とされている税理士の責任問題と兼任について若干の検討を行った。これまでにも触れたように今回の改正は、「会社法制の現代化」である。その内容は、片仮名の文語体表記を平仮名の口語体に改め、会社法典を1つにまとめ分かりやすく再編成するという形式的改正と、会社に係る諸制度間の規律の不均衡の是正等及び最近の社会経済情勢の変化に対応した会社法制の現代化にふさわしい実質的改正を目指した。

また、現行商法はその第一条で、「商事ニ関シ本法ニ規定ナキモノニ付テハ商慣習法ヲ適用シ商慣習法ナキトキハ民法ヲ適用ス」と規定している。つまり商法は、その法源を商慣習法においている。前者は今回の会社法改正の理念であり、後者は商法の法源である。

このことから、今回の会社法制の現代化とは、今日のわが国の会社の実態に即した改正を予定しているはずである。現在わが国の中・小会社のほとんどは、物的・有限責任会社をあらわす株式会社・有限会社を称しているが、その実態は、人的・無限責任となっている(注8)

本来、会社法制の現代化を目指すのであれば、まず、このような形式と実態がねじれた状況を手当てする方向で進めるべきである。この「ねじれ現象」が解消しない限り、わが国の会社法制は、諸制度間の規律の不均衡の是正等は進まず、最近の社会経済情勢の変化に対応した会社法制となることはないであろう。今回ここで検討した会計参与制度も、本来のこの「ねじれ現象」を解決したうえでその制度そのものの存在を問うべきであろう。

(注1) 法務省法制審議会会社法(現代化関係)部会「会社法性の現代化に関する要綱案」(以下単に「要綱案」という。)1頁。
(注2) 「要綱案」1頁。
(注3) 「要綱案」12頁。
(注4) 「要綱案」4頁。
(注5) 平成16年6月16日自由民主党政務調査会法務部会商法に関する小委員会「会社法制の現代化に関する中間とりまとめ」1頁。
(注6) 要綱案2頁。
(注7) 要綱案13頁。
(注8) わが国の株式会社の実態については、宮島司「会社法概説 補正版」弘文社平成10年4月33頁以下参照。
文責・あべのりゆき

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